見出し画像

恋もいつかは酸化する(2)

アダムとイブは愛し合っていた。誰かのからかいや嘲笑にも負けず。

ふたりの熱い愛情に嫉妬した悪魔が、彼らの仲を引き裂いた。

アダムは悪魔を恨んだ。そして、イブはまだアダムのことが忘れられずにいる。

憐れんだ神様が、ひとつキレイな水晶をアダムに渡そうとした。とても美しい水晶だった。

アダムが、その水晶を受け取ろうとして手を差し出した。

その瞬間、ひとりの盗賊がその水晶を奪い去ってどこかに逃げていった。

(中略)

神様は本当に気まぐれな存在だと思う。私に、気になる異性を紹介させようとするたびに、私ではない誰かにその子を与えてしまう。

もしかしたら最初から運命ではなかったのだろう。

好きな子とは、ある程度仲良くなっても、それ以上の関係にはなれない。

私が愛を伝える前に、その異性は誰か他の人のもの。

みんな、優しくて思いやりのある子だった。でも、だからこそ男たちをトリコにしてしまうのだろう。

月日は流れて。おそらく、彼女らは幸せな家庭を作り上げ、今日も子どもの帰りを待っているのだろう。

ひとり、飯を平らげる。もしかしたら、隣に誰か聖母がいたかもしれない。

過去の道は閉ざされ、未来はあたりが暗くて懐中電灯をかざしてもみえない。

夏もいつしか翳っていく。ボクの心に、靴で踏みつけたような痛みを残して。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?