へっぽこ遍路日記12「強く芯を持ちながら、それでも相手を受け止めることができるということ。」
へっぽこ遍路日記12日目
遍路:薬王寺をまわる
歩き:〜徳島県牟岐町
昨晩から風がビュンビュン吹き込んでいた東屋さん。今朝はいつのまにか寝袋にくるまっていて起きた。まだ夜明け前。
道の駅のすぐ目の前にはファミマがある。茶人スタイルやといいながら、寒い寒いと着替えてパッキングして、飛び込んでカフェラテを飲みながら日記を書いた。なかなか野宿スタイルとこうしてある程度の時間をつかって日記をiPadで書くことの両立が難しい。まだ少しあったかいくらいならいいけれど、やっぱり風が吹き抜ける場所でiPadを開いて真っ暗ななかカタカタと文字を書くのがなぁ。けれどこれは公開しとるけど日記の代わりなのでしっかりやらねば。
(といいながらいま3日前のこの日の出来事を書いている)
ファミマを出るときに、おうちにもって帰るのか2人前のコーヒーにミルクを入れてまぜてはるおばさまから声をかけていただいた。
「寒いわねぇ。どちらから?」
「おはようございます。兵庫県です。」
「あらほんと。これから高知に向かうのね?」
「はい、これから歩いていきます」
「そしたらお接待をしないとね。これでお弁当でも買って食べてね」
そういっておばさまは1000円札を手渡してくださった。
丁寧にお礼を言って、いってきますとファミマを出る。すぐそこは昨日参れなかった薬王寺。ちょうど朝陽が差してきた。
本堂と大師堂でお参りを終えて、お参りセットをバッグにしまいながらさっきのおばさまにお札を渡すべきだったなぁと後悔した。僕ら遍路はお札を持っている。そこに日付け、住所、名前を書いてそれぞれのお寺の本堂と大師堂でお参りをするときに納めるのだけれど、「お世話になったかたにも渡すものだからね」と1番札所でお接待くださった井内さんにも教わったのだ。あのとき頭にチラッとかすめながらもバッグのなかに仕舞い込んでいたのでお渡ししなかった。
失礼な遍路だわ、とおばさんもしかしたら思ってはるかもしれないし、思っていられなかったとしても、自分が遍路としてお接待をいただいたときにはするべきことだ。これからは前にかけてるポーチにいつでもお渡しできるように持っておこう。
後悔をしないことはきっとこれからもないけれど、けれどひとつずつ。特に今回は僕がお遍路というこれまで歩いた人たちが積み上げてきた歴史にお邪魔させてもらってまわってる。しっかり自覚を持って。
薬王寺から国道をずっとずっと南下することになる。遍路道では電柱に「◯◯寺まで◯◯km」みたいな表示が出ているのだけれど、「24番札所最御崎寺まで77km」とか出ていて吹き出す。普通に歩いて3日だろうかなぁ、まあけど知らないで歩くのではなく知ってて歩くんだしな、大丈夫いつかは到着すると笑顔でいられたのは朝いちばんで、しかも日の出のいい光に包まれていたからだろう。そこからはもうほんとに修行だった。
とにかく道路。道路。道路。
歩道があったり、歩道がなかったりする。
ときには歩道が突然反対側にバトンタッチしたりする。
想像できるだろうか、この歩道が反対側にあって、そこを渡るときに数m遠まわりになるんだけれど、その数mさえも歩きたくなくて歩道のない白線の外側をそのまま歩いていく気持ち。
足の裏が痛くて痛くて足があがらなくなってくる。リュックのショルダーが食い込んできて、そのままリュックを脱ぎ落としたくなる。けれども国道の細い路肩のところではどうしようもなくて、そのままなんとかリュックの肩のところに手のひらを差し込んで重さを分散させたりしながら歩き続ける。
昨日すっかりカラダができたように感じたのに。わずか1日で逆もどり。
唯一嬉しかったのは、アップダウンを繰り返しながら国道をテクテクと歩いていたときにまえのほうからでっかい白人さんが走ってきて、誰かなぁと思ったらお友達のトラさんだったこと。
出発前にJOくんの家でトラさん元気にしとるかなぁと話していたトラさんが現れたのでとっても嬉しかった。数百m先に車を停めてこちらに来てくれたのだ。彼も予定があったようで「こうしたらね、車までのあいだ一緒に話しながら歩けるからね」と話していて、その彼の優しさが心に染みた。ありがとうトラさん。
そこからはしんどかった。テクテクというよりもボソボソという感じ。歩くのにボソボソという言葉は使わないけれども、それこそぬかるみのなかをボソボソ言わせながら歩くような速度でしか歩けないほど。今日の終着点である牟岐町の町並みが見えたころには、さらに足が重くなった。なんだろうなぁあの感覚はほんとに。連絡を入れておいたので、普段ぼくが教育支援で関わっている牟岐のみなさんに迎えられてはじめて元気が出たけれどもほんとにしんどかったなぁ。
みなさんに珈琲を飲んでいただきながら、近況報告などお話をして、それから牟岐町の教育委員会にインターンとして来ている大学生のさいとうくん、教育支援で関わり続けている大西さんといろいろとお話をして夕方までを過ごした。
夜はお友だちの先生、笹田さんのご家族と楽しい夕食。子どもたちがほんとにかわいらしくて、ぼくはすっかり彼らのファンだ。今回は僕が全然知らない鬼滅の刃のことを教えてもらった。オトナでもハマってしまう人間ドラマがたくさん詰まっているそうだ。
子どもたちとおやすみをしたあとは、笹田さんと教育トーク。たくさんたくさんたくさん話した。気づけば日付が変わっていたほど。疲れているけれど、けれど会っているときにしか交わせないものがあるから。
彼は強い芯とこだわりを持ってはるけれども、必ず自分と違う意見を最後まで聞く。そして「僕はこう思う」という姿勢をぜったいに崩さない。断定をしてしまわないのだ。その姿勢がきっと学校に立つ彼にもあるのだろうと思う。そのことは僕にとってほんとうに救いで、だからこそ子どもたちももちろんだけれど、彼と会ってそのときの彼の向き合っているものを知りたいと思う僕の気持ちになっている。
明日はお昼ごろには宍喰に到着したい。
明日はお友だちのちひろさんが経営するスーパー、ショッピング大黒でコーヒーを振る舞わさせていただく予定だ。
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