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思い出の悪魔

先日、ニュースで『デーモン閣下、早期のがん手術』というニュースを見ました。
超早期発見だったそうで、術後も順調に回復されて、8月の音楽フェスにて復帰されるとのことで安心しました。


デーモン閣下と言えば、様々な場面で活躍している悪魔で、ヘヴィメタルバンド『聖飢魔Ⅱ』のフロントマンである。

私は高校生の時にテレビで見た『蝋人形の館』を聴き、悪魔が奏でる演奏に心を奪われてしまった。

そしてエレキギターのジェイル大橋の圧倒的なギタープレイと猫を思わせるようなビジュアルにハマっていた。

でも、なぜか家族や友人に聖飢魔Ⅱの信者とは言えず、1人で楽しんでいた。
深夜のデーモン閣下のオールナイトニッポン(ANN)をラジオで聴くのも楽しみだった。
ラジオで聖飢魔Ⅱの公開録画の無料招待があり、往復ハガキで応募すると、なんと当選してしまった。
収録場所は新宿だった。

高校生の私にとって新宿は未知の世界。
なんとかたどり着いても、再び家に戻れるのか心配なほど、私は怖気づいていた。
しかも、絶対に当たらないと思っていたから、1名で応募してしまったのだった。
ギリギリまで迷ったが、やはり生で悪魔を拝みたい気持ちのほうが強くなり、私は未知の世界、新宿へと向かった。
悪魔のために1人で新宿に出向いた話しは後にして、今回は別の話。


公開録画に行った後、しばらくしてギターのジェイル大橋が脱退してしまい、それから私も聖飢魔Ⅱから離れてしまった。
1999年には解散していた。
解散後も期間限定で再集結をして盛り上がっていた。


初めて、新宿で悪魔を見てから数十年後、私は再婚をしていた。
再婚した夫がロック好きで、2人でライブによく行っていた。

この日は東京厚生年金会館で洋楽ロックの祭典『CLASSIC ROCK JAM 』にデーモン閣下、大橋隆志さん(ジェイル大橋)をはじめ、有名なアーティストが集結するライブがあり、夫と見に行っていた。

席は1列目の1番端だった。
巨大なスピーカーが真横にあり、鼓膜が破れそうなくらい爆音だった。
席の端とはいえ、1列目で楽しむライブは最高だった。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、アンコールになっていた。
ステージ上ではメンバー全員でビール片手に盛り上がっていた。

もうすぐライブが終わってしまうと思っていた矢先、何やらデーモン閣下がステージの端のほうに歩いてきた。
そして私の目の前でデーモン閣下が止まり、私に向かって手招きをしてきた。
私は何が何だか分からないまま、ゆっくりとステージに近づいた。
そしてデーモン閣下が私に飲みかけのビールをくれた。
私は無意識にビールを両手で受け取り、頭まで持ち上げ深々とお辞儀をした。

私がビールを受け取ると、デーモン閣下は何事もなかったように、ステージの中央に颯爽と戻っていった。

私は、デーモン閣下からビールを頂き、自分の席に戻ってから急に心臓がドキドキしてきた。


ライブが終わり会場の照明が明るくなると、まるで夢から覚めた感覚だった。
そして夢ではなく手に持っているビールを見ながら、心が浮き立った。

会場を出てから、デーモン閣下に頂いたビールを一口飲んでみた。
苦かった...。


高校生の時、深夜に夢中で聞いていたデーモン閣下のANN。
その数十年後、まさかライブ中にデーモン閣下からビールを頂けるなんて、こんな想像もつかないようなことが起こるのか...。

そして、どんなに月日が経っても私にとって夢のような大切な思い出となっている。

これからも、デーモン閣下、聖飢魔Ⅱのご活躍を密かに応援しています。












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