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キャンセル増加と代役増加

こんにちは、ファゴット奏者の蛯澤亮です。楽器を吹いたり、youtubeやnoteで情報を共有したり、コンサートの企画運営をしています。

ここのところ、コロナ関連でキャンセルが増えてきました。コンサートのキャンセルは以前と違ってあまりないようですが、出演者のキャンセルが多い。つまりその分、代役が多い。

この代役というのは音楽家にとってとても大切なチャンスでもあるのです。

代役から成功した音楽家は多い

実は代役というのは大変です。
その日たまたま空いてて仕事もらえたからラッキーってだけではないのです。

その仕事によっては自分の運命を左右するときがあります。

例えばウィーン国立歌劇場の音楽監督にまでなった現代の最高峰の指揮者の一人 フランツ ヴェルザー=メストも代役からブレイクしました。
私が音楽家になるきっかけとなったクラウス テンシュテットという当時の巨匠がロンドンフィルと来日した時、健康不安のあったテンシュテットの補助で帯同していたのが若きヴェルザー=メスト。その不安は的中してしまい、テンシュテットは来日するものの体調を崩し指揮を振れず、ヴェルザー=メストが代役をして若い才能がブレイク。そこから彼のキャリアが上昇気流に乗っていきます。

若き日のヴェルザー=メストとロンドンフィル@サントリーホール


キャリアを積んでウィーンフィルのニューイヤーコンサートを振るヴェルザー=メスト


ヴェルザー=メストの前にウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めた小澤征爾はニューヨークフィルのアシスタントをしていた若い時に、当時の音楽監督レナード バーンスタインが倒れて指揮が振れないから代役を頼むと言われて猛勉強。本番をふるという緊張感でさまざまなシミュレーションもしたそうですが、実はそれは嘘。バーンスタインの冗談だったそうです。しかし、実際に振るという緊張感の中で勉強するのはアシスタントとして勉強しているときと全く違うということを気付かされることになったというようなことを本で読んだことがあります。

実際、歌手がブレイクしたり、出世を掴んだりするのは代役が多いです。しかし、チャンスを掴むのは以前からしっかり実力を積んできた人たち。私たち演奏家はそのためにも日々の努力をかかせないわけです。


若者こそ代役に命をかけろ

人生が大きく変わらなくとも、ちょっとしたステップアップになるような代役が回ってくることもあります。どんなところから自分がステップアップするかは実際わかりません。思いもよらないところから自分のキャリアが大きく動くかわからないのです。

例えばプロオケの代役だけでなく、アマオケの代役であっても、特に学生や卒業したての若手は回ってきた時にしっかりと演奏することが大事。誰が聴いているかわかりませんからね。そこでの評価が次につながったりすることもあります。

私は気まぐれな性格でそういう日々の努力が抜けがちな人間です。だからこそ思うのは、「成功している人こそ、どんなときも全力で向かい合う」ということです。

先日「なんでも真面目に取り組みすぎるんです」と自分の短所のように言ってきた人がいたんですが、なんでも真面目に取り組めることだけで才能です。それがきっと実を結ぶ時が来ます。大事なのはそれを継続すること。くじけないこと。

この特殊な時期だからこそ、若手は「自分に出番が回ってくるチャンス」と思って練習し、技を磨き、備えることが大事だし、そのときに「自分がその仕事を先輩から奪ってやる」くらいの意識が必要だと思います。そんなギラギラした若手の方が実はかわいかったりもしますw

私はファゴット奏者としてもう中堅ですが、昨今の状況を見て改めてそんなことを思いました。これを書いていて、学生の頃の自分はギラギラしてたなあ(生意気だったなあ)と思い出して苦笑しました。そんな自分を受け入れてくれた(今でも受け入れてくれてる)先輩方に感謝です。



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