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テツとマフオのわんわんTV談議

テツマフオも15歳をとうに過ぎ、老犬の域に達して、近ごろはテレビの前でゴロゴロしていることが多くなった。
テツは図体がデカいうえに、毛深くモフモフなので、やたらとかさばって見られるのが少々不満なお年頃だ。

その日もテツは、つけっぱなしになったテレビに見入っていた。
液晶ディスプレイにはペンギンという、鳥なのに空をとばないで、海を泳いだりする変わった生き物の姿が映し出されていた。

テツ「マフオ! ちょっと来いよ  変わった奴が映ってるぞ!」

リビングの奥から、ジャックラッセルテリアのマフオがおっとりと現れて、テレビの前に並んで座り込んだ。

左がテツ、右がマフオです


マフオ「ああ、これな、 おもしろい生き物だよね」

テツ「オマエ、聞いたか? コイツらの子育ての話」

マフオ「なんか、飲まず食わずで卵あたためるのも、いるらしいね」

老犬だけあって、長年にわたるテレビからの情報はかなり蓄積されている。

テツ「おー、すげえよな! でもよ、せっかく子どもがかえっても、育児放棄する親ペンギンがいるらしいぜ!」

マフオ「へぇーーー、  弱いヒナは、育ててもらえないのかな‥‥」

テツ「よくわかんないけどよ、見ろよマフオ! その育児放棄された仔を、拾って育てるペンギンも、いるんだってよ!」

マフオ「ほんとに? その親ペンギン、自分の子どもは死んじゃったのかい?」

テレビ画面では、へなへなの仔ペンギンを、親ペンギンが囲んでいた。

テツ「それがよ、このつがいは、オス同士のペアなんだぞ!」

マフオ「ええーーっ  オス同士のペンギンが?!」

元々が都会育ちで物識りのマフオにも、初耳のようだった。

テツ「おお、人間の見立てではな、 卵がうまれないオス同士のペアが、捨てられた仔に愛情を注いでな、共同で子育てしたんじゃないかって、 言ってるぞ!」

マフオ「へぇーーー、ペンギンって、大した生き物なんだねぇ」

テツ「ほら、動物園でも、オスのペンギンペアがって‥‥、ニュースになってるぞ!」

    ➡➡➡ https://www.dailymotion.com/video/x6v3kij  


マフオ「これはもう、ぼく達イヌの常識を超えてるね」

テツ「そうだよな、 オレ達イヌは、メスのにおいにクラッとするだけで、基本子育てはメス任せだしな、 ペンギンは偉大だな!」

山野を駆け回って育ったテツは、基本的に自由人(自由犬)だ。

マフオ「テツくん、ぼくはね、人間もオス同士で子育てしてるって話を、テレビで見たことあるよ」

テツ「そうなのか、  やっぱ、捨てられた子をもらってたのか?」

マフオ「そうだね、 本当の親が捨てた子を、もらって育てるなんて、さすがは人間のオスだなって、ぼくは思ったんだ」

テツ「そうだなぁ‥‥」

マフオ「でも、そういうのは、とっても遠い国の、特別な話で、世界中でも珍しいんだよね」

テツ「そうなのか?」

マフオ「うん、人間には決まり法律があって、オス同士の子育ては認められないんだって、ぼくは聞いたよ」

テレビの画面では、すっかり成長した仔ペンギンが、他のペンギンと一緒によたよたと歩き回っていた。

マフオ「ねえ、テツくん、 人間は、手先も器用で頭もいいし、ぼく達みたいなイヌも世話して、かわいがってくれるのに、人間の常識にはよくわからない所があるね‥‥」

マフオは、ペンギンに出来ることが、人間には出来ないのが、なにやらもどかしいようだったが、それらの次元が少々異なることくらいは、イヌなりに理解していた。

テツ「まあな…、けどオレ達のご主人なんかは人間がデキてるじゃんか! この前なんか、オマエ散歩の帰りに疲れて、だっこしてもらってただろ!」

マフオ「テツくんだって、クルマでお出掛けの時に、座席にあがれなくて、お尻を押してもらってたでしょ」

テツ「おおよ! このトシになってもつつがなく暮らせるのは、ご主人のおかげだ」

マフオ「人間がみんな、ぼく達のご主人みたいに優しかったら、ヒトもイヌもオスもメスもなにもかも、みんなで幸せになれるのにね?」

テツ「そうだな、テレビでも見たけど、ひどい目に遭ってる動物もたくさんいるよな、オレのトモダチも、人間に虐められた」


マフオ「ぼくは、好きなもの同士が家族になって、捨て子を拾って子育てするペンギンが、なんだかまぶしいな‥‥」

テツ「そうだな、  マフオが言ってた、その『人間の決ま法律り』ってのも、いつか、変わることもあるだろうよ」


テレビ番組はすでに入れ替わって、画面では秋鮭が不漁で高値になっているという、現地からのレポートが入っていた。

マフオ「テツくん、なんだか小腹が空いてきたね」

テツ「そうだな、 おやつでもおねだりしに行こうぜ!」




2匹はゆっくりと腰を上げて、ご主人がいるキッチンの方へと歩いて行った。
さっきから、ブロッコリーとじゃが芋を茹でるいいにおいが漂っていた。





(おわりに)
オスのペンギンペアによる子育てのお話は、創作ではありません。笑
テツちゃんの飼い主のアトリエわたりねこさん、
マフオちゃんの飼い主のナカムラ・エムさん、
愛犬にご登場いただきありがとうございました。
おかげさまで、センシティブなテーマを愉快なお話に書き上げることが出来ました。
お礼にドッグフードを送らせていただきます。
え?!
そこいらの安物は食べさせていない?
そんなぁ~~~💦

最後に、大腿骨の骨折により長期入院中のアトリエわたりねこさんの、1日も早い回復を、心よりお祈り申し上げます。
テツちゃんもお留守番がんばれ~!




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