宝島社『このマンガがすごい!2021』ランクインおめでとう企画|担当者に聞きました
宝島社『このマンガがすごい!2021』に、なんとイースト・プレスのコミックが3冊もランクインいたしました!みなさま、おめでとうございます!みなさま、ありがとうございます!
そこでイースト・プレス公式noteでは、著者さん並みに作品愛あふれる担当者に、ランクインした作品に対する想いや、今の気持ちを聞いてみました。では、どうぞー!
『薔薇はシュラバで生まれる─70年代少女漫画シスタント奮闘記─』
『薔薇はシュラバで生まれるー70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』誕生物語。
この度、笹生那実さんの『薔薇はシュラバで生まれるー70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』が、宝島社様の『このマンガがすごい!2021』にて「オンナ編」第3位にランクインいたしました!
薔薇はシュラバで生まれるー70年代少女漫画アシスタント奮闘記―
/笹生那実 :著
実は私は、この作品の2代目担当でございまして、元々初代の担当者がコミティアにて笹生さんの作品を拝読し、その面白さに「やりませんか!」と口説き落としたのが、この作品が生まれたきっかけであります。
編集部内の企画会議で初代担当さんが獲得した、笹生さんの同人誌を読ませていただいた時、「なんて絵が上手なんだ!」と思い、そして単行本になることを同僚としてとても楽しみにしておりました。
笹生さんからネーム(マンガの設計図のようなもの)がFAXで来るたびに、「いいなー!見せて見せて!」と食いついておりましたが、そんなささやかな努力(?)もあって、初代の担当さんから引き継ぎをさせていただくこととなった次第です。
私が引き継いだ時は、ほぼほぼネームが出来上がっている状態でした。
読ませていただくと、美内すずえ先生、山岸凉子先生、三原順先生、くらもちふさこ先生、樹村みのり先生(他にもたくさん!)と、私自身が少女時代から今に渡ってずっと大好きな綺羅星のようなマンガ家さんたちの、貴重で面白いエピソードが満載で、仕事そっちのけで楽しんでしまいました。
特に、美内先生といえば、誰もが知っている名作『ガラスの仮面』の作者であられますが(先生!どうかわたくしが死ぬ前に続きを…)、他にも長編&短編合わせて、名作が数々ございます。私は全部持っておりまして、本当に「なんでこんなこと考えつくんだ!」というぐらい、どの作品もオリジナリティあふれる名作なのでございます。どれが一番好きか?と聞かれたら、1年ぐらい迷いに迷うぐらいです。
そして、『薔薇はシュラバで生まれる』の中に、笹生さんが美内先生の初アシスタントをするエピソードがあるのですが、その時の作品が『人形の墓』と『みどりの炎』。これもとんでもない発想力から生み出された名作で、私は大大大好きでして、もうこれはセリフのテキスト打ち(弊社ではマンガのセリフをだいたい担当がテキストで打ち込んでいます)をしながら、「うおー!」と会社で変な声が出たことを覚えております。
この時、笹生さんはある失敗をしてしまいます。(何しろ憧れの方の初アシスタントですから)でも、私はこの作品を何度も何度も食い入るように読んできたのですが、どこを失敗されたのか、笹生さんがおっしゃるまで全然気が付かず、家に帰ってもう1回見ても「これが失敗なのかなあ?」と首を傾げる、という具合でして。
そんな折、そのエピソードの原稿を受け取りに伺った際、笹生さんが、失敗した場所の掲載ページのコピーをくださったんですね。
当時の(今もか!)雑誌はB5ですから、私が持ってる文庫版より大きいので、その時初めてようやく「なるほど!」と思った次第です。
※こちらがそのコピー。
どこを失敗されたのかは、単行本でお楽しみください!
そしてそして、『薔薇はシュラバで生まれる』内でのその失敗の再現もお見事です。
そうそう! 再現と言えば、各先生方のお顔を、当時の先生方のタッチにされるのも笹生さんのアイディアです。(というかそれを思い立ってもあんなに上手にできないと思うんですが^ ^)、それも非常にお見事でございますので、まだ未読の方はぜひその再現度も楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後に。今ほど資料もトーンの種類もなかったあの時代に、0から素晴らしい物語を生み出し、我々を楽しませ続けてくれる先生方には、一読者として敬意しかございません。
そして、そんな闘いの現場で、当時のマンガ家さんたちが、楽しみながらも信念とプライドを持ち、描き続けていたことを今作品で余すところなく描いてくださった笹生那実さんに、心から感謝いたします。そして、第3位おめでとうございます!! (編集 C)
『ダンピアのおいしい冒険(1)』
ダンピアのおいしい冒険(1)/トマトスープ:著
『ダンピアのおいしい冒険』が「WEBマンガ総選挙」に続き、「このマンガがすごい!2021」にランクインしましたこと、作者のトマトスープ先生はもちろん、担当編集としましてもうれしく思います。ご支援をいただいている読者の方々には感謝しかありません。本当にありがとうございます。
史実を元にした本作ですが、マンガ化にあたり新たな解釈を加えている部分も少なからずあります。行きつ戻りつして進む物語の時間軸、徐々に解き明かされていく謎、そこに絡む様々な伏線、多彩で個性あふれるキャラクターたち……。読み返せば読み返すほど、そしてディテールに注目すればするほど、新たな発見が得られることでしょう。もちろん、ほぼ毎回登場する未知の食べ物にもご注目いただければと思います。
「WEBメディア・マトグロッソ」に月イチで連載中です。
マトグロッソでの連載は折り返し地点あたりですが、ダンピアをはじめとする私掠船バチェラーズ・ディライト号の面々がどんな冒険を繰り広げ、どんな人生を歩んでいくのか、これからもぜひご期待ください。
『ベルリンうわの空』
このたび、『ベルリンうわの空』が宝島社『このマンガがすごい!2021』の「オトコ編」第10位にランクインいたしました。
香山さん、そして連載元ebookjapanの担当・井上さん、おめでとうございます。
そして、買って、読んで、投票してくださった読者のみなさま、本当にありがとうございます。
ベルリンうわの空/香山哲:著
お礼を述べておいてあれなのですが、じつは私は『ベルリンうわの空』の制作には関わっておらず、第2部『ベルリンうわの空 ウンターグルンド』から単行本の担当を引き継いだ者です。
ベルリンうわの空 ウンターグルンド/香山哲:著
「引き継ぎ風情が何を語るか、笑止」という方もいらっしゃるかもしれませんので、一応弁明をさせてください。
私は数年前から香山哲さんのファンでして、イースト・プレスの採用面接では当時ebookjapanで連載中だった『ベルリンうわの空』をイースト・プレスで書籍化する企画書を提出したりしていました。そして、初の編集会議でその企画書を出し、先輩の「あ、それ私やってます」という声にイースト・プレスの洗礼を受けたのです。その気概が認められ、引き継ぎ担当となった次第でございます。
そんなわけでして、『ベルリンうわの空』の制作秘話などはまったく語れませんので、以降は感想めいた作品紹介となります。期待されていた方、申し訳ございません。
さて、未読の方のために簡単に『ベルリンうわの空』を説明させていただきますと、ベルリン在住の作者が、人ならざる描かれ方をした周囲の人々(人です)とゆるやかに接しながらひたすら生活をやっていく、移住生活マンガです。
独特な絵柄、生活の機微を感じさせるストーリー、個性的なキャラクター、ドイツならではの文化や街の様子、謎解き的な要素などなど、味わい深い魅力が満載です。
その中で個人的に印象的だったのは、こちらのシーン。
物乞いをされている方に、香山さんが「今日は体調がいいから」という理由でいくらかお渡ししていますね。
日本ではあまりなじみのない方が多いのかもしれませんが、海外って物乞いをされている方、結構いますよね。私もいくつかの国で何度も見かけたことがあります。
そんなとき、私は「一人にあげだしたらキリがない」と、気まずい気持ちで断ることが大半でした。「寄付や援助を行うのであれば、最大限行うべきである」みたいな謎の思い込みがあり、自分にその覚悟はないと思っていたのです。しかし、このシーンを見て、人を手助けするのは「今日は体調がいいから」とか、そういうカジュアルな動機でいいんだ、と気づくことができました。今思えば、当たり前なんですけれどね。
それぞれの生活の中で、ちょっとした物質的/精神的な余剰を、気軽に誰かにおすそ分けする。そして、その循環が少なからず社会に余裕のようなものを生んでいく。そうした「ゆるい助け合い」の描写が、『ベルリンうわの空』にはたくさん出てきます。第2部『ウンターグルンド』では、とくに。
つい先日、職場近くの路上で一人の女性からお菓子を買いました。彼女はフィリピンからの留学生で、コロナ禍で仕事がなくなったため、手作りのお菓子を売ることで支援を求めていたのでした。
現在のコロナ禍では、日本人/外国人を問わず、多くの方が彼女と同じように困窮しているかと思います。
そんな中で、個々人の生活の範疇での「ゆるい助け合い」を描いた本作が注目を集めているのは、とても意義深いように思います。
おそらく想定の字数を大幅に超えてしまっているので、とりあえず『ベルリンうわの空』、ぜひお読みください! ということですね!
そして、ebookjapanでは第3部『ランゲシュランゲ』も連載中です!
始まったばかりですので、追いつくならいまですよ。
それではみなさま、どうかよい生活を! (編集Y)
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