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早期退職?

2021年秋。コロナ真っただ中の東京。

テレワークにも慣れてきて、さっき昼めしのペヤングを食ったリビングのテーブルでせっせと企画書を作っていると、人事部から1通のメールが届きました。

「早期退職募集のお知らせ」

どうやら会社が今流行りの早期退職者を募るらしい。で、俺もその対象者のようです。「今回はすべての対象者と面談を行いますので、よろしくお願いします。」メールはそう締められていました。

数日後、人事面談。
会社の考え方はこう。

わが社も年齢の高い社員が多くなり、組織を整理する必要があると判断した。人生100年時代になり、定年後もなんらかの形で働く必要があり、ならば若いうちに多めの退職金をもらって、次の事を始めるという考え方もある。
会社は次のキャリアのために充分な資金を用意した。これはいわゆるリストラではなく一定年齢以上の方すべてを対象者にしたセカンドキャリアを応援するための制度。応募は自由!

人事曰く、「今回の制度はあくまでみなさんの今後のキャリアを応援するためのものなんです。会社としてもできる限りのバックアップをしますし、そのためにキャリアコンサルタントの斡旋も行います。ぜひよく考えてみてください。」(微笑)

人事が用意した資料には、会社を辞めた場合の割増退職金の金額がどーんと書かれていました。というか、ほぼそれだけの資料でした。

なるほど。

まず、自分がびっくりしたのは早期退職の対象年齢だったという事実。いや、たしかにそんな歳だけどもこうして事実を突き付けられるとかなりびびる。
で、もうひとつ驚いたのが会社の言う「充分な割増退職金」がほんとにそれなりに充分な金額だった事。宝くじかよ、という金額でした。

「辞めよう!」すぐに思いました。

そうでなくても、なんだか悶々とする日々が続いていたからです。

会社というのは20代、30代の頃はがむしゃらに働いて、そのあとはなんとなく管理職になっていくところです。自分も数年前いわゆる中間管理職をやっていました。が、ハンコを押すのと社内外の調整がメインの仕事は、やっぱりまったく楽しくなく、当時の上司に「やっぱ現場やりますわ」と言って現場仕事に復帰したのです。現場仕事は楽しいのですが、気が付くと、あたりまえですがまわりは年下ばかり。意味もなく気を使われることも多くなっていました。そんな中でのこのコロナ。いろんな事がゆっくりとうまく回らなくなっていきました。仕事は楽しくないわけではないけれど、なんかちょっと違うんだよな。漠然と悩ましい毎日が続いていたのです。

設計士をやっている友達がいます。最近独立して自分で会社をはじめました。「独立おめでとう!」と一緒に飲んだ時「毎日大変だけど、会社に縛られていない感じがサイコー」と言っていたのを思い出しました。

やつを駅前のカフェに呼び出しました。「会社辞めようと思うんだよね。」と言って、早期退職の話をしました。「いいじゃん、金もらって辞めれるなんてサイコーじゃん!辞めちゃえ辞めちゃえ!」マスクをしていてもニコニコしているのがわかります。

「で、えびちゃん。会社辞めて何するの?」

…会社辞めて何する?

ああぁ?それはまったく考えてなかった!そう。会社を辞めても日々は続いていくんだった!

(つづく)


「早期優遇退職」-

企業などがリストラ(人員の削減)の一環として行なわれるものであり、予め使用者が退職における有利な条件(例えば退職金の割増支給)を示すことにより、事業所に雇われている労働者が自らの意思でこれに応じ労働契約の解除をすることを言う。(Wikipedia)

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