見出し画像

『ディストピアSF論――人新世のユートピアを求めて』(小鳥遊書房)目次紹介

新刊紹介です。

ディストピアと聞くと「監視+人工知能」「人間の動物的欲求に最適化されたアルゴリズム」を思い浮かべるかもしれない。もちろん監視の問題も扱うが、その他のディストピア類型も議論する。

第1章◉古典的ディストピア—三部作から二一世紀ディストピアへ

オーウェル『一九八四年』、ハクスリー『すばらしい新世界』、ブラッドベリ『華氏451度』の3作品を「古典」と呼び、これらのディストピアで何が問題になっているのか抽出し、21世紀ディストピアを論じる土台を用意する。

第2章◉監視ディストピア—スマート化された身体のアイデンティティ

スマホなどのカメラが遍在し、膨大な情報量を処理できる人工知能が実装された社会で、人は自分のアイデンティティを保てるのだろうか? 人工知能が提供するアルゴリズムが「最適化」をもたらすとして、何に「最適化」しているのか?

第3章◉人口調整ディストピアと例外社会

少子高齢化社会で将来の社会設計の話をする(特に若手)論者は「人口調整」の仕方を(かなり真面目に)主張する。「炎上」して批判を受けるが、「人口調整」の話題は定期的に起こる。SFでは、少子高齢化社会を迎える以前から、環境破壊や人口爆発への解決策として「人口調整」が提唱されてきた。しかし、共同体内部に無理やり線を引いて、人々を分別できるのか?

第4章◉災害ディストピアとニーズの分配

地球規模のディザスターを描くSFは多い。災害が恒常的で社会の基礎、インフラが崩壊するとき、人間はそれまでの文明を維持できなくなる。災害をきっかけにディストピアが生まれないだろうか? 話題になったテレビドラマ『日本沈没―希望のひと―』も詳細に検討した。

第5章◉労働解放ディストピアの製造コスト

果たして、労働から解放された社会はユートピアだろうか? トマス・モアの『ユートピア』は1日6時間労働(!)である。チャペックの『ロボット』では、ロボットが生産活動をする結果、人間は子供が作れなくなる(生産と再生産のトレードオフ)。人類を労働から解放すると、どんな世界になるのか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?