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へっぽこお遍路日記31「いつも、元気で空海さんみたいになれるように八十八ヶ所がんばってください。いつまでもおうえんしています。」

12月23日
歩いた距離29.3km
現在地:愛媛県愛南町

さみーね。いやさみ(し)ー。なんちゃって。
天気予報をときどき見るんだけれど、僕は予報というよりかは気温をチェックする。何度まで下がるかなぁみたいなこと。昨晩寝るときには最低気温2度になってたからまあ大丈夫かと思っていたんだけれど、まだ真っ暗ななかを起き出したらライトで照らされたまわりがキラキラしている。こりゃ霜おりたわなと、サッと予報をチェックするとマイナス2度。

マイナス2度にも慣れてくるもんだな。
寒くて寝れないでしょーみたいに言われることも多いけれど、全然そんなことはなくて、自分が旅で経験する気温を想定して寝袋もそのなかに着る服もシミュレーションしているのでそこは旅の経験から外さない。

けど普段と違うのはテントがないところ。テントがあるとあったかいというわけではまったくないんだけれど、風が当たらないし多少はあったかい空気を保っていてくれる。だからテントのなかで着替えとある程度パッキングをしてしまえば、あとは外に出てテントを片付けるだけで行動をはじめられるんだけれど、野宿だとそうはいかない。

寝袋を出てしまったら、あとは無防備な自分だけだ。寝袋のなかに着ているダウンの上下も行動するには暑すぎるので、基本脱いで着替えて歩き始めるからそれもいったん脱がないといけない。寝袋を出てからは、あとはもう体温は奪われていくのみ。歩き出すとカラダがあったまってくれるので、あとはどれだけ片付け早くできるかという話だ。

自転車のときはそこまででもなかったけれど、歩きの旅は荷物の詰めかたもテキトーにはいかない。リュックのなかで重さがかたよっていたり、うまく詰まっていないと背負ったときの負担も変わってくる。

テキパキと決まったものを決まった場所に。

この毎日のルーティンがなんだか旅のときに自分が元気なひとつのピースだと思ってる。旅ってすごく自由で、どこにもなににも縛られる必要がなくて、だから元気みたいなことを僕も思っていたこともあるのだけれど、どうも僕の場合は違う。この生活のリズムのようなものが、やっぱり自分の心のなにかに作用していると思えるようになったし、きっとそうなのだと思う。


さて、この日の旅のことを。
三原から宿毛へは一気に山をくだっていく。その終点から少し歩いたところにある39番延光寺さん。キーンと冷えていて、横にある林から光がななめに差し込みはじめたなかお参りをする。日が差しはじめたベンチのところで今日のルートを確認して歩きはじめた。

宿毛の街を一気に歩いて抜ける。今日はこの街に住むお友だちが連携プレーで僕をお迎えに来てくださることになっているので、思い切って歩くことができる。山を越えたそこはもう愛媛県だ。

山道までとそこから頂上まで3時間くらい誰にも会うことがなく、ただひたすらと落ち葉が敷き詰められた登山道を歩いて登る。地元の小学校の子どもたちがお遍路のために描いてくれた絵がたくさん木にかけられていて、それを見ながら登るだけで少し辛さがやわらぐ。

小学生らしく、先生が出したのであろう例文をもらって同じような文言が並ぶのだけれど、ひとつだけハッとしたやつがあった。


「いつも、元気で空海さんみたいになれるように八十八ヶ所がんばってください。いつまでもおうえんしています。」


空海さんみたいになれるだろうか。こんなへっぽこでも。

自分で歩いてみて思うのは、これだけお店も道路も、そしてネットもなんでも充実した現代に遍路を歩くだけでもこれだけ苦痛を感じているのに、これを歩いてきた先人たちはどれだけの苦痛とともに歩んでいたんだろうと思う。

地元のかたと話していても、途中で命を落としたお遍路の話はよく出てくる。遍路道にあるお地蔵さんにはそんな遍路のためのものもあると。

自分はそこからはかけはなれた遍路を歩いているのかもしれない。僕は空海さんを目指しているわけでもなんでもないんだけれど、けれど先人たちが、そして遍路を守り続けてきた人たちが心に抱くその世界を少しだけ垣間見ることができたらという願いをいつも抱いて歩いてる。

それは旅が終わったときに見えるものではなく、きっと日々の道のなかに、そして出会いのなかにあるんだと思う。それを自分で見出すことができるだけの心の準備ができているか。それはもう自分のなかにしかない。


頂上から宿毛とその先の海を見渡しながら休む。そのあとは一気に愛媛側にむかって歩いておりた。国道にたどりついたところでちょうど日が落ちた。今日はここで終えてお迎えを待とう。

お仕事を終えたまきさんが迎えに来てくださって、お風呂に連れて行ってくださった。洗濯も入っているうちにさせてもらって、それからお友だちのお家に。

夕食をともにしながらずっとお互いのことを話す。それに社会や教育やそんなことも。あ、珈琲のお話もたくさんしたな。

自分とは同じタイプではないその人の。けれど違っていていいというそのスタンスが自分にとってもほんとにありがたい。だからこそ自分の胸のうちを出すことができるから。すっかり10時まで話をしてしまった。ありがとうございます。ほんとに毎日が生かされる日々です。

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