ごめん、あれやっぱパンだった

前日大根のピクルスを作っておいたが朝起きて食べると辛かった。大根の辛みを抜くべく長めに空気にさらしたのだが足りなかったか、もしくはそもそも辛みの強い固体だったのかもしれない。

食べられなくもないだろうと判断してそっと朝食の銘々皿につけた。

子どもたちに対して「これ食べられるだろうか」と思いながら何も言わずにとりあえず盛って試すことがとてもよくある。

息子が食べたのを見守り、あとは朝の遅い娘だ。私がお化粧をする頃に起きて食べたようで、あとで「今日の大根、一気に食べたら辛かった~」と報告があった。

ごめんそれ一気に食べなくても辛いんだよと思ったが「おお、そうか! がんばったね!」と元気に返事をした。
全員が出かける日だった。学校へ事務所へと久々にそれぞれに持ち場へ散った。

うちはもともと日中は人のいない家だ。子らは学校へ行くし、私も仕事にでかける。平日の昼は人が家にいることの方が珍しい。この数か月、急に家が家としてかなり使われたことになる。床、一気にすり減ったんじゃないか。

書類を回したり健康診断の申込用紙をもらったり本社とは離れた事務所へ行くなど会社員らしい振る舞いをして大充実した。勤め人が性に合っている。

帰ると息子も帰ってきていて、今日勉強した火山の話をしてくれた。「噴火が起こってマグマが吹き上がるじゃん? これが空中を飛ぶのを火山弾って呼ぶんだけど、その一種にパン皮状火山弾っていうのがあるんだよ」
表面は冷えて固まるけれど、内部は熱いままで、熱い部分が冷え固まった外部を破る、それでパンみたいな形状になる火山弾なのだそうだ。

これ。と写真を見せてくれた。「すごい! こんなパンみたいになるの!? すごい!」「だよね?」「これはパンだわ~!」

ふたり、パンだパンだと盛り上がった。

それから土付きで買った新じゃがを洗った。洗いながらたわしで皮もむいていく。すっかり無心になって集中して、土付きの野菜など最近は面倒で買わなかったが楽しいところあるんだよな。面倒くささというのはなんなんだろうな。面倒だけどやってしまえば楽しことが世の中にはあまりにも多い。
じゃがいもはふかしてたらこスパゲティの素をあえて、それからあれこれ適当に支度して晩ご飯。

子どもたちに声をかけると、息子が「ごめん、あれやっぱパンだった」と言ってやってきた。

さっき見てパンだパンだと言い合った写真は、パンだったのだ。

息子はパン皮状火山弾の写真を探したらしかったが間違えていたという。改めて本物のパン皮状火山弾の写真も見せてもらった。言いたくなる気持ちは分かるがパンではなかった。


日記が本になりました!
『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』と、『おくれ毛で風を切れ』を、よろしくおねがいしまーす!

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