未来からの贈り物

西暦2500年。現世の人類は絶滅に瀕していた。俺は物心ついてから人間に会ったことはない。その代わりに毎日同じ時間、頭に装着した装置にメッセージが届いた。
「君が食べるはずだった食事は頂いた。申し訳ない。未来人より」
「君が誕生日にプレゼントでもらうはずだったサッカーボールは権利ごと頂いた。申し訳ない。未来人より」
こんなものが毎日届くのだから、正直、頭がおかしくなりそうだ。しかし、自分以外の誰かが救難信号やメッセージを発している可能性があるので、この装置を外す訳にはいかない。どこかに誰かがきっといる、それが俺の生きる希望だった。
ある日のこと、いつもと同じようにメッセージが届いたーー
「君が出会うはずだった運命の相手は頂いた。申し訳ない。 未来人より」
この時ばかりは絶望した。限りなく低い確率の希望が刈り取られたのだから…。
いつの頃からか、卑しい人間どもは未来を飛び回って略奪行為を繰り返すようになった。人間は今俺が立っているこの荒廃した大地を捨てて、未来のどこかに行ってしまったようだ。俺が生きる未来には本来、俺が得るべきモノや権利の大半は存在しないのだ。簡単な話、あいつらは権利や知性の泥棒だ。こうやって毎日メッセージが届くのは、当事者がリスクを回避できるようにメッセージを送りさえすればその罪は罷免されるという訳の分からない法律があるらしいのだ。何もかもが馬鹿げている。俺の全身を怒りが駆け巡る。
「何が未来人だ! ふざけるな! ウイルスのように増殖しては破壊活動を繰り返すお前らには負けない! 絶対に追いついてやる!」
俺は人間以外で始めて、理性と知性を兼ね備えた類人猿としてこの星で生きることを、そして復讐することを誓った。絶対に許さない。

✳︎「なぜ人間よりも頭のいい類人猿が出てこないのか?」という疑問に対して、「人間がいる限りは出てこないだろう」というのが結論ならば人間をどっかにやってしまおうという発想からスタートしました。タイトルに対応するのは因果応報になります。
#小説 #ショートショート

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