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FREE THE TONE GIGS BOSON GB-1Vの修理

FREE THE TONE GIGS BOSON GB-1Vの修理です。

FREE THE TONEが2012年に発売したオーバードライブ。

色々と拘りの詰まったペダルで、音以外で言うと、入力のインピーダンスの切り替えや、独自のHTSサーキットを搭載してます。

HTSサーキットとはなんぞや?という事ですが、詳しくはメーカーのHPを見てみると判ります。
要するに、良質なバッファーとノイズレスなスイッチを実現したという感じでしょうか。

持ってみると判るのですが、本体が軽い。
MXRのちょい大きいやつなんてめちゃくちゃ重い。

それと裏側を見るとFREE THE TONEの刻印が入ってます。

ケースは完全なオリジナルで、これだけでもコストが掛かってるのわかります。


症状を確認していきます。

電源点かず、スルー音もエフェクト音も何も出ず。
私はここでバッファードバイパスだと言う事に気がつきました。

スルー音は少しだけ出てたりします。

電源周りかと思いきや、少しだけ音出るというのは何なのかな?っと嫌な感じですね。


とりあえず、中を開けてチェックしてみます。

裏蓋を開けて中身の基板が見えました。

最初に目に付いたのが、ハンダの修正跡。

誰かがイジった跡ですね。

正直、誰かが修理や改造に失敗した物とかは修理したく無い。
何をしたか判らないですからね。

裏側からだと何が付いてるかも判らないので、基板を取り出します。

フットスイッチを外そうと思ったら、いつもの14mmのレンチでは合わない。
15mmのレンチを使ったら合いました。

この15mmのレンチというかナットって普通あんまり使われてない。
現に15mmのレンチは近所のホームセンターでは売っておらず、ちょっと離れた大きいホームセンターで見つけて買いました。
最近のレンチのセットだと入ってるみたいなのですが、14mmの次は17mm
になってるのが普通でした。

結局何が言いたいのかと言うと、15mm使う事で分解しにくくしてるのではないかと。

無事に基板が取り出せて、ハンダの跡のパーツが判りました。
電解コンデンサでした。

一つだけNICHICONのMUSE FGが付いてます。
これが交換された物なのか、元から付いてたのかは不明。
他がMUSEじゃないので、これだけ交換してる様な。

他のコンデンサを見ると、潰れてる物があって、無理矢理引っこ抜こうとしたような跡が。

じっくり観察してて、電源部のコンデンサのパターンがかなり怪しいのを発見して、その時にある重大な事に気がつきました。

インプットジャックのリングとスリーブ部分がなぜかショートされてる。

これ、自作のエフェクター作ってる人ならすぐに判ると思うんですけど、エフェクターの電源はインプットジャックのリングとスリーブがショートする事でONになる仕組みになってます。

つまり、ショートされてると言う事は常にON。電池の消費も常にしてる状態。
電池式にとってはありえない状態になってるんです。

と、思ってもしやとアウトプットを見てみると、チップ、リング、スリーブがちゃんとケーブルで分かれてます。

ここでとあるエフェクターが頭をよぎりました。
以前に修理したProvidence STAMPEDE DT SDT-2です。

このエフェクター、ジャック交換したのですが、この時にアウトプットジャックがリングとスリーブショートされてて、これが接触不良とノイズ対策なってるという仕様だったんです。
ちなみに、私の修理経験上、チップ部分の接触不良は沢山見てきましたが、スリーブ部分が接触不良起こしてるのは一度も見た事ありません。

よくよく見ると、Providenceのペダルと作りが非常に似てる。
調べたら、元々FREE THE TONEはProvidenceのグループ傘下にあったみたいなので、一緒なんでしょう。

話は戻るんですが、インプットとアウトプットが逆に付いてるんじゃないかという疑惑が浮上したので、早速逆に繋いで音出しテスト。

スルー音も出る、エフェクトも掛かる、全てのツマミもスイッチも動作する。

しかし、なぜかLEDだけが光らない。

という事で、LEDが光らないので、LEDをチェックしてみます。

テスターでテストしましたが、何も反応せず、壊れてました。

ここで考察すると、LEDが光らなくなって、電源部分が壊れてると思って、コンデンサが怪しいと思いいじったが直らず、その際に、インプットとアウトプットのジャックを間違えて付け、音まで出なくなった。
っという感じでしょうか?

LED交換の為に、上の基板を取り外します。

無事に取り出せて、目に付いたのがモールドされたオペアンプ。
気になるなぁー。

不良のLEDをGOOTのTP-100で取り出し。

新品のLEDを用意する訳ですが、画像や動画で確認したのですが、LEDの色が水色っぽい。
ここでも何か拘りが見えますね。

5mmのLEDは色々な色を持ってて、色が似てそうなアイスブルーという色のLEDを取り付け。

取り付けたのでアダプターを繋いでチェック、無事に点灯しました。

このまま修理が終わったので組み立てと行きたい所ですが、このモールドされたオペアンプが気になります。
という事で、取り外して見て見ます。

取り外した時に、本体に熱が伝わって、モールドが柔らかくなりました。
指で剥がしたら、大部分が剥がれました。

この時点でオペアンプの正体は分かったのですが、もっと綺麗に剥がす為に、例の謎の液体(燃料用アルコール)に浸けて綺麗にしました。

オペアンプの正体はJRCの4558Dという歪み回路に使われてる一番メジャーな物でした。
なぜこれがわざわざモールドされてたのか…。
見てはいけない物を見てしまった感じです。

組み立てる前に、忘れてはいけない下の基板のコンデンサ部分を直していきます。
動いてても、これをほっとく訳にはいきません。

ハンダの跡がある電解コンデンサは全て外します。
外して、例のごとくフラックスでよく見えないので、クリーナーで掃除。

綺麗になった所でチェックしてみると、2箇所パターンが無くなってる部分がありました。

テスターでチェックして、近くの抵抗にコンデンサのマイナス側を直接つければ問題なさそうです。

電解コンデンサは潰れてたりしたので、全て交換する事にしました。

電源部分のコンデンサはNICHICON MUSEのKA。これは105度なので電源に良いかと思って使ってます。

マイナス側のリード線を上手い事曲げて、抵抗部分に接続してハンダ。

これで断線は修理完了。

元から付いてたMUSE FGはそのまま使います。

潰れてた電解コンデンサはバイポーラだったので、家で余ってたELNAのRBPを使いました。特に拘りは無いです。

コンデンサの後処理終わったので、フラックスクリーナーで掃除して組み立てです。
ケースを少し掃除して、インプットとアウトプット間違えない様に取り付け。

組み立て、修理完了です。


修理終わったので音のチェック。

オーバードライブなので、これといって、何がどう良いとか悪いとか無いんですよね。
正直言って、音は好みなので、気に入れば使えばいいといつも思ってます。

このGIGS BOSONって、HTSサーキットっていうのが売りなのですが、単体で音をチェックしてもなかなか良さは発揮されないかも。
エフェクトボードの中に入れてこそ、良さが発揮されるのではないでしょうか?

FREE THE TONEさんはなかなか難しい物を作りましたね。


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