『ディストピアSF論』はじめに 公開!

小鳥遊書房ウェブサイトの以下のページから「はじめに」を読めます!

https://www.tkns-shobou.co.jp/books/view/631

以下、抜粋

科学とテクノロジーで未曾有の豊さを実現した私たちの社会が、その繁栄の裏でディストピアを欲望しているーーそう聞いたら驚くだろうか。(…)私たちはディストピアを願望していなくても、ディストピアを欲望できる。(…)ディストピアはこの社会に構造化されている。

人間という種としての私たちが豊かになっていることと、私たちがこの世界にディストピアを重ねて見ることは矛盾しない。絶対的な豊さは、私たちの根源的不安を払拭できない。

ユートピアとディストピアが反発しながら重なり合う背景に、二つの要素がある。一つは幸福が万人に当てはまらない可能性。プラトンやモアは哲学者の理性をユートピアに必須とする。「虚妄の快楽」に振り回されず(…)機能的な服や家に満足する態度がユートピア市民には求められる。

《私たち》市民は理性的なのか。理性的だとしても、その理性は共同体によって規定される。では、共同体とは何か。共同体の境界をどう定め、どのようなルールと規範を、誰が作るのか。ユートピアを設計すると自動的にこれらの問いに直面する。


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