ばかやろう
「ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」
選挙に当選した若手議員が満面の笑みを浮かべて万歳三唱を行なった。それを見ていた中堅議員は眉をピクリとさせ、すぐさま会場で注意をした。
若手議員「話ってなんでしょうか?」
中堅議員「当選おめでとう。まぁ、たいしたことじゃないんだけどね、君が着ているシャツに穴が空いていたんだよ」
若手議員「シャツに穴が?」
中堅議員「ほら、右の脇のとこ」
若手議員「あっ、本当ですね。バタバタしていて気づきませんでした」
中堅議員「政治家っていうのはイメージが重要なんだよ。それに中継されてるんだから気を付けて。どこから記者が写真を撮っているかも分からないんだからさぁ」
若手議員「はい、気を付けます」
そこへ、二人のやりとりを見ていた重鎮が近づいて一言。
重鎮「君の説教は長い。『脇が甘い』で分かるだろ? 政治家っていうのはね、必要最低限の言葉で語るもんなんだよ」
《一瞬の間を置いて》
若手「あの…チャック開いてますよ?」
重鎮「あっ、本当だ!」
中堅「ばかやろう!」
記者「パシャ!(シャッターの音)」
翌朝、その写真は『最低の投票率で選ばれた政治家たち』として紙面を飾った。
✳︎「政治家」がキーワードの #ショートショート で不採用だったもの。
先日の話は無関心な有権者を書いたものだったので、今回はいかに政治家を笑うかという点でコミカルに書いた。
視覚に違和感がないようにベテラン議員ではなく重鎮と表記し、オチまでにテンポ感を出した。 #小説
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