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へっぽこお遍路日記23「人のお家にお邪魔させてもらっている身なのに、会えてよかったと思っていただけるように、と思うのは勝手なのだろうか。」

12月15日
まわったお寺:35番札所青龍寺
歩いた距離:27、5km(新記録ではなかろうか!)

遍路の朝は早い、いや寒い。
昨日はトンネル手前にあるトイレのついた駐車場の東屋さんでずっと眠れずにいた。あの宗教団体のおばさまとの会話を自分のなかで消化しきれなかった、そんなわけでは全然なく、湧き水のところにある木でできた水車がキーコーキーコーと100m先まで聞こえるような音で鳴り続けていたのだ。

僕のノイズキャンセリングのイヤホンをも飛び越えて脳に響き渡るその音がまるで呪いのように感じてきて、ついに夜中に僕は立ち上がった。どうして音が鳴るのだ!どうしてだー!!!

芯のところがどうも木が歪んでいるかしてキーコーとなっているようで、僕は水車を手でグルン!と回転させて回転数を上げてみた、シュン!と音をたてたあと静かになって、やった!勝った!と思って引き上げようとしたら、回転がまた遅くなった水車はキーコーキーコーときっと彼が何年も鳴らし続けたであろう地声に戻っている。うぉーーーーーーー!

こうなりゃ最終手段だ。東屋さんに戻っていいものがないかと探す。

あった。

竹ぼうきだ。

東屋さんをきれいにしてきたこの竹ぼうきさんに、朝まで仕事をしてもらうしかない。ごめんね竹さん。ありがとう。

僕は竹さんを手に水車に戻った。ふたつあるうちの大きいほうは無音なのだ。小さいほうの水車がキーコーなのだ。

僕は思い切ってえいや!とキーコーさんの心臓部。芯から出ているあの放射線状に伸びる木と木の間のところに竹さんを突き刺した。

止まった。音が止まった。キーコーの動きも止まっている。


うぉーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!


外は2度なので僕はその喜びに浸る間もなく、ソッコー寝袋に戻って寝た。


そして朝。夜は2度ぐらいまで下がっていたと思うけれども、寝ている分にはちょっとさびーなーぐらいで寝れないことはない。シュラフカバーをまだ使っていないからこれならマイナス5度ぐらいまでは夜をちゃんと過ごせると思う。こういうところは我ながら旅をしてきただけのことはある。いや、ちょっとブログでかっこつけてしまいました。普通に僕の装備やとマイナス5度くらいまでなら寝られると思います。気合いはいりません。ただ起き出しがやっぱり寒い。ダウンの上下を脱いで行動用の服に外の空気にさらされながら着替えないといけないから。

コンビニで昨日の宗教勧誘ブログについてあったまりながら書いていると、ピッカーンと太陽が出てくれた。さっびー!風も強い!けれど青空が広がっていることはほんとにありがたい。

36番札所青龍寺に到着した。もういつかゴールすることができるんだろうかと白目になりそうだったお遍路も36まで来れた。もうちょっとで半分だけれど高知はとにかく寺の感覚が広くて修行の道場と呼ばれている。この次の岩本寺はなんと60km先。まる3日ぐらいかかるつもりで歩かないと。

青龍寺の納経所のおばさまとゆっくりとお話をした。栃木の真言宗のお寺の住職が青龍寺という苗字でこの寺がルーツとしてあるようだと話してもらっていたから。遍路のこと、社会のこと、それから教育のこと。穏やかでスッと背筋の伸びたおばさまで話しているだけで心に充電されているのを感じるようなよい時間だった。ありがとうございました。

さあここからは内海(うちうみ)に沿ったぐねぐね海沿いルート。ただひたすら歩くことになる。このグネグネを越えて須崎までたどり着かないと遍路が休めるような東屋さんはなさそうだ。そしてお店もない。こりゃ気合い入れて歩くしかないかぁと地図とにらめっこしながら歩いていたら、須崎のお友だちからメッセージがはいった。

「マルナカ須崎店があるので、そこで休憩されていきませんか?」

今日は行けたとしてもどこかで野宿になりそうです。

「がんばって来れそうだったら来てください。野宿は寒すぎます。家がすぐ近くなので泊まっていってください。」


なんと!なんとーーーーー!!!

こんなにありがたいことはない。なんとしてでも歩き通さねば!残りは12kmほど。なんとか日暮れまでには辿り着けるかもしれない。

そこからはもうだいぶがんばった。

音楽&Podcastのドーピング(音楽を聴くこと)をしながらとにかく歩く。足の裏が痛くて痛くて。もう足があがらないー、けどあと4kmぐらいー。

最後はZONEに入ったのか、なんか足が前に出続けてくれた。

おかげさまで素晴らしい夕焼けを見ながらマルナカまでたどり着くことができた。5時。よくやった。

歩いてお迎えに来てくださったアサコさんと一緒にお家へ。お家にはお仕事が終わってLINEを見て、ついさっき客人が来ることを知ったお母さまが待っていらっしゃった。どうもすみません。お世話になります。

あったかいお風呂をいただいて。

あったかいお鍋を一緒に食べさせていただいて。

そうして話す。珈琲を点てる。

自分にできることは話すこと。珈琲を点てること。それぐらい。

けれども自分が来てくれてよかったなと思っていただければいいなと思いながら、思いを込めて話をする。珈琲を点てる。

あったかいお布団に包まれて。

今日もまた支えられて一日を終えることができました。

ありがとうございました。

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