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植物との対話 研究クラス@裏磐梯合宿2024を終えて

7月22日~24日に2泊3日で合宿をしました。
ずっとオンラインで学んできた人たちが、リアルで集まる場になりました。長い期間、オンラインで会っているので、実際に会うこと自体が楽しみでした。

オンラインではそれぞれの身近な植物を観察していただいていましたが、今回は一つの植物にグループで取り組みたいと思い、「タイマツバナ」(レッドベルガモット、ビーバーム)を選びました。

今年はちょっと開花が早かったものの、ワークショップに合わせたかのようにピークを迎えてくれました。

「星の王子様」にある言葉

私がいつも植物観察の基本として利用させていただいている丹羽敏雄先生の『百合と薔薇~ゲーテシュタイナー的自然観察への誘い』には、「星の王子様」からの、こんな言葉があります。

心で見なくちゃ、ものごとはよくみえないんだよ。
君が、君のバラの花を大切に思っているのはね、
そのバラのために、時間を無駄にしたからだよ。

サン・テグジュペリ『星の王子様』

私たちが行う植物観察は、単に目に見えるところを観察するだけではなく、その形や振る舞いを生じさせる、背後に働いている力までを考察するのが目的です。

そのためには、それを見る目を培っていく必要があります。通常私たちが使っている思考+背後にあるものを見るための目と思考方法を実践することが大事です。

そして何より、ひとつの植物を丁寧に見ていき、場合によっては何年もかかる場合もあります。

そのようにして向き合っていくと、「植物が秘密を開示してくれる」という表現をシュタイナーは使います。決して、こちらの勝手な想像などではなく、植物自体が語りだし、それを正確に受け取れるようになるまで、敬意をもって観察することと、自分自身の感覚を磨いていくことが要求されます。

単に植物を観察するだけのことなので、ある人から見れば、それが何に役に立つのか?お金になるのか?時間の無駄ではないか?と思われることもあるかもしれません。

星の王子様の上記の言葉の中では「時間を無駄にしたからだよ」と言っていますが、真意は、無駄な時間なんかではない、というメッセージなのだろうと思います。

自然界と芸術

今回の合宿は、基本的な植物観察のこと、シュタイナーの考え方、アントロポゾフィー的自然観を学び、実際に植物観察をしてみるということをオンラインで、最低でも1年間受けた方が対象の研究クラスです。

それでも、本質までたどり着くには2泊3日では至ることができないのは当然なのですが、その入り口となるように場づくりをしました。

ひとつは、グループで取り組むことで、ひとりでは気づけないような視点を学べて、そしてグループだからこそ到達できることがあることを、体験したいということです。

もう一つは、フォルメンや水彩をとりいれることです。手を動かして絵を描くことで、形を生み出す動きや色彩を通し、観察とスケッチだけでは得られないものをみんなにも捉えて欲しいということでした。

やるべきことがたくさんある中で、どれだけ芸術の時間をとれるかが心配でしたが、なんとか良いバランスでできたかなと思います。

しかし、これはやはり、学びを重ねてきた人たちのグループだったからだとは思います。

(合宿の簡単なレポートはこちらをご覧ください)


植物と一体となる

植物の本質を知るには、単に客観的にそれを見るだけではなく、対象の意識と同一化することが必要になってきます。そのための様々な方法をとりいれていきました。

ゲーテシュタイナー的植物観察と言われているものは、ゲーテが自然界に向き合った発見や方法について、シュタイナーが評価し、そしてシュタイナーによって霊的視点が付加されたものです。

ものごとの本質に至る道、というのは、霊的修行と同じものなので、この植物観察も人間としての成長のための、ひとつの道であると思います。

観察の方法や意識の使い方も、たとえば、パタンジャリのヨーガスートラなどで述べられている感情や思考の統御により得られるサマーディの状態と重なっていきます。

今回の参加者は、植物観察のこと以外に、シュタイナーやアリスベイリーの秘教本などの読書会にも参加していたり、そこにかかれている考えにもとづいて私が行っている占星学やタロットの講座などのいずれかにも参加している人たちでした。

地に足がついたスピリチュアリティに一定時間触れているので、ファシリテートする側としては、安定した場のエネルギーの中で進めることができました。そして、グループとしてじゃないと、学べないこと、触れることができない何かに接触できたように思っています。

オンラインの講座の中でも、それぞれが観察した植物について話す場には、何とも言えない愛と平和の空気が感じられる場になっていたのですが、それがまた、静かだけれどもパワフルに表れていました。

少し大げさではありますが、地球と人類の平和のために、こうしたワークを続けて行ければと思っています。そして、今回できた、このグループが少しづつ広がっていくように、自分が持っている様々なリソースを投じていきたいと改めて思った合宿でした。

この場に集ってくれた参加者の皆さん、および、場づくりにご協力くださった方々、そして、自然界の精霊やデーヴァたちに感謝の気持ちを捧げたいと思います。

もりとアートの学校

自分の活動の場に「もりとアートの学校」とつけたのは、自然界と人間の創造性を大事にした場にしていきたいと思ったからでした。

今回の合宿で、アートの要素を取り入れることができ、足りなかった部分をやっと埋めることができた思いです。思えば2011年東日本大震災と原発事故があってからの、長い試行錯誤の末のひとつの形かなと、一晩明けてから思いました。

忘れたころに、あぁ、そういえば、このようにしたかったんだというのが、立ち現れることがあります。かといって、何もしていなかったかというとそうではなく、目の前のことに集中しているうちに、それが楽しくて、そもそも何だったか忘れてしまう、という感じです(笑)

何はともあれ、名前にかなった形にカリキュラムを調えていこうと思います。とはいえ、今までやっていることの意味付けがはっきりしたという感じなので、並べ方が変わるぐらいだと思います。

なんだかわからないけど、自分が大事だと思うことを淡々とやり続けてきてよかったという感覚と、関わりつづけてくれている皆さんへの感謝の気持ちで満たされています。

タイマツバナの観察プロセス

最後に、タイマツバナの観察プロセスとしてスケッチなどをアップしておきます。

去年のスケッチは主に形の観察でした。
観察しようと思い立つと、その時の植物の姿を観察することになります。遡って、芽が出たころはどんな感じだったかな?とかはもうわからないので、まずは目の前にある形をしっかりと見ることになります。

2023年の観察

そして今年2024年に改めてタイマツバナを見た時に、花の下にある苞の部分が気になり、この状態に至るまで、どんなプロセスだったかを観察してみました。

形の観察の段階で、何か問いがわいてくると、前に遡ったり、ここからどうなるか?の経過観察が必要になってきたりします。

植物の言葉(つまり形や色)をよく見ることで、問いが生まれてきて、そこから植物との対話が始まるのです。
今回の合宿では、タイマツバナに見られる「赤」という色が一つの注目テーマでした。それもあって、水彩を入れたかったのです。

水彩でタイマツバナを描くには、いくつかのハードルがあり、そのため、形をとらえるためにフォルメン線描の時間を撮り、「赤」という色を、水彩の中で体験してもらうという準備のワークを入れました。

私的には、みんなタイマツバナらしさが出た絵になったかなと思ったのですが、みんな、もっと何かしたい!という感じで、その意欲が次につながるので、よかったかなと思いました。

私も、何度も描いて、今のところ、これが限界・・・

しかし、試行錯誤で描いている中で、様々な気づきがありました。大切なのは、最終的な出来上がりがよいかどうかではなく、描くプロセスで気づいたり考えたりすることが、重要なのです。

最後に、シュタイナーが芸術について語った言葉で締めたいと思います。

遥かなむかし
天の霊を訪れて
地球存在の霊がこう頼んだ。
「わたしは人間の霊と話すことはできます。
けれども世界の心が
人間の心に語りかけるようなことばが
どうしても欲しいのです」
すると善良な天の霊は
乞う地球の霊に応えて、贈った、
芸術を。

ルドルフ・シュタイナー 恵矢訳(『人間をはぐくむ芸術の力』より)   

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