嫌そうに食べるな、それ

仕事場で、会社の同僚の方から梅干しのお菓子をもらう。

「今すぐ食べてみて」

うーん、あまり梅干しは好きではない。でも、せっかく頂いたものを無下に断るなんてできない。

少しイヤイヤながらも、そのお菓子を食べる。

「イヤそうに食べるな、それ」言われてしまった。

嫌な表情は顔にでる。

ついつい、高校生の頃を思い出した。

確か大学入試を控えたシーズンだった。「好き嫌いすると、大きくなれないよ」と言われ、嫌いな椎茸をイヤイヤ食べていた。

結局、カラダは大きくならない。遺伝だから仕方ないか。

それでも、嫌いなものをイヤイヤ食べていた。今思えば、意固地になっていた。

ガマンすればなんだかんだ食べられる、そう思っていた。

入試がいよいよ、という日だったと思う。

センター試験が近かった私は、家では勉強できないため、予備校に向かう。

予備校へは電車で行った。大手予備校となると、わざわざ池袋まで行かなくてはならなかった。

電車に乗る。乗った時から多少違和感。でも気にせず乗車。

乗車してから4駅ぐらい。?、?何か胃がおかしい。

池袋まであと一駅。あー、もう、気持ち悪い。

でも、あとちょっとガマンすれば池袋駅だ。胃よ、もう少しガマンしてくれ。

ガマンできなかった。池袋まであと少し、という所でゲーゲー吐いた。

向かいの席に座る制服姿の小学生の目が点になる。

駅へ到着。まだまだ吐き気がくる。ゲーゲーまた吐いた。

そうしたら。隣の席にいた若い女の子が、「大丈夫?」と声をかけ。私へ、小さいビニール袋のようなものをくれた。

その袋に、私はまたゲーゲーと吐く。その女の子の彼氏も、私を心配してくれて駆けよってくれた。

韓流アイドルのような風貌をしたその彼氏は、駅員を呼んでくれていた。「大丈夫ですか?病院を手配しましょうか」と言われた。

コトを大ごとにしたくなかった私は、「大丈夫です」とその場を離れた。

もう十分吐ききった。大丈夫だと思っていた。

そうしたら、また胃が気持ち悪くなり、百貨店のトイレでまたゲーゲー吐いてしまった。

こんな状態では勉強どころじゃないから、薬局を急いで見つけ、太田胃散を買い、さっさと帰宅する。

太田胃散が効いたのか、帰りの電車では吐かなかった。

帰省するとき、地元の電車に乗るときいつも思ってしまう。

あの時、ゲーゲー吐いてしまって電車に乗っていた多くの方へ申し訳ない気持ち、そして意固地になって嫌いなものを食べ続けた後悔が今でも怨嗟のようにつのってくる。

やはり、嫌いなものは食べられない。ムリはいけない。

私の胃はあの時、何を思っていたのであろうか?今は知る由もないだろうけど。

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