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【コーヒーが苦手になっちゃった】

先日の出張西川自由珈琲店でお話したある人の言葉です。
その言葉の生まれた理由を聞いて、めちゃんこ残念な気持ちになったんです。

僕が選んだコーヒー。それはもちろん素晴らしいものだけれど、それを扱う自分の
心構えについてもいつでも余白を持ってなきゃいけないなと。

聞けば、その人はねコーヒーに興味を持ったんだって。
それでね、おうちの近くのコーヒー屋さんがやっている教室に行ったの。

そこで講師の珈琲屋さんが話したこと。

「しっかりお湯の温度は計りましょう。」
「抽出量はきっちり守ってください。」
「このカタチのドリッパーではこうお湯を注いでください。」
「穴の数が◯個のものではこうしてください。」

そして彼が手網で焙煎してみていることを話したらしい。
「とてもそんなものでは美味しく焙煎なんてできない」
というような言葉をかけられたそうだ。

それ以来、コーヒーの焙煎をしなくなってしまったんだって。
コーヒーをいれることにもちょっと緊張するようになったんだって。


がーん。だよねほんとに。

興味を持って、きっとそのときにはフワァーっと広がっていくようなそんな感覚を抱きはったんやと思うの。
それがきっとギューッとなってもーたんやなぁーって。


僕のところにも「コーヒーを美味しくいれるやりかたを教えてください」と質問してくださるかたがいます。
そういうときに、僕がだいたい言うことはこうです。

「豆の挽き方。そしてお湯の温度。このふたつは大きく味に影響します。」
僕がいつもいれている温度と細かさを確かめてドリップするのを見てもらいます。


そのつぎに、2も3もなく。
「あとは自分が気持ちよくコーヒーをいれてください」
と結びます。以上です。


コーヒーって本来とっても自由なものです。
世界で争うコンペティションもあるけれど、その人の味もあっていい。
だって、料理だって世界の一流シェフもいれば、お母ちゃんの手料理もある。

ちっちゃい子にね、なにの料理が好き?と質問するとね、
「おかあさんのハンバーグ!」
とか帰ってくること多いもんね。

きっと世の中には他のハンバーグもたくさんあって、高級レストランのそれもある。けれど母ちゃんのハンバーグってぜったい美味しいやん。


だから僕はコーヒーは自由でいいと思うのです。
誰かのコーヒーを見ていて、「ああ美しいな」と思えば帰ってマネしてみたらいい。
自分でやっていても、いろいろ試してみたらいい。
美味しかったら発見だし、美味しくなかっても発見。

そうしていろんなものを見て、マネして、自分のスタイルを変化させたり、
させなかったり、試してみたり、それから他の人にちょっと緊張しながらいれて飲んでもらったり。

たぶんねそういうことを繰り返していたらね。いつかはね。

「まさやんのコーヒーってこうだよね」

と言われる日が来るのです。大丈夫。僕もある日来たから。

僕もまだ途上。けれど美しいと思ったものはマネしていますよ。


自分の捉えているもの。見えているもの。感じているもの。
それを表現するひとつのモノがコーヒーだと思います。

道具の原理を理解したり、メソッドやレシピを学んだり、それもひとつのコーヒー。
毎日やってみて、その違いを感じて、何かを見ては影響受けて、それもひとつのコーヒー。

大切なのは自分にとってしっくりと来るコーヒーとの向き合い方を見つけること。
そんなふうな気がするのです。


最後に僕がいちばん感銘を受けたひとを紹介します。
僕の師匠の大坊珈琲店の大坊勝次さん。
「私も焙煎をするときには今でも揺らいでいます。少し深くなったり、浅くなったり。」
「今日みなさんに見ていただくのはひとつの点です。それは僕が目指すものではあるけれども、みなさんの正解とは違うかもしれません。みなさんには僕の見つめるその点を基準としてご自分のコーヒーを見つけていただければと思います。」

彼の焙煎教室には僕のような素人もいれば、すでに珈琲屋をされておられる方もおられました。
仕上がった焙煎もそれぞれでした。僕のなんて一番浅くてあーやっちゃったかなーぐらいに思いました。
そんな僕の豆もていねいに、ていねいに、ネルドリップで落としてくださいました。

それをみんなで飲んだときの大坊さんのコメント。
「西川さんの焙煎。浅いなぁという印象でした。しかし酸が嫌なものではないですね。とてもやわらかくて。これも美味しいコーヒーですね。」

それを聞いたときにね。存在を認められた。それぐらい嬉しかったですよ。

その大坊さんの言葉がはじめていただいたプロからの言葉だったから。

僕は自分のコーヒーを疑うことはありません。
人によって好みはあるけれど、自分が美味しいと思うコーヒーを焼きたいし、点てたいと思うようになったし、今でもそうです。


どうかコーヒーに興味を持って、はじめられるかたが。
大きな心で世界を見つめる珈琲屋さんと出会えますように。
そう願うばかりです。

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