注文の多い母親

子ども「ただいまー」
母親「おかえり。帰ったらまず、手洗いうがいをしておいで」
子ども「はーい」
母親「よく洗うのよ」
子ども「はーい」
母親「あれ… 泥だらけじゃない。どうせだからお風呂に入っちゃいなさい」
子ども「わかったー」
母親「お湯をかける前にきちんとブラシで髪の汚れを落としなさい」
子ども「はーい」
母親「よく洗うのよ」
子ども「はーい」
母親「さっぱりしたわね。じゃあ、ベビーパウダーを付けましょう」
子ども「はーい」
そこへ父親が帰宅しこう言った。
父親「二人とも離れなさい。そいつは鬼婆だ!」
母親「失礼ね!誰が鬼婆なのよ!」
子ども「お父さんひどーい」
父親「いいから!早く離れなさい!」
子ども「嫌だぁ」
父親「だめだ!こっちへ来なさい!」
子ども「嫌だぁ」
そんなやりとりが何回か続いたが、子どもは全く父親の言うことを聞こうとしなかった。
父親「わかったよ。じゃあね…」
そう言うと父親はうっすらと涙を浮かべながら家から出て行った。
母親「まったくお父さんったらどうしたのかしらねぇ」
子ども「わかんなーい」
母親「じゃあ、頭から塩コショウをふりかけて小麦粉を身体にまぶしたら、煮えたぎる釜の油に飛び込みなさい」
子ども「はーい」

#小説 #ショートショート

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