口ぐせ

うちには三人の子どもがいる。
一番上のお姉ちゃんは「ねぇママ、そう思わない?」が口ぐせで、どうやら私の口ぐせを真似しているらしい。
二番目のお兄ちゃんは「つまりね…」が口ぐせで、これは夫が勉強を教えているうちに移ったようだ。
ただ、引っかかるのは末っ子の女の子の口ぐせだ。
「ごちそーさまでした。(よっこいしょういち…)」
「トイレ行きたーい。(よっこいしょういち…)」
「お散歩いくー。(よっこいしょういち…)」
立ち上がる時に必ず「よっこいしょういち」と言うのである。はじめ見たときは大笑いしてしまったが、夫に聞いても知らないと言うし、幼稚園の先生に聞いても「今時、そんなこと言いませんよ」と逆に笑われてしまった。
そこで直接聞いてみることにした。
「ねぇ? よっこいしょういちって誰が教えてくれたの?」
「うんとねぇ。あのねぇ…」
幼稚園児が小さな頭で考えている姿がなんとも愛おしい。
「うん、誰?」
「えっとねぇ。おじいちゃ!」
そう言うと自分が生まれる前に亡くなった祖父の遺影を指差した。
この子には私たちには見えないものが見えているのかもしれない。

#小説 #ショートショート

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