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たとえ歩こうとも、車であろうとも。そこにはそれぞれの思いを込めた世界がある。

8日目。〜17番札所井戸寺

5時半にアラームをかけて寝た。

シュトッ!!!

という音でビクッと目覚めた。寝袋から頭を出して周りをみる。だいぶ冷え込んでいたようで、寝袋にすっぽり入っていたようだ。昨日はついていなかった本堂のあかりがついている、窓からのぞくと法衣を着られたご住職が座っておられた。

そうか朝のお勤めの時間か。
しずなかまだ夜があけない冷たい空気のなか、ご住職のお経が響いていく。僕はそれを聴きながらそーっと音を立てないように野宿で広げたテント、シートをたたんでパッキングをはじめる。なんだか今回の旅で自分が遍路をしていることをすごく感じた瞬間だったなぁ。すごくありがたい気持ちになった。

ちょうど日の出が空を染めはじめているなかを歩きはじめた。すごくいい。僕は旅をしないときは朝はゆっくりなことが多いので、これは僕が旅をしているときのご褒美のようなもの。だったら普段も早く起きたらいいのだけれど、旅をしていない僕はとてもなまけものだ。けれどいまも甘ったれ遍路か。

足は痛むけれど、ゆっくり歩けばいけないことはない。そうして朝にひとつ目の寺を参り終えた。岩が削ったそのままが参道になっているおもしろいお寺。まだ子どもの子猫がエサが欲しいのかすっとすり寄ってきたけれど、何もないと知るとそのまままた寺から走り出ていった。

2つ目のお寺を参っているときに、後輩のみうがやってきた。お接待をしたいとメッセージが届いていた。自分のペースは崩さずにまずはお参りを終えて声をかけた。どうして来た?と聞いたら

「きのうみなみちゃんが歩いてたのを見たので、あ来てもいいんだなと思ったんです。」

とこたえるみう。みんなほんとにそれぞれ。見てくれていてもみんなスタンスがあるものだな。

せっかくだから珈琲をたてようかと寺を出たときにすれ違ったおばさまたち、背中のほうになってから

「あれ!コーヒー!?」

と声が届いた。すかさずよかったら飲んでいただけますか?ときくと、
いただこうかしら!と即答してもらえた。はじめてリュックにつけた紙を見ていただいて珈琲を点てることができる。

「ちょうどいまね、珈琲飲みたいわねぇって話していたところなの!」とお話くださったおばさまたちは、もうこの4人でずっと仲良し。10年ぐらいまえから何度もこうして寺を回られていて、今回が遍路を参り終える最後なのだそうだ。

歩くひとも自転車のひとも、車のひとも。それぞれがそれぞれの思いを持って遍路をされている。そこに尊さの差みたいなものは少なくともその人でなければはかるべきではなくて、彼女たちは10年という年月をこのことに費やしてこられた。そのことは僕にとっておおきなものだ。

どうしてこんなことをしているのか。お仕事。生きていくには。

いろんな質問をいただきながら、みうにもその話を聞かせながら珈琲を点てさせていただいた。ありがとうございます。

なんとお接待は5000円。生活にするためにとっておいてはよくないので、これで美味しいものをいただくようにしよう。ありがとうございました。


次の寺を回り終えたところで、山さんからメッセージ。

まさくんどこにいる?徳島市内に着いたよ。

僕がまだフリーコーヒーで日本を自転車でめぐっていたころ。

僕のことなんて何も知らないのに、小樽にいる僕のことを友だちがゲストハウスをしている山さんに伝えたら「その子に無料でいいから泊まりにおいでって伝えて」と言ってくれた山さん。

まだ出会って2年だけれど僕の親友。だいじなお友だち。彼は今年逆うちといって、88番札所から逆にまわる歩き遍路をしていて、彼と出会うのがほんとにたのしみだったのだ。

ちょうど駅のちかくの公園のところで再会することができて、珈琲を点てさせていただいた。1時間ぐらいだったかな。遍路のことをもうすぐ歩き終える彼からたくさん教わって、それからお互いの遍路について感じていること、これからのことを話しながら、これ以上は引き留められないとさよならをした。

今日と明日で僕が3日かけて歩いたところを歩くそうだ。すげーつよい。何より彼からは長く旅をしてきた人の持つどくとくの雰囲気があった。強い存在感を与える感じの空気。いい旅してきたんだなとそれを見てすぐに分かった。ありがとうやまさん。必ずまた会おうね。


それからは思い切って徳島市内まで歩く。今日も足は豆が潰れてなさけないほどカッコ悪い歩き方。肩も今日ももげてしまいそう。けれども駅前に行けば会いたい人がたくさんいる。そう思って歩き切った。

大好きな銀座一福さんは残念ながらおやすみ。

やなぎやのふみさんのところで豆対策の絆創膏とサプリをいただいた。珈琲を点てた。

びざん。さんには挨拶に戻ってきますと伝えていて、今回もコーヒーとトーストをいただいた。また終わったら今度は僕がコーヒーをいれにもどりますね。

ウッドアイビスにはお友だちが急遽集まってくださった。コーヒーを点てながら、しばらくのお話タイム。僕の小さなお友だちのあかりちゃんは僕たちのためにコーヒーを作ってくれた。

あやじさんのご好意で今日はお店で野宿させていただけることになった。夕食をいたいて、僕は足をひきずって銭湯へ、溜まっている日記を書けないまま眠りに落ちた8日目の夜。

(よし一気に3日分を書き終えました9日目の昼。これで心おきなく歩けます。どうかお付き合いよろしくお願いします。)

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