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余命恋愛作品の傑作「余命10年」を観た感想【ネタバレ】

原作は小坂流加 さんの小説「余命10年」で、2007年に出版されています。
累計発行部数は80万部を突破しています。

映画のヒットもあり今後、原作の売上も伸びていくのではないでしょうか。


映画「余命10年」は、興行収入30億円を超える大ヒットとなりました。

主演の小松奈菜さんは、感情を抑制しなきゃいけないけど、気持ちを発露させなきゃいけない役に適しています。
恋愛映画なので、そこまで予算はかかっておらず、配給会社のワーナーブラザーズも相当潤ったんじゃないかと思います。
脚本は、 岡田惠和(おかだ よしかず )さんと渡邉真子(わたなべ まこ )さんの共同脚本です。
特に驚いたのは、岡田惠和さんの起用です。
岡田 惠和さんは、1959年生まれの脚本家です。
そういう年齢の人に、今時の恋愛の脚本を書かせた、そこに意外性を感じたんですよね。
恋愛物だから若い人に脚本を書かせよう、そういう常識を破った作品だと思いますね。

劇中では、病名は公開されていません。
Wikipedia(ウィキペディア)には茉莉(まつり)の病気は、 肺動脈性肺高血圧症(はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう)とありました。
心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいます。
この肺動脈の圧力(血圧)が異常に上昇するのが、肺動脈性肺高血圧症です。
現在、なぜこのような病気が起こるのか解明されていません。
よって、難治性呼吸器疾患 に認定されています。
劇中でも、茉莉が息苦しくなったり、酸素マスクを着けているシーンがよく出て来ます。
病名がわからなくても、茉莉が肺疾患を患っているのは、何となくわかりますよね。
病名を明かさないのは、今この病気で苦しんでいる方への配慮でしょう。
医学は日進月歩です。
今後の医学の発展により、より多くの人が救われる事を願います。

病気という壁

本当は茉莉も和人も一緒になりたい。
でも、そういう気持ちを阻害する病気という壁があります。
そこから物語が始まっていくんですね。

この映画では、スマホの壁もある。


途中まで、和人(かずと) は茉莉の連絡先も住所も知りません。
劇中では、駅でウロウロしていて偶然、茉莉に会う設定になっています。
この映画では、茉莉と和人は直接会って物語を展開して行きます。
今の時代、そこがまた新鮮だなと感じました。
あえてツールを使わず、物語を展開する手法を、この作品から学びました。

ポリフォニー(対立)を描く

物語を味わい深くしていくためには、ポリフォニーが必要です。
隠し味として重要な要素です。
まず茉莉と和人との対立があります。
独立して、お店を持って茉莉と新しい人生を始めたい和人と、病気で和人に迷惑をかけたくない茉莉との間に対立が起こります。
このポリフォニーは結局、茉莉が亡くなるまで埋められませんでした。
次に茉莉と家族との対立があります。
家族は茉莉の病気を治すため、病院の転院を進めます。
しかし茉莉は、自分の余命を知っているため、病院の転院を頑なに拒みます。
ここで茉莉と家族の間に対立が生じます。

「私たちってさ、どっちが可哀想なんだろうね。」(茉莉)

「余命10年」より

という言葉には、切実さがこもっています。

この物語では、登場人物が一人一人、掘り下げられています。
特に姉の桔梗 (ききょう)、お父さん、お母さん、玄 (げん)さんなどのキャラクターですね。
こういう脇のキャラクターをしっかり、描く事で、観衆は、姉の視点からも、両親の視点からも、仕事の同僚の視点からも物語に入っていく事ができます。

音楽はRADWIMPSが担当。


RADWIMPS(ラッドウィンプス )は「君の名は」の音楽も担当しています。

しんみりとした雰囲気を醸し出しています。
この映画では、あえてリアリティーを出すために、日常生活を描いています。
例えば、和人がたどたどしく焼き鳥に串を差すシーン、茉莉がたくさんの薬を飲むシーン、茉莉がディスプレイに向かって小説を書くシーン。
こういう何気ない日常シーンを描く事によってリアリティーを出しています。

この中で一番変わって行ったのは、和人


この物語の中で一番変わって行ったのは和人です。
和人が変わって行く事によって、茉莉が和人を慕う気持ちも高まっていくのです。
なので、この和人の役は難しいのですが、坂口 健太郎 さんが、見事に時系列で演じ分けてます。
最後は独立して店をオープンし、頼りがいのある男性になっています。
坂口健太郎さんは、大河ドラマに出演歴もありますが、さすがの演技力です。
2枚目だけでなく2.5枚目の役も演じられる役者さんです。

脇を固める俳優陣も豪華

この映画では、脇を固める俳優陣も豪華です。
焼き鳥屋の玄さん役にフランキー・リリーさん、姉の桔梗役に黒木華さん、富田タケル(茉莉と和人の共通の友人) 役に山田裕貴さんを配役しています。
茉莉のお父さん役は、孤独のグルメで有名な松重豊さんが演じています。
茉莉のお母さんを演じているのは、原日出子さんです。

バッドエンドなんだけど、何かが残る


最後に茉莉は亡くなってしまいます。
最終的にはバッドエンディングなんです。
でも心にはしんみりした物が残ります。
なぜなのか考えてみました。
それは、和人の中に茉莉の記憶が残っているからです。

もし好きな人がいるなら、映像とかに残していくのは大事なんじゃないかと思いました。
地球はある意味、恋する惑星です。
恋できる人は、恋した方がいいんじゃないんでしょうか。
私も余命恋愛のテーマは、描きたいと思っている物の一つです。
「余命10年」は、参考にしたい映画ですね。


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