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松坂桃李ではなかった。(おじさんの早期退職右往左往②)

「まずは、ご自分の市場価値を考えてみましょうか。そのためにこれまでやってきた仕事の棚卸をしてみてください。何をやってきたかを全部書き出すんです…。」


秋も深まる夕方の東京駅丸の内口。帰宅を急ぐサラリーマンに逆走しながら、スマホの地図にある知らないビルを目指します。

「早期退職制度」が発表されて10日ほど経ちました。発表から1カ月後に応募受付開始、募集期間は3週間。そしてその約1カ月後の月末に退職です。約3か月ですべてが完結するスケジュール。早っ。聞くと、早期退職のスケジュールどこもこんな感じだそうです。1カ月で人生の決断をしなくてならんのか…。

10日前、「会社辞めよう!」と意気込んだものの、退職後に何をするか全く考えていなかったことに気づいた俺。いろいろ考えてみたものの、会社をやめた後の毎日がまったく想像できません。セカンドキャリア?何から考えたらよいのか、何から手を付けたらよいのか全く分からないので、会社の人事に紹介されたキャリアコンサルティングの事務所を訪ねる事にしました。丸の内のシュッとしたオフィスビル18時。受付で名前を告げると、個室に案内されました。

最近はテレビでも転職エージェントやキャリアなんちゃらみたいなCMを良く見ます。リクルートとかビズリーチとか…。CMにはびしっとスーツできめた松坂桃李や林遣都が出ていて、それはいかにも今風のさわやかサラリーマン。俺が今いる、この丸の内のきれいなビルにお似合いです。きっとこれから話をするカウンセラーもそんな感じなんでしょう。

しばらくしてドアをノックして入ってきたのは、おじさんでした。

松坂桃李ではありませんでした。おじさんです。シュッとしていません。さわやかでもありません。そのへんのおじさんです。誰に似ているんだろう…あ、佐藤二郎だ。

人がよさそうでちょっと疲れてる感じ、妙に親近感を覚えます。…なるほど、相談者の年齢とか職種に合わせて最適化された担当者なのか。よくできている。

さて、キャリアコンサルティング、初めて聞く方もいるかもしれません。私も知りませんでした。キャリアコンサルティングはいわゆる転職エージェントと違い、就職先を斡旋してくれるわけではありません。コンサルタントとカウンセリングでいろいろ話す中で、仕事や人生との向き合い方を考えていくものだそうです。

「はじめまして。今日はいろいろお話ししていきましょう。」狭い個室で初対面の佐藤二郎似のおじさんとふたりきり。まずは自己紹介と会社での仕事内容、今回の早期退職の話などざっくり伝え、早期退職しようと思うが、その先どうしたらよいのかわからない…など、自分が置かれた現状を話していきます。

「なるほど。それでは、まず、えびさんの市場価値を考えてみましょうか。そのためにこれまでやってきたすべての仕事の棚卸をしてみてください。何をやってきたかを全部書き出すんです…。」

俺の市場価値?なんだそれ…。

(つづく)

市場価値ー

市場価値の基準 「市場価値」とは個々のスキルや本人の人間性が、その時々における人材市場でどのように評価されるのかを示すものです。 その基準は時代と共に変化していくもので、絶対的な数値や価値観があるわけではありません。(ロバート・ウォルターズHPより)



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