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愛をとりもど(した)

エベレスト食肉センターです。

ゲーム制作を始めてからなんだかんだとつけてきたこのブログですが、最初の記事を覚えている方はいますか?

僕たちが最初に創作をしようとしたとき、まず立ちはだかった壁は「愛とかがないこと」でした。

おそらく若い造り手たちにはよく分からないと思う。好きだから絵を描くなり物語を作るなり世界を産むのであって、やってもやっても時間が足りないくらいなんじゃないだろうか。

だから「愛とかがない」僕たちのことが、冷たく見えたり、または、どうせ同じ穴の貉のくせにかっこつけてるように見えたりしたかもしれないよね。でもそれは違ってて、僕達だって昔はそうだった。そしてずっとそうだと思っていたらそうじゃなかった……というのが上にあげた記事です。

愛を取り戻したんだと思う

これは僕が勝手に書くことで、特に何を書いて何を書くなと言われてはいないから、僕の常識の範囲で書いてしまいますが、ここんとこ1ヶ月くらい、僕は講談社クリエイターズラボさんのもと、ゲームの企画書を書いていました(伏せても掘れば2秒でわかることなんで名前も書いちゃいました)。

担当編集の方は優しく、お伺いする限りでは編集部の皆様も、こんな僕たちにとても優しい目を向けて下さっている。
そんな環境にちょっと甘えつつ、僕はちょっと無理を言って、ほぼ脳の中にあった「食糧天使」の続編の企画書を提出させて頂きました

ちなみに編集さんには「続編は……!」とやんわり言われていた。それでも「ダメ元でいいんでやらせてください」とお願いしたのは、今の僕の思いつく限りで最も求心力のあるゲームだと思ったから。フリーゲームでウケを意識するかどうかの論争に加わるつもりは一切なく(人によるでいいと感じている)、ただ、今回は、リリースに関わっていただくならある程度結果が残せそうなもののほうが会社さんのためになると思った次第です。

そして結果的に没で。
ここまで読んでもらえばわかる通り「当然の没」にも関わらず(普通に考えて個人創作の2作目を会社から出すのはかなり大変だと思う、いろんな意味で)、とても優しい言葉をかけて頂きました。

……いろいろ勿体ないくらいのお言葉を頂いたので「講談社の人たちって優しいしマジありがとうございますという話です!!!!!!」という前提で今僕が話してることはこの記事読み終わるまではせめて忘れないで欲しい。ありがとうございます。

でも、没の連絡が来たとき、なんかめちゃめちゃ悲しくて……いや、担当編集さんの一報からしてめちゃめちゃ優しかったのでそういう、文句とかがあるわけでは本当になくて、ただただ「めちゃめちゃ悲しくて」、

本当に「めちゃめちゃな気持ち」になって荻野にLINEをした。誰のプライベートも重視していないので普通に抜粋します。

普通に悲しくて泣きそうなエベレスト食肉センター

編集さんは「コンセプトを残しつつ次を」と言ってくれたのですが(嬉しいです)、僕の中では新作のキャラクターや話の流れがもう完全に見えてたので、今のコンセプトを生かして別の姿にすることは難しく、となると、一旦なかったことにして別の作品を作るほかないなという心境でした。

最初は『まあダメだったらフリーで作ればいいや』の気持ちだったんですが、食糧天使の2作目を商業ラインに乗せるにあたって、キャラクターデザインやシステムの大幅な変更、シナリオやスチルの大幅なボリュームアップがありました。
故、いや、通らなかったら困るとかそういう話ではなく、単に、僕としては、無賃で作るという線は自分の中でなしになった。

僕のシナリオなんかまあ正直どうでもいいんですが(なんかあろうがなかろうがなんかしらは書いてるんで)、力の入った絵やLive2D、スチル、背景差分、等、そういうのを荻野に無料でやらせることが本当に無理でした。

クリエイターズラボの選考に通ったとき、荻野は僕に「君の作品にタダ乗りしてごめん、もっと上手い絵描きなんかいくらでもいるのにね」と言った。

なんかそういう思想も僕は無理で、でも、そういうことを言われたときに「なに言ってんの、君の絵が1番だよ!」とか他を知らないのに適当言うこともできない(主観ではそうではあるんだけど)。何をもって上手いとか下手とか門外漢の僕が言うより、ただデカい金をつかませて「これが君の働きの正当な対価らしいよ」と結果で言いたかった。

だから僕は新しい話を、キャラクターを、本質的に殺さなきゃいけないと思った。
作中でいくら残酷に殺そうが、生きている時間があれば本質的には死なないし、プレイしてくれた人が覚えてくれていたらそれは実際する人間と同じくらい生きていることだと思う。彼らを本当の意味で殺すことができるのは僕だけで、そうするほかなかった。

……そう思ったら本当に悲しくなって、全然仕事中なのにちょっと涙が出た。でも荻野から返ってきた言葉は下記。

ぺんぎんになってる荻野
どんぐりになってる荻野

このメッセージをもらったとき、

殺さなくていいんだ!!!

と思いすぎて嬉しいのか悲しいのか本当に情緒がおかしくなり、たまたま通りかかった人間に「ごめん、ハグします」と宣言してハグをしたが最後、全然関係ない職場の人を抱きしめたままボロボロ泣いてしまった。
こんなにボロボロ泣いたのは学生時代にベイマックスを見たときが最後だと思うんだけど、とにかく大の大人が、目から涙を20粒くらいしっかり床に落として泣いた。多分「エーン!!」みたいな声も出たと思う。

嬉しかったけど、気持ちはなぜかとても悲しくて気持ち悪かったな。

僕普段全然悲しまないんですよ。悲しみって足が止まるだけで本当に意味ないんで、意識的に感じないようにしてて。メソメソしてるくらいならさっさと切りかえて行動したほうが早いしね。
だから企画書戻された時点で「じゃあ次の企画作る。いついつMTG」みたいなこと言いたかったし、当然言える気でいた。

でも僕はなんか……絵がやっぱ欲しかったんだよな。動いて欲しかったし。そういうのがついて、僕の話があったら、という気持ちが捨てきれなかった。だから、勝手に書いて自己満足するからいいです(自分の中だけで決着つけます)、ともなれなくて、なんかそれも多方面にめちゃめちゃふがいなかった。捨てられないならせめて自分で決着をつけるべきだと思った。

まとまらなくなってしまった。
その後も僕は泣きながら駅を歩いて、荻野に電話して、でもただ悲しいだけで誰にも文句はなかったので支離滅裂なことを言い、ただ悲しく、でも……ふと思ったわけ、これって愛をとりもどしたんだなって。

本当に昔の話、物語を書き始めたばかりのころ、話を完結させないことが本当に本当に許せなかったことがある。

自分が書くのをやめてしまったら、キャラクターたちが死ぬことになりはしないかと考えて、なんとなく惰性でも完結させる習慣があった。
でもいつしかそういう気持ちはなくなって、自分のキャラクターが『キャラクターにすぎない』ということを理解して、ダメなら下げるみたいなことが当たり前にできるようになってしまった。

でも今回久々に、本当に久々に、書かないってことは殺してしまうってことだ!という考えが自然に出てきて、それはとても嬉しいことだったな。
そしてそれをすぐに「じゃあ作ればいいよ」と言ってくれる友達がチームのメンバーなのもありがたいことだった。気持ちとしてそう思うことは簡単だけど、100時間単位の無賃労働を突然眼前につきつけられて、1秒で「やる」と言える人はそんなに多くないんじゃないだろうか。

僕はずっと荻野には負い目がある。多分、僕の世界を描いてもらっているという気持ちがちょっとあるからだと思う。別に『僕の作品だ!』という気持ちじゃないし、二人の作品だとは思ってるけど、本当に荻野が表現したいことをさせられてあげているかというと少し疑問が残るというか、単純に僕が話を書く人からそう思うだけだろうとは思うけど。

でも、僕の書く話を好きでいてくれて、やってて楽しいなと思ってくれてるのなら、荻野が仲間でよかったなと思う。今後も、別に誰にウケなくてもいいけど、荻野が絵を描きたくなるような話を書き続けていきたい。

というわけで、愛をとりもどせたこともよかったし、改めてこのチームでよかったな~と思えたこともよかったし、総括よい体験をしました。

これからの展望は、いったん僕は食糧天使の続編を作りたくて、でも同時並行で編集さんと話したり企画作ったりもしたくて、改めて前向きな気持ちです。別の作品のことを考えるのも(ややプレッシャーはあれど)楽しいよ。

長い日記になって申し訳ない、でもまあゲームのカテゴリであげておきます。
今後とも爆爆赤青をよろしくです。

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