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2022年1~3月に読んだ本を振り返る。

こんにちは、えびかずきです。

今回は2022年1~3月に読んだ本をまとめて紹介します。

といっても4冊しか読んでいないのでさほど量はありませんが、とにかく紹介していきます。

ほとんど自分のための備忘録的な振り返りになってますが、
もし興味を持ってくださる方かいたら嬉しいです。

それでは紹介していきましょう!

ビジネス書

『データドリブン思考 -データ分析・AIを実務に活かす-』河本薫

元大阪ガス河本氏によるデータドリブンで組織を変革するための指南書

AIエンジニアの私にとって、かなり役に立つ1冊でした。

これまで私はAIに関する書籍をたくさん読んできましたが、その多くが技術的な入門書や特定分野の解説書に偏っていて、今になって思えば「ビジネスにAIをどのように活かせばよいのか?」という最も重要な問題を避けてここまできた気がします。
そういったなかで今回手にしたこの「データドリブン思考」は、AIやデータ分析をビジネスにうまく活用するためのエッセンスが詰まっていて、そこには今まさに私が知りたい内容があます所なく記載されていました。

本書を一言で要約すると、「本質的な問題をきちんと認識して、意思決定プロセスに介入する課題に取り組みましょう」ということになります。

そこで登場するのが著者の考案した問題解決のフレームワーク。
「問題を解消するために何をすべきか」を意思決定プロセスに介入する形でビジネスに取り組もうというのが著者の主張で、以下の順序に沿って思考を進めていきます。

  1. 解消したい問題は何か?

  2. 解決したい課題は何か?

  3. 意思決定プロセスの課題は何か?

  4. データ分析で何を解くか?

しかしながら意思決定プロセスは往々にして暗黙知と化していて介入が難しいケースが多い。
そこで暗黙知を形式知化(あるいはその一部を形式知化)して手がかりを付与するというアプローチで意思決定に介入していきます。

データドリブン思考 p72


AIに関する精度に関して「最初に99.9%とか目標を正しく定めることが重要」というようなことは良く言われることですが、そんな数字を決めれる基準がなくて現状が暗黙知的な意思決定になっている場合がほとんどです。こういった場合にまず意思決定の形式知化を進めるというのは私の経験からしても確かに重要だと感じました。

とはいえビジネス上の問題が多種多様であって考え方がまだ不足している。ということで意思決定プロセスのケース別分類を下図のように示して、各ケースごとに解決方法を提示してくれています。

データドリブン思考 p64

それぞれの重要な点を一言でまとめると以下のようになります。

A反復選択型:現場を深く理解した上での意思決定プロセスの形式知化
B体制選択型:社内合意形成を意識した意思決定プロセスの形式知化
C原因特定型:候補の論理的な洗い出しと現場暗黙知からの推論
D計画策定型:数理最適化を意識した意思決定プロセスの形式知化する(形式と暗黙のハイブリッドもありうる)
E仮設思考型:仮説と検証(A/Bテストなど)
F経営判断型:恣意性の除外

非常に綺麗に構造化されていて、ぜひ自分の関わるビジネスにも活かしていきたいと思いました。
著者の長年の経験が詰まった素晴らしい1冊です。

序盤は年配におじさんに説教をされているような雰囲気でやや嫌悪感を感じましたが、読み進めるうちに腹落ちする内容がだんだんと積み重なっていって、読了してみると最後には著者の河本氏に感謝と尊敬の気持ちを抱いていました(笑)。

内容はビジネスでの具体的な失敗例をもとに、どこが悪いのか、そしてどう改善すれば良いのかといったイメージしやすい流れになっているので、AIやデータ分析をビジネスで活用しているまたはこれから取り組みたいという方へ自信をもってオススメできます。

最後に私の思う所を少し書いておくと、
やっぱり依頼者(経営者や部門発案者)から担当者(エンジニア)へ仕事を頼む時には「課題」の共有のみでは全然足りなくって、本書でも述べられているように「本当に解決したい問題がなにか」そして「現状の意思決定プロセスの構造」を共有することが重要だとつくづく感じます。加えて暗黙知的な意思決定プロセスがAIと相性が悪いことをきちんと理解して、作業に取り掛かる前にまずは意思決定の形式知化について考えるべきです。

さらにいうと、円滑にビジネスを進めるにはAI/ITリテラシーの全体的な底上げが重要だと思っています。
20年前にPCが浸透してきたように、令和の今ではAIやプログラミングがまさに身近な存在として浸透しようとしてきています。これはAIが専門職でなくジェネラリスト的な一般のビジネススキルになるということであって、すでに義務教育でもプログラミングの教育が始まっていますね。彼らにバカにされないためにも我々は最低限のリテラシーを身につけておきたい所です。そしてこれは本書の文脈でいうと「形式知」の処理を得意とする人材が10年もしないうちにぞくぞくと社会に出てくることを意味します。ですからこれからの会社に求められることは、彼らの受け入れ体制(すなわち形式知的な意思決定プロセス)を整備していく事だと思います。勘とか経験の暗黙知で上手くいっているところを全部形式的にした方がいいとかそんな極端なことは言っている訳ではないですが、部分的に形式知を加える努力が必要だと思います。来たるZ世代と仲良く仕事に取り組んでビジネスを成功させていけたらいいなと思います。

その他印象に残ったこと:

・ビジネスにおける問題と課題に定義

→「問題」とは現状と目標との間にあるギャップの事
→「課題」とは問題を解消するためにすべき事

日本の製造業的な定義だなあという印象。しかし曖昧になりやすい両者の区別をきちんと付けるという意味で有用な定義だと感じる。

・原因特定手法
→因果連鎖グラフをベイジアンネットワークで条件付き確率を使って分析する、原因特定の手法がある(AGC小野氏)
・平野町アナリティクスhub

歴史書

『銃・病原菌・鉄(上)』ジャレド・ダイアモンド

過去数万年にわたる人類史について地政学的な観点から詳しく記した書籍。
本書は上巻だけで約400ページもある大作です。

内容は「なぜユーラシア・北アメリカ大陸の民族が今世界の覇権を握るに至ったか?」について生物地理学者である筆者ジャレドダイアモンド氏が人類史の成り立ちから丁寧に説明しています。

そもそも我々人類の祖先は数百万年前アフリカ大陸で誕生したとされていて、人類誕生のルーツはチンパンジーとヒトの祖先が別系統に分岐して、アウストラロピテクス→ホモ・エレクトゥス(ジャワ原人)→ホモ・サピエンス(クロマニヨン人→我々)と進化の道を辿って現在の我々に至るという流れが有力な説みたいです。

銃・病原菌・鉄 p65

さてその後、今から1万3千年前に最終氷河期が終了して民族間の戦いが幕を開ける。本書ではこの民族間の戦いについて詳しく語られています。

まず上巻の結論を一言でいうと、
ユーラシア大陸は、家畜化・栽培化しやすい動植物が住んでいたおかげで農耕技術と共に科学技術が発達した点が有利だった
ということです。

実は栽培化・家畜化できる動植物は実はかなり限られていて、たまたまそう言う種が存在したということがまず重要なこと。そして大陸が横に長いので、気候的な変動が小さく農耕・家畜の技術の伝達スピードが速かったという利点もあったようです。これによって狩猟採集民から農耕民族へ移ることができ、分業によって時間のできた一部の人々が製鉄や銃製造などの技術を発展させることができたという訳です。

ちなみに農耕技術のルーツは今のイラク・シリア・イスラエルあたりの「肥沃三日月地帯」から発展したという説が有力なようですね。

ユーラシア人の北アメリカ大陸への進出については、16世紀にピサロ率いるスペイン軍がインカ帝国を支配した出来事が最も重要な転換点であったようです。ユーラシアで製造した銃でインカ帝国を制圧しました。

しかし実は勝因はそれだけではなくて、病原菌による影響も大きかったようです。ユーラシアでは家畜運営によって病原菌が徐々に変異して天然痘・インフルエンザ・チフス・ペストなど致死性あるウイルスや菌が誕生していきましたが、人々はそれに対応して徐々に免疫をつけていきました。これら病原菌が他大陸にわたると免疫を持たない人々は一気にやられてしまうという訳です。最近はコロナウイルスのこともあって人ごとではないですが、人類の歴史に病原菌がこんなにも大きく関わっていたことにすこし驚きました。ということでここで上巻は終わり。

下巻ではその後の文字の発展や、現在の国々が現代社会として形成されていった変遷が記されているようです。

下巻も上巻同様に本が分厚いのですぐには読みきれなさそうですが、読んだらまた紹介しようと思います。

その他情報:
人類史について調べる中で、以下のサイトを見つけました。もと教師の方のホームページのようで宇宙の始まりから人類の誕生まで幅広い科学記事をまとめられていて、すごいです↓

すこし脱線しましたが、個人でここまで作り込む熱意に感動したので紹介しておきます。

科学書

『数学ガールの物理ノート ニュートン力学』結城浩

数学ガールシリーズの中ではめずらしく物理学を扱った内容。
前々から数学ガールシリーズは大好きで、新刊が出るたびに他の本の手を止めて一気読みしてしまいます。

今回の物理ノートは発売されていた事に全く気がついていなくて、発売から半年以上経ったつい先日に書店でたまたま見つけて購入しました。

内容としては非常に基本的な物理の内容(たぶん高1の範囲かな)で、ニュートンの運動方程式のf=maを理解するため内容のとなっています。

ユーリの「どうして上に投げたボールは放物線になるの?」という素朴な疑問から始まって、運動方程式へ話は繋がっていく。

物理をあるていど知っている方にとっては物足りない内容かもしれないですが、これから物理を学ぼうとしている中学生とか高校生にはおすすめ。あと数学ガールファンは必ず読んでおくべし。今回もユーリ、僕、テトラちゃんのほのほのとした掛け合いが良いです。

毎回思うけど主人公「僕」は説明がうますぎる。それに数学だけじゃなくて物理もいけるんかい。

その他

『雑文集』村上春樹

村上春樹が過去に寄稿したりメッセージを添えたりした際の過去の文章を集めた雑文集。

挨拶、音楽の話、翻訳の話、人物の話など、いろんな場面で村上春樹が語った多種多様な文章が一冊にまとまっている。

最初にお伝えしておくと、これは村上春樹ファンのための本であるということです。たとえば好きな映画のメイキングを見るようなそんなイメージです。本編を知らない方は愉しめない仕様になっているのでご注意。

かくいう私はかなり熱心な村上春樹ファンなので、存分に愉しめるないようでした。

特に印象に残ったのは、村上春樹が結婚式のスピーチで話したこの一文。

「結婚はいいときにはとてもいいものです。」

やや皮肉めいていながらもユーモアのあるかわいらしいスピーチだなあ思いました。
私も結婚式で友人スピーチをした経験がありますが、かしこまった雰囲気に非常に緊張してしまって手紙を読む手が震えてしまったことを覚えています。内容には自分なりのユーモアを含めたつもりでしたが私の緊張感が伝わってかウケはあまり良くありませんでした(その時、これが「すべる」ということかと身をもって体感した)。そんな苦い体験を思い出しつつ楽しく読めました。

その他印象に残ったのは、カズオ・イシグロという作家の話。
恥ずかしながら私はカズオ・イシグロ氏のことを知らなかったのですが、ノーベル文学賞を受賞した村上春樹と同世代の作家みたいですね。とても興味が湧きました。なにか1冊読んでみようかな。

読んだ本はメルカリで売ってます

欲しい本がありましたら、安くお譲りしますよ。

えびかずきのメルカリアカウント↓
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