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「魔法使いの約束」を観劇したおじさんの感想文 

🔻はじめに


さて、経緯などはひとまず置いておいて「魔法使いの約束 エチュード」という舞台作品を観る機会に恵まれた。

スマホゲームの「魔法使いの約束」を原作とした舞台。通称は「まほステ」。
いわゆる「2.5次元舞台」というものである。

先に元になったゲーム作品について軽く触れると基本的に女性向けに作られたゲーム。
21人の様々なタイプのイケメン魔法使いが登場する。
主人公(プレイヤー)は魔法使いや人が住む世界へ現実世界から転生してきた賢者、という立場。

転生先の世界では定期的に「厄災」にみまわれる設定。
賢者と21人の魔法使いと共にその「厄災」を退ける、というものがストーリーの軸となっている。

人を超越した力を持つ魔法使いたちは人は別物として扱われ、時に敬われることもあるが、恐れられる存在として描かれる。

そんな世界で孤独感や人に対して嫌悪感を味わう魔法使いの人との共存、人々の住む世界を身を挺して「厄災」と立ち向かう事への葛藤、多様なキャラ設定を付与された魔法使い同士の複雑な因縁から生まれる心の揺れ動きなどが描かれる。

イケメンであることは元より世界観を反映した中世ヨーロッパを彷彿させる異世界の世界観や衣装、魔法使いたちのやりとりや振る舞いに共感し心を動かされた概ね女性のファンに支えられている作品、といった理解で概ね合っていると思う。

という事で、舞台を観にくる客層としては、本ゲームがかなり好きである主に女性のファンとなる。

前置きが長くなったが男性、特に40半ばを過ぎつつあるオッさんが観劇するらというのは相当なレアケースであると理解してもらえれば良いかと思う。
当然と言えば当然なのだけれど、やはり劇場では男性は数えるほどしか見つけられなかった。

観劇する機会に恵まれたのは知人に女性ファンがおり同行させてもらった、というのが大きな理由ではあるのだけど、では何故わざわざ同行してまで観てみたかったのか?という点も織り交ぜながら、オッさんなりの観劇感想を徒然に。
なお元ゲームは大雑把にしか触れていない(第一章に触れた程度)のでここのキャラや役者さん対する大きな思い入れなどは特になく、個別のシーンの良し悪しには特に触れない極浅な感想なのでご容赦願いたい。

🔻透過スクリーンによる演出


舞台の概略としてはゲームで語られたストーリーを元にした、ミュージカル。
既に過去にも舞台化されており、今回観劇したのは3つ目のシリーズの第1作目となる。

これまでのシリーズについては配信サービスにて視聴済みなのであるが、画面越しに観た舞台演出が凄く、感心、感動してしまったのが、一度生観劇してみたい、と思わされた点で一番大きな部分である。

そして、今回の生観劇で臨場感をともなった結果、余計に「演出すげーやばい」と感じたのであった。
プロジェクションマッピング、照明、スクリーンを巧みに使った魔法、回想シーン、目まぐるしく変わるステージ背景による多様なシーン作りなどの演出が凄いのである。

物理的な舞台装置と組み合わさり、一つのステージ上で約3時間ほどの舞台の中で多くのロケーションとシチュエーションが描かれる。

例えばプロジェクションマッピングを投影する透過スクリーンの使い方の巧みさには驚く。

舞台の手前から数メートル後ろに、舞台袖の両端、天井から舞台床までを全面的に覆うこの大きなスクリーン。

このスクリーンで、できることなど、ド素人の自分などは、ロケーションの切り替えや舞台では中々表現が難しそうな、大規模な自然現象(爆発、炎など)を投影することで表現豊かなシーン演出ができるくらいまではなんとなく想像はできる。

もちろんそのような使い方もされているのだけれど、透過スクリーンである点がポイントで、スクリーン裏の照明操作も組み合わさり、空中を飛ぶ、魔法使いのシーンを演出したり、スクリーン手前で繰り広げられている演技と同じ時間軸でありながら全くの別エリアの様子を透過スクリーンの裏で垣間見せる演技が行われる、など透過スクリーンを挟みこむだけでこんな表現までできるのか、と感動してしまった。

またゲーム映画やアニメがCGなどを多用し事前に作り込んだものを観て楽しむ作品、である一方で、舞台はその場限りの一発勝負。

その中で目まぐるしく変わるプロジェクションマッピングでの演出のタイミングと演者さんの動きがピタリと連動し違和感がない。
舞台裏でどんな事が行われているのかはよく知らないが、普通に凄い事をされていると感じていた。
一方で配信映像では見苦しい点はカットされたりズーム操作で誤魔化し可能だろうなぁ、とも思っていた。
しかし、生の観劇にて、眼前でそれらが繰り広げられてるのを観て、職人技を観た時に感じるのと同じ類の感動も押し寄せてくる。

自分の中では比較できる視聴体験が少ないのだけれど、例えば有名作品を題材にされた舞台には余程手の込んだ演出もされているのでは?と期待して観た配信映像で見かけた鬼◯の刃の舞台。
しかしこの手の演出については少々面白味にかけていた事もあり、この透過スクリーンを利用した様々な表現に出くわした時の驚きと感動は中々のものであった。

強いて言えばこの透過スクリーンが平面であるが故に正面から観る事が前提となった演出ではある。
今回の観劇はA席サイドシートで斜め横から見下ろし気味に観るとやはり役者と演出効果の位置ズレが気になるシーンもあった。

🔻役者さんの再現度と演技、歌唱、身体能力

元々、舞台を配信サービスで観たのが最初で後からゲームに少し触れてみた程度ではあるのだけれど、ゲーム内のキャラクターのイメージを再現する役者陣がまたすごい。

女性向けゲームを題材にした2.5次元舞台の役者さんに対して、顔立ちの良いモデルのような若いイケメンが出てきてなんとなくやってる、くらいの偏見が正直あった。

けしてそうではないことを思い知らされれたのは他作品が最初ではあったが、21人もいる魔法使いがことごとくさほど違和感なく受け入れられるというのはシンプルにすごいと感じる。

まずキャスティングでイメージにあった役者さんを探してくるのだろうが、小さな男の子のようなキャラクターから、スラっとした色気のほとばしる大人なキャラクターまで個性的なキャラクターがいる。背丈も無論バラバラ。そして、基本的に皆お顔立ちが良いわけで笑
そのような前提条件をクリアできる役者さんが21人存在すること自体が驚きであるし、しっかりキャスティングしてくるのもまたすごい。

選ばれた役者さんが作品やキャラを理解し役作りをされ、メイクや衣装を施されてることで、どうしても頭をよぎるゲーム内で見かけたキャラクター達と比較した時の違和感みたいなものはほとんど感じられない。

どこまで解像度を上げてその辺りの再現度を掘り下げるか、は人によっては意見も異なるだろうがザックリ元ゲームに触れた程度のオッさん的には驚くほどの再現度に感じられた。(繰り返しになるけれど元ゲームは一章のストーリーをざっと読んだみた程度のオッさんの感想です笑)

これは静止画では中々感じられないとは思う。
役者さんが演じ立ち振る舞いが、そのキャラクターが醸し出す雰囲気を纏う、といった感覚。

たまにある実写映画化でのガッカリキャスティングみたいなものは一切感じなかった。

また、ミュージカルであるため歌唱されるシーンも多い。世界観的にもミュージカルがしっくりくる。
まぁ、当たり前のように上手い。
観劇についてもど素人なので、上手い下手にも色々あり手厳しい意見もある世界なのかもしれないが、そこは脇にどけておく。
個人的な好みというか印象的だったのは、それぞれソロパートがあったせいも多分にあるかもしれないが、ブラッドリーとファウストの役者さんの歌唱は際立って印象に残った。

キャラクターによっては身体能力の高さが要求される演技も必要な本作。

例えばすばしこい猫のような身のこなしをするムルなどはその代表のようなキャラであり、その身のこなしを見てるだけでも楽しいキャラ。
前作までとは役者さんが代わり、どんな塩梅かと生意気ながら少々気になっていたけれど、しなやかに飛んだり跳ねたり、役者さんの背丈よりも大きな大道具から飛び降りたりと軽やかな動きは前作までのムル役の役者さんにも引けをとらない身のこなしであった。

他には身体操作と言って良いのかわからないが、シャイロックのおじさんですら危うく惚けてしまいそうになる艶めかしい動きをともなう演技は毎度感心してしまう。

🔻その他取り留めもなく

音楽が心地よい。例えばテーマソングとなっている「始まりの合図」は配信から聞き続けておりすっかり耳に残ってしまっているが、魔法使いの約束の不可思議な世界観に一気連れていかれる感覚に。

語彙力に乏しいが、大道具の動きに合わせて役者さん動くところ。例えば、階段付きの大道具が緩やかに動いているその階段を登る役者さんみたいなシーン。
ダイナミックで見応えがあった。

シャイロックの酒場?の雰囲気がとても良いなと。
例えば勝手気ままでまとまりのない、しかし各々色々抱え込んでいる北の魔法使い達があの場ではリラックスできている、そんな風に感じられる空気感が見ているこちらも心地が良かった。

🔻劇場での観劇

当たり前ではあるけれど、映像配信サービスとは圧倒的に臨場感が違った。
役者さんが走ったり飛び跳ねたりするだけで、床を蹴る音がしっかり聞こえてくるだけでも配信サービスでの視聴とは一味違うのだ。

また、A席サイドシート当然ではあったけれど、そこはボックス席の前列。ボックス席自体初めての体験でそれはそれでラッキーであった。見やすく、斜めから見る事で配信してサービスでは見られない舞台裏が少し見えたりするのが良い意味で新鮮であった。

🔻最後に

一口に舞台と言っても千差万別あるだろうけれど、おじさんでも充分見応えがあり楽しめる舞台。
劇場での観劇は色んな意味で敷居が高いが、また機会に恵まれれば、Part2も観劇できればと思う。

#まほステ #魔法使いの約束 #舞台

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