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へっぽこお遍路日記24「真っ暗な山中の小屋で人恋しくて先輩に電話をするへっぽこへんろ。けれどその弱さを僕は認めたい。」

5時に起きるも頭がぼーっとしてる。疲れか。はたまた昨日あれだけあさこさんにもお母さんにも髪の毛を乾かしたほうがいいと言われたのにほったらかした罰なのか。ブログを書いてから出発しようと思っていたのに、途中までしかできなかった。お母さんは昨日の夜からお弁当を作ってくださっていて、そして朝もあったかいお味噌汁とトーストを焼いてくださった。

出発のまえには、お父さんように買っていたものだけれどよかったら使って、と5本指靴下に、ホッカイロ。こちらは荷物になってしまうから丁寧にお断りをして、気持ちをいただいた。たったひと晩だけれど、こうして気持ちもいろんなものも割いてくださることにはほんとに感謝しかない。ありがとうございました。またいつかお会いできる日を楽しみに。

7時をまえにしてやっと空が染まってくる。1年でいちばん日が短い季節。今日はどこまで歩けろうだろうかと思いながら、国道を西に歩きはじめる。

早朝に大阪のケンイチさんから連絡をいただいていた。四国にキャンプに来るのに、わざわざ僕に会いに車を走らせてくださったのだ。道の駅で待ってくださっているそこまで1時間ほど。健一さんはニット帽にフリースにしっかり防寒対策をされていて。僕は上着セーター。下はリネンパンツ。昔の人を尊敬せずにはいられない。

ケンイチさんフランスパンでも買ってきはったのやろうかと思って聞いてみると、

「これ!リュックにつけたらどうかなおもて!口コミ見て買ったからどうかわからへんけど」

なんと肩が痛い痛いと書く僕のために、リュックの背負うところにつけるパッドを購入してくださっていた。なんと嬉しいプレゼント。早速つけてみると、いつもより重さが少し分散されている気がして調子がよさそう。

寒空のもと、やっと日が差したと思ったら、北の空には雪雲がしっかり覆っていて。なんと雪もちらついているなか珈琲を点てさせていただいた。キャンプも山もこの時期に行くケンイチさんだったからよかったけれど、普通のひとやったら罰ゲームになってしまうところだった。お湯を沸かす火もこの気温ではガスがうまく出てくれなくて心許ない。少しぬるくなってしまったけれど、美味しいと飲んでいただけてよかった。ケンイチさんありがとうございました。


これでまた自分の歩き旅に戻った。さあ今日はどこまで歩けるだろうか。と国道からそれた旧道の山道を登ってく。肩のパッドもよい位置を探しながら歩こうと一度リュックをおろした。

「あれ?看板は?」

僕の【珈琲点てます】の看板がバックパックについてない。

ついてない。

ついているのは、朝「これにいれたら雨も大丈夫だわね」とお母さんにいただいたクリアファイルだけ。それが片方外れてて、そうしてちょうどよい角度にかたむいていて、そうして中にあったはずの僕の相棒の看板がない・・・・。

うぉーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

じょふぁいえいdふぃじゃおい!!

ずっと旅をしてきた相棒なのに!どこだ!さっきまではあったような気がするのに!そんで強風!


あfじゃおえじょあいあああーーーーーーーーーーー!!!

とりあえずリュックをそこに置いたまま僕だけ歩いて戻ることにした。

お願い

お願い!

お願い!!

おねがーーーーーい!!!

あんなに道路に四角い白いものを探しながら歩いたことは37年間ない。

一度落ちていたのは、白い使い捨てマスクだった。

もうあきらめようかと思ったそのときに、道の駅のちかくの歩道に四角いでっかい白いのが落ちてる!

駆け寄る!


うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーfじゃおいせjふぇあおいおえあおいじぇふぃあえおいじょあfかいいおおぽ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


おった!

おったぞーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


こうして相棒を見つけた僕はスキップを踏みながらリュックのところまで歩き(このときだけ足の痛みを忘れている)
今度は絶対外れないようにクリアファイルはやめて、クリップのところにも一緒に紙を何重にも折ったものを一緒にはさんで、はさむ力を強くして留めた。よし、もうこれで大丈夫なはずだ。


なんだか嬉しいやら途方に暮れかけたやら、疲れてしまった。

国道を歩けば早いなぁトンネルあるけれど、と甘い声にひかれながらも僕はなるべくもともとある遍路道を歩く。トンネルを越えたその先まで山をひとつ越えなければいけない。

なかなかの急勾配にガレガレの登山道。僕のサンダルとソックスにはちとキツい。いったい空海さんはどうやって歩いていたのか。ワラジだよな。靴下はあったんだろうか。毛皮でも足にまきつけていたのか。へっぽこ現代へんろの僕には想像すらすることができない。


山を越えたものの、それからは冷たい風がゴーゴー吹いていく。しかもうずをまくようにあっちからこっちから吹いてくるもんだから、休憩しようにも風を避けられるところがない。結局田んぼのわきの少し風がマシなところでお弁当を開いたけれど、なかに砂が入らないようにフタをしめながら食べるときだけ取り出すような様だった。

午後はもう頭の上まで雪雲がやってきた。雪がファーッと散るなかを歩く。

歩く。

歩く。

まちに入る。

歩く。

まだ先は長い。

歩く。

ファミマ見つける。

飛び込む。


結局ファミマで珈琲とアンパンを食べながら、朝に書けなかったブログを書き終わり、足の先がしっかりあったまってからまた歩きはじめた。

現代へっぽこへんろの覚悟なんてそんなものだ。情けないっちゃありゃしない。


だんだんと山道に入っていく。この先には峠があるが越えられるだろうか。休めるところはあるのだろうか。

完全に山道になって、川の水量も減ってきたところに、左手に小屋があらわれた。

へんろのための休憩所だ。夜も過ごせるように、天井のところにござも置いてくださっていた。ここを使ったひとが書き残すノートもあって、最後の日付は10月だった。

もう真っ暗になるまで2時間も歩けないので、今日はここで休ませていただくことにして、また明日早くから歩き出そう。山道だけれどライトがあればなんとかなるはず。


なんとか電波が繋がったので、徳島の先輩に電話をかけてさんざん弱音を聞いてもらった。へっぽこへんろは自分で辛さを抱え込むことすらできない。けれどこの弱さを持ちながら、認めてあげながら、僕は明日も歩く。大丈夫。きっと大丈夫。

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