感想:すばらしき世界

▷あらすじ
下町の片隅で暮らす短気ですぐカッとなる三上は、強面の見た目に反して、優しくて真っ直ぐすぎる性格の男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で暮らした元殺人犯だった--。一度社会のレールを外れるも何とか再生したいと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンがすり寄り、ネタにしようと目論むが...。三上の過去と今を追ううちに、逆に思いもよらないものを目撃していく--。 (Amazonより抜粋)


▷感想
よかった。私の悪いところで、感銘を受け過ぎると「よかった」しか言えなくなる。けどよかった。よかったんだよ。狂った役所広司も粋なキムラ緑子も、生活感と心がよく見える東京の人々、良いキャラクターと演技だった。
物語の中で、私自身の生活とも繋がる社会問題や人間の嫌な部分を見つめることになり、言葉にできない悲しさと不甲斐なさがあった。主人公が悪事のきっかけではなくとも、悪の原因とさせられてしまう。私は、彼の暴力を肯定しない。でも、見て見ぬ振りが必要になる社会。正義が通らないことがある社会。これらは単純に悔しいね。
そして、一度「普通」のレールを外れた人間を受け止める仕組みが乏しい社会。先日別の映画でも強く考えさせられたのでこの件は割愛するけれど、そこに対する冷たさを痛感する。

主人公が九州に向かうところの、わざとらしく古めかしく、豪華な演出は、その世界が夢だという象徴ともとれた。向かったきっかけは投げやりになってだけれど、九州で同志として認められ愛されたから、改めて東京のあの場で生きていくと腹を括ることができたのだろう。そうじゃなければ、どこで優しくされても「あなたたちに何がわかる」止まりだったと思う。
東京に戻ってからの小さな人の繋がりは温かかった。私は彼らのように、一度無茶を言った相手にあんなに親身になることができるだろうか。どこを彼の芯だと捉えるだろうか。自分との対話が止まらないし、答えも出なかった。
コスモスの香りを嗅ぐ役所広司の顔、最高でした。
強めの暴力があるので、万人向けではないですが是非たくさんのひとにみて欲しい作品。

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