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マンパワーだけではなく、仕組みで解決できないか模索する ~10月の自殺、過去5年で最多(厚生労働省)~

 令和5年10月に自ら命を絶った小・中・高校生は45人で、過去5年間で最多となったことが厚生労働省の集計で分かりました。内訳は、小学生が2人、中学生が14人、高校生が29人です。年間の自殺件数は増加の傾向にあり、以前、深刻な状態が続いています。

 このような中、文部科学省は、昨年11月に児童生徒の自殺予防会議を開き、昨年6月に公表した「こどもの自殺対策緊急強化プラン」の説明等をしています。

 会議では、以下のような考えや意見等が出されたようです。
 ①自殺予防教育には教員の高い指導力や学級経営力が求められるが、採用倍率が低下している中、資質能力をもった人を誰だけ採用できているのか。
 ➁自殺予防教育が、教育課程に位置付けられていない点が課題である。
 ③子どもが周囲に「助けて」と言える安心・安全な風土づくりは、毎日の授業の中でできる。
 ④すべての教員に必要とのメッセージを打ち出すべきだ。
 ➄発信方法だけではなく、アプリなどでの子どもSOSの発信を誰がどのように受け取るかの仕組みを整える必要がある。
 
 どの意見等も納得するところはあります。
 ①については、「倍率が低下していること=資質能力が低い=自殺予防教育ができない」という構図は少し短絡的な気がします。ここでいう資質能力とは児童生徒理解力等でしょうか。それならば経験的に見に付けていくものもあるでしょうし、そもそも、倍率が高かった教員なら、資質能力があるかというと疑問です。

 ➁については、すでに教育課程に位置付けられている中学校もあります。
SOSの出し方教育も含めると、小学校でも行っているところも多くあるはずです。子どもの実態に即したものになっているか、形骸化していないかを見直す必要があるかと考えます。

 ③は、ごもっともな意見です。生徒指導提要にもあるように「安心・安全な風土づくり」は、学校生活を送る上で非常に大切なことになります。間違いを恐れず挑戦したり、自分の弱さを見せたりすることができる環境があるとSOSが出しやすくなると考えます。

 ④については、いじめに関する事案が頻発した際、文部科学大臣が全国の教員にメッセージを送ったように、教員に自殺に関する現状の理解と危機意識をもってもらうためにも、文科省から目に見える分かりやすい形で、何かしらのメッセージを出すことも悪くはないと考えます。

 ➄は、一番納得した意見でした。確かに教員自身が、SOSを見逃さないアンテナの高さや感度のよさを身に付けていくことは大切なことです。子どもがいくらSOS発信、援助希求しても、子どもの心の声を拾うアンテナの高さ等がないと、あまり意味がないからです。
 しかし、教員の個々の能力差、学校の多忙化の現状等を考えると、それだけではなく、SOSをどのように感知し、誰が受け止め、どのように対応するかの一連の仕組みづくりが必要と考えます。

 ICTを活用し、悩みアンケート結果、気になる様子等のデータを全職員で共有できるようにしておくと、授業等で対象の子どもの様子を見る視点ができます。その子どもに対して担任以外の教員が声かけをする機会も増えます。子どもにとっては、担任以外のいくつかのチャンネルをもつことにもつながります。情報が共有できると、指導の方向性もそろいやすくなり、組織的な対応ができるようになると考えます。

 マンパワーには限界があります。たがらこそ、仕組みで解決できないかを考えていきたいものです。
 
 

 

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