【演奏論】演奏中の動きについて
こんにちは、ファゴット奏者の蛯澤亮です。楽器を吹いたり、youtubeやnoteで情報を共有したり、コンサートの企画運営をしています。一緒に人生を楽しんでいきましょう♫
さて、今回考えてみるのは演奏中の動きについてです。
みなさん、演奏をする時に動きますよね。聴く専門の方は演奏家を見ていてその動きの違いに気付いたりしていますか?
実は演奏者本人はあまり気付いておらず、聴いている方がいろいろ思っていることが多いのが演奏中の動き。
また、演奏者が共演者に思うこともしばしば。
演奏中の動きで大事な音はなんなのか?
昔の人はあまり動かなかった
過去の映像を見ても分かるように、昔の演奏者の方が動きが少なかったですね。オーケストラにしても一昔前のオケの方が動きが少なく、最近の方がみんな思い思いに動く人が増えています。
事実、私たちの親世代にあたる師匠たちは動きに関してよく注意してきました。私の場合、ウィーンで習ったヴェルバはとにかく体の使い方の悪いところを指摘しましたが、ちょっとの動きでも余計だと思うと指摘されたので、「そんな細かいこと?」と思ったこともしばしば。
でもそれだけ昔の人は余計な動きをしないように教えられ、自分でも意識してきたのでしょう。実際にヴェルバの動きはソロを吹く時でもオケで演奏する時も最小限の動きです。最近のファゴット奏者がソロを吹く時に楽器をぶんぶん振り回すのとは対極です。
では、動きはあった方が良いのか?ない方が良いのか?
演奏の邪魔になる動きはない方が良い
これは演奏をする立場からも言えるし、聴衆側からも言えることです。
まず、演奏する側から言うと、その動きが音に悪い影響があるのであればないほうが良いですよね。これは自分ではなかなか気づけない部分でもあります。本人は「この動きをした方が吹きやすいし音も良くなる」と思っていても、その動きがない方が実は上手くいくことがあります。先生に指摘されることはこのパターンが多いですね。これは自分でしっかりとチェックする気持ちがないと、プロになってから崩れていくので要注意です。自分が無意識に動くことで実は演奏に悪い影響を与えていたということもあります。
何気なく動いている動きが自分のフレーズや歌い方に影響を及ぼしていることもあります。その動きが自分の音楽を作っていると思っていても、逆にその動きが良い流れを遮ってしまっていることもあるのです。
私もたまに鏡を見て、自分の動きや見え方をチェックします。最近は配信で本番の動画が見やすくなったので便利ですね。
聴衆から見た動き
演奏の邪魔になる動きは聴衆からの目線も重要です。
その動きがあることで出てきている演奏の先入観が生まれることがあります。例えば、実際はすごく長いフレーズ感で演奏していても、動きが小さいフレーズ感で感じているような動きでいると聴衆はその動きでフレーズを感じてしまうことがあります。動きは音の先入観を作ってしまうのです。フレーズを切るつもりがなくても、切っているような動きをしてしまって、演奏はつながっているのに聴衆は切れてるように感じてしまうこともあります。
常に動きがある人はだんだんとその人の繊細な表現が聞き取れなく場合もあります。常に動いているとそれだけでずっと音がわーっと鳴っている感覚になったりしませんか?ずっと同じような動きをしている人も、ずっと同じように音を出しているような感覚になったりしてしまいます。
そういったことが嫌でピアニストのリヒテルは暗闇でのコンサートをやっていたそうですが、実際は目に見える場が多いし、演奏する姿は聴衆も見たいものです。そのためにはやはり聴衆に音楽を伝えるために邪魔な動きはない方が良いし、音楽的な動きを研究する必要があります。
演奏と動きが一致している演奏家を手本に
何事も目標を見つけるのは大事です。手本があればそれを見ているうちになんとなくその動きが自分にも入ってきます。
そして鏡や動画を見て自分が無意識にどんな動きをしているか確認することも大事です。アンサンブルをしているなら周りの人と自分の動きが調和しているか、自分の動きが何かを乱していないかを考えることも大事でしょう。
自分を出すことが大事な演奏家。しかし、動きによって表現をさらに増幅させるのは良いですが、マイナスになる動きがないかチェックすることも大事です。
その人の動きを見ていると音楽も見えてくるような動きとはどんな動きなのか、考えてみるのも新しい視点かもしれません。
動きに関してはアンサンブルをしている時の動きも大事ですね。それはまたの機会に考えてみましょう。
それではまた。良い日々をお過ごしください。
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