マネーゲーム

お正月がやってきた。
「じぃじ、お年玉ちょーだい」
「あけましておめでとう。はいどーぞ」
「じぃじ、だーいすき」
「じぃじも好きだよ」
入学式がやってきた。
「じぃじ、ランドセルありがとー」
「いいんだよ。大切にね。それとこれはお小遣い」
「じぃじ、ありがとー!」
ひな祭りがやってきた。
「うわぁ。きれいなお人形! じぃじ、ありがとう!」
「いいんだよ。子どもの時にしか祝ってあげられないことなんだから贅沢しないと。これで美味しいものでも食べておいで」
「じぃじ、お小遣いありがとー!」
ゴールデンウィークがやってきた
「じぃじ、元気してる?」
「ああ、元気だよ。これお小遣い」
「うん、ありがとー!」
お盆がやってきた。
「じぃじ、久しぶりー!」
「久しぶり。背が伸びたんじゃないかぃ?」
「そうでもないよー」
「ゆっくりしていきなさい。あ、そうそう。これはお小遣い。帰りに忘れちゃうといけないから、今渡しておくよ」
「ありがとうございます」
「大事にとっておきなさい」
そして、運動会、文化祭と続き、クリスマスがやってきた。祖父は特大のケーキと大きなクマのぬいぐるみをプレゼントした。
「お爺ちゃん、ケーキとプレゼントをありがとうございます。貰ってしまっていいのでしょうか?」
「いいんだよ。よく言えましたっ!」
「ちょっと触らないでよ。キモい…」
「えっ?」
「じぃじ、ありがとー!」
「い…いいんだよ」
この仕草を見てじぃじは気づいてしまったのだ。
反抗期が訪れたら孫に触れることさえできず、ただ、ただ、老後の蓄えを搾取される運命であることに。

#小説 #ショートショート

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