ミソシル楽園ショート解体

「楽園のアダムとイヴだとしても、日常は日常なんですよ。つつがなく、きちんと。それで十分です」

「貧困のアダムとイヴじゃないかな」

「ボロアパートのアダムとイヴならそれも仕方ないんじゃないですか。余計なものは求めるなかれ、です。味噌汁がおいしければそれでいいです」 

「沙耶ちゃんイズム怖……」
「日常を受け容れないしーさんが恐怖的な感じなのでは」

(でも俺はこんな生活すんの、初めてだしな。いっぱんかてい? 家庭? それ自体が初体験だし毎日が観光ツアーなんだけどな。沙耶の言動もどうぶつえんのパンダだ)
(……ろくでもなきこと考えている……。静かに味噌汁を飲むだけで……わかるようになってきてしまった。なんなんだこの男性は本当に)

「あ。明日は卵の特売デーです」
「そんじゃ、味噌汁はかきたま味噌汁? それともすいとん入れる?」
「なんか馴染んできてもコワイ」
「なんなの沙耶ちゃん、俺を見る目が虎かなんかを監視する目だよ」
「言い得てまんまでは……」



END.

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