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お誕生日会

あれは小学校一年生の頃、
山を切り開いてできたニュータウンにある
同学年が20人もいる大型マンションに
私は家族で引っ越してきた。

新しいマンション、
新しい小学校、
新しい友達…

私はそこで人生で初めて
『お友達の誕生日会』
の招待を受けたのだった。

きれいに髪をまとめてもらい、
母に買ってきてもらった
可愛らしい文房具のプレゼントを持って
ドギマギしながらお友達の家に向かった。

お友達の家は
室内の壁を折り紙の輪飾りやお花紙で
華やかに飾り付けしており
大きなテーブルの真ん中には
立派なホールケーキが鎮座していた。
学校ではガサツなクラスメイト達も
今日はいつもより少しだけお洒落して
そのケーキを囲みかしこまった様子だ。

「お誕生日おめでとう!」

皆でハッピーバースデーを歌い
順番にプレゼントを渡す。
主役のお友達はそれぞれのプレゼントに
喜びと感謝の言葉を口にする。

私のプレゼントは喜んでくれるだろうか…?

渡す順番を待っていた私の顔は
期待と不安で強張っていたと思う。

「わ〜可愛い、ありがとう!」

心の底からの安堵。
体が軽くなったような気がした。

「さぁフルーツポンチを作るよ〜」

お友達のお母さんがお盆に
大きなガラスの器をのせてやってきた。
と同時にみんなから歓声が上がる。

フルーツポンチ?

私は引っ越すまで
下町の祖母の家に住んでいたので
カタカナのお菓子はプリンとジュースと
アイスクリームしか知らなかった。
みんなはフルーツポンチを経験済みのようだ。

友達のお母さんはカットしたリンゴやバナナ、
フルーツ缶のみかんやサクランボを
豪快に大きなガラスの器に入れだした。
ケーキの時よりも子供達の視線が熱い。

お友達のお母さんがその場を離れたので
(これで終わり?な〜んだ…)
なんて思っていたら
奥から冷やした三ツ矢サイダーを持ってきて
ドボドボと中に注ぎだした。

サイダーが注がれることで
上に下にとフルーツ達が踊りだす。
そして器の内側にもフルーツにも
まんべんなくサイダーの泡がまとわりついた。
その泡に光が当たって
器の中にあるもの全てがキラキラと光っている。

わぁ、これがフルーツポンチ…。

器の中のあちこちで泡がプチプチ弾け、
このままずっと見ていても
まったく見飽きない気がした。

初めて口にするフルーツポンチ。

バナナもリンゴもミカンもサクランボも
口に入れるとかすかに舌の上で弾ける感覚。
バナナもリンゴもミカンもサクランボも
知ってる味なのにいつもの味とは全然違う。

サイダーを混ぜただけなのに?!

私は三ツ矢のマークを目にしっかり焼き付け
自宅に帰るなり
「家でフルーツポンチを作って欲しい!」
「リンゴとバナナとミカンとサクランボが入ってたの!」
「こんなマーク(三ツ矢)のサイダーを使ってたよ!」
と興奮冷めやらぬまま母に懇願した。

#炭酸が好き

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