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幸せであるように。

桜、今年もきれいですね。

今年は久しぶりに花見が解禁されたという事で
インスタには桜と楽しそうな人達の写真が溢れている。
近所の川沿いにも、缶ビール片手の若者がたくさんいて 治安わりーなと思いながらも 活気を取り戻した人たちを見るのはなんだか楽しい。

春は節目の季節。
この半年、週一で受講していたマーケティングのセミナーが先週終わった。今流行りのリスキリングに乗ってみたのだ。

平日の夜2時間、ZOOMで講師の話を聞きながら、半年かけてプレゼン用の課題を仕上げていくというもの。受講生は年齢も性別も仕事もばらばら。毎週の課題や講義の内容がわりとハードで、期間中ひとりまたひとりと脱落。最後に残ったのは6人。
この6人が最終的に2人ずつ、3チームにわかれて課題を仕上げていく事になった。

俺がチームを組んだのはまさかの大学生。親子ほどの年の差の彼はハーフでそこそこイケメンのジャスティンくん。明るく人懐っこい彼は、大学に通いながらバンドをやったり、モデルもやっているという。
講義の時間以外にも時間を合わせて課題の打ち合わせをしなきゃならないのだが、いつも忙しいらしく「今日はバイトです!」「バンドのライブの準備です!」「先輩と飲みます!」とにかく捕まらない。
3月に入ったら「春休みなので旅に出ます!」と言ってベトナムに行ってしまった。

「大丈夫です!ベトナムでもWi-Fiは繋がります!」と言って、とんでもない時間に「打ち合わせしましょう」とLINEが来る。ZOOMを繋ぐと、すごい安宿と思われる蛍光灯の下でニコニコ手を振っている。
全く安定しないWi-Fiで打ち合わせを何度かやり、あふれる彼のアイデアを何とか資料に落とし込んだ。
この感じ、普通ならイライラしてキレるところだが、なんだか不思議に楽しかった。
それは彼の人間力のせいだと思う。ジャスティンくんにはそれがある。そして絵の具をチューブから出したままの原色のような、鮮やかな強さもある。

若いうちはいろいろ勉強もしたほうがよいけれど、一番大切なのは人間力を身に着ける事なんじゃないかと思う。勉強して身につくものじゃないかもしれないけど。

という事で、先週がそのクラスの最後の授業だった。
実際のクライアントにむけて課題のプレゼン。
クライアントのおじさんに資料を見せながらジャスティンくんと交互に話をしていき、なんとか終了。

「ま、それなりだな」と思っていたら、他のチームのプレゼンが始まったとたんにジャスティンくんからLINEが来た。
「めっちゃ楽しかったです!達成感すごいです!!最高でした!!!やってやりましたよね!?」とビックリマークがたくさんついていてなんだか楽しそう。
彼はバカなのかもしれない。
でもそのLINEを見て俺もなんだか楽しくなったのは間違いない。

クラスの終わりに彼が「えびさん、少しお時間いいですか?相談したいことが」と言ってきたので、ZOOMを繋いだまま少し話をした。

就職相談。
『まわりはみんな就職するが、できれば自分は自身で何かやってみたい。あふれるアイデアはあるけどそれを仕事して稼ぐにはどうしたらよいか。もしくはやはり一度は就職したほうがよいのか』というような内容だった。

常にZOOMの画面がチカチカしているのがベトナムの安宿の蛍光灯のせいなのか、安定しないWi-Fiのせいなのかわからなかったが、ジャスティンくんの「そろそろ晩メシ行ってきます!」という言葉で会話は結論も出ないまま終了した。

大学生の就職相談。
前だったら、新卒なら一回就職してみる方がいいよ。という至極普通のアドバイスをしていたと思う。少し前までは「普通」はベストだったから。
が、今回、なにをどうアドバイスしたらよいのかわからなかった。時代はどんどん変わる。もはや普通なんてないんだろうし、世界はweb3 らしいし。しらんけど。

翌朝「ドルで給料をもらえるところに一度就職してみるのはどう?」とLINEした。
彼からは「日本沈没!」と返信があった。
「だな」とひとこと返した。

彼が今持っている万能感のようなもの。普通に就職したらたぶんつぶされてしまう。会社というところは大体がそんな場所だ。
それに、今の時代はなにかやりたいことがあるなら早くやったほうがいいような気もする。寿命は延びても選択肢が多い分人生は昔よりも短い。

若者の万能感はそれを本気でバカみたいに信じる事ができたらおもしろい人生を手にいれる武器になる。
ミュージシャンだってスポーツ選手だってYouTuberだって芸人だって自分はそれでやっていくというある意味バカな自信があってこそ成功への道がひらく。中途半端に頭がよかったらそんなリスキーな道はまず最初に避ける。

ジャスティンくんの鮮やかな強さは おっさんからしたらちょっと羨ましかった。そして彼なら、就職してもしなくても、なにか面白い事やるんじゃないかなという気がした。

歳を取ると、鮮やかな絵画の色が褪せるように、若いころの原色のエネルギーはどんどん薄まっていく。その色褪せた感じを人は落ち着きとか渋さとか言うんだろうが、まわりのおっさんにはただ古くなっているだけの人も多い。
かっこよく枯れるにはどうしたらよいのか。
必要なのは金か愛か友情か?

鮮やかな色がどんどん薄くなって、水墨画のようになっても、すごい水墨画がどれよりも色を感じさせるように、どうせ朽ちていくなら、鮮やかに朽ちたいものだなと思う。

春。

来年、桜が咲く頃、ジャスティンくんは、どこで何をしているのだろう。
「今、ベトナムなんすがこっちで仕事する事になりました!」みたいなLINEが来たらおもしろいな。
そしてひとつ歳をとった俺はそれ見て春に何を想うのだろう。
楽しみだ。

ジャスティンくんの人生に幸あれ。



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