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流離と意馬心猿(0)「カネコアヤノは無職にだって優しい」

無計画で能天気な人間の旅に出た記録を残そうって試み。

ほんまは旅先の喫茶店でその日に起きたことをリアルタイムで記していく予定やってんけど、
すでに旅から帰って3日が経過しようとしている。

今日これを書けてるんも、「明日note書くわ、さすがに」と友達に電話で宣言したからであって。
自分で決めるより他人に決めてもらうことで、義務感から自分を動かすしかない、まあでも書き始めたからいっか

リアルの友人で読んでくれてる人も、note上で初めましての人も、ここまで読めばだいぶ分かって頂けるかと思うんですが、
自分はほんまに快楽に弱い人間です。

ただ、一丁前に理想とプライドが高く、熱されやすい精神力の持ち主でもあります。

今日から書いていくのは、そんな心身ちぐはぐ人間による、思いつきで敢行したさすらい旅の記録

時系列順で書くか、考えた内容でまとめるか結構迷ってんねんけど、せっかくなら読んでくれてる貴方も一緒に旅した気分に少しでもなれるように、前者の型で書いていこうと思います。
記憶力との闘いになってくるんで、自分も気張ります

第0話ということで、今回は実家で旅を決心した成り行きみたいなもんだけ書いときます。
貴方が修学旅行のしおりとか旅先のガイドマップ読み込むタイプの人やったら、ツッコミどころしかないと思う。多分。

この連載(?)読了に必要なんは寛容な心、それだけです


あるところに、失業手当しか転職決定までの収入減がないと、勘違いも甚だしい愚か者がいた。
フリーターとして食いつなぐでもなく、一人暮らしを続けて生活を追い込むでもない。当たり前のように実家に住み直し、退職直後に発症したヘルニアを言い訳に、必要な手続きも後回しで、会いたい人に会い、時間とお金を後先考えず消費しては、文字通りの「怠惰」を学びゆくすねかじりがいた。

旅を決めたのは、布団の中でだった。

1月、カネコアヤノ「タオルケットは穏やかな」武道館ライブ両日に赴いてから、頭の中に毎日 彼女の力強い声とかき鳴らされたギターの音が響き渡っていた。この余韻は、2/16横浜を皮切りにスタートするzeppツアーを追っかけようと思い至るには十分だった。
何の予定もない無職にとって、2/16横浜、2/28羽田、3/4大阪城ホールのライブ日程と参戦仲間を確保するのはあまりに容易いことだった。

自覚を持った無職は、行動だけは早い。

しかし横浜日程が近づくにつれ、
カネコアヤノを追っかけるには日常を正しく生きられてない自覚が罪悪感となって気管を絞っていった。

後ろめたさから、羽田はやめにした。

ライブ開演までの待ち時間、名古屋のチケットも取っていた参戦仲間に、名古屋日帰り?と聞くと、意外な答えが返ってきた。
「取ったけどやっぱ行かない、行くならタダで譲るけど?」
「名古屋は行かんて(笑)」
そう一蹴してワンドリンクのハイボールを飲み干した。

絞られた気管はもはや横浜にいる自分も責め始める勢いで呼吸を浅くさせる。楽しめるか不安だったのが正直なところだ。

MC、アンコールなしの約100分後、気管は、今度は後ろめたさではなく興奮によって絞られたままになっていた。
右耳は大音量に壊され、隣人と話すために大声でかつ耳を近づけなければいけない不便さが、非日常的でどこか心地よくさえあった。ライブ前とは打って変わって横浜から千葉への帰り道、「名古屋 チケット タダ」と「無職 ライブ行きすぎ 無職」がジキルとハイドのごとく心の陣地を攻め合っていた。

いよいよ軍配は、「贅沢の年末調整」という友人からの頼もしすぎる一言で前者にあがった。

カネコアヤノの詞だけでなく存在そのものに行動規範を示してもらっている。

カネコアヤノは、無職にも優しい(当社比)

こうして、カネコアヤノライブをエンジンに、未踏の地・名古屋への旅が決まったのだった。

《つづく》



流離(さすらい)
あてもなくさまようこと。流浪(るろう)。

使用例:さすらいラビー
※違う
意馬心猿(イバシンエン)
煩悩や情欲・妄念のために、心が混乱して落ち着かないたとえ。

対義語:明鏡止水

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