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焙煎機をつくるところからはじめます。コーヒーの世界の物語をその産地で完結させるために。

【コーヒー焙煎機をつくって産地で焙煎したい】
とこないだフリーコーヒーとともに富士珈機の社長に手紙を送りました。
僕は手紙を書いて送ることってこれまでの人生ではなかったんだけど、こんなときはコロナでコーヒーを手紙とともに送ることにしてよかったなぁといまごろになって思います。

僕がつかっている大坊モデルの手まわし焙煎機を作っている会社で、福島社長とは大坊勝次さんの焙煎ワークショップにいらっしゃっていたのが福島さん。参加者を見る目が、大きな包み込むようで優しい笑顔の人やなぁと思っていたら社長さんだった。

お礼のメールとともに自分がやってきたフリーコーヒーのことを書いて送ったら、
「日本人には茶のこころが根底にあると思います」
という言葉をいただいた。ほんとに僕の勝手なんだけれど、そのとき僕がコーヒーに込めている思いをこの人は感じてくださっていると思って、それ以来勝手に親しみを持ってコーヒーを続けてきたんです。

コロナは僕にとっては予想外。
3月の子どもたちとの自転車旅が終われば、どこに行こうか、どこでコーヒーをいれようかと思っていた僕にとって、旅という選択肢そのものが取れなくなるというのは予想外だったから少しだけ戸惑ったなぁと思います。
けれども自分が旅をしたいのはどうしてかと思ったときに、それは誰かにコーヒーを飲んでもらうことで少しでも笑顔になってもらったり、心が安らいでほしいということだったので、だったら僕が旅をしなくてもコーヒーを届ければいいと思って届けるフリーコーヒーをはじめたんです。

日々コーヒーを焙煎しては、粉にして袋につめてドリップパックにする。
手紙を書いて一緒に封筒に入れて送る。こんなに毎日同じことを繰り返すことってこれまであったんかいな(それと同じくこれだけ同じ場所にとどまっていることなんてなかった)と思いながら、そうしていても頭にはいろんなイメージが浮かんできて。

次はあんなことしたいな、とかコロナが明けたらこんなところに行きたいなとか。そうしているうちのひとつが、コーヒーの産地で焙煎をしたいというものでした。

もちろん焙煎をしているから、現地でしても、日本に届いた生豆を焙煎してもそんなに大きく変わることはないと思うんだけれど。大事なのはそのコーヒーになったものに違いがあるかというところではくて、その一杯のコーヒーになるときにどんな気持ちでいるかということだと思ったんです。

コーヒーの産地で、かなうことなら自分でコーヒーの実を摘ませてもらって、それから生豆となる種をとりだす。そして自分が持っていった焙煎機をつかってローストし、一杯のコーヒーを落とす。現地でコーヒーの世界を完結させたいと思ったんです。
そこには社会的意義や理由はなくて、自分がそのコーヒーのひとつの世界観を閉じて持ち帰りたい。そしてその体験はきっと僕のこれからのコーヒーの世界観に色を加えることになると思っています。


手紙のお返事は電話。
「西川さんがやっておられることはおもしろいし、うちとしてもできることがあれば応援したい」と自分にはもったいないほどの言葉をいただき、会社にうかがうことになりました。

フリーコーヒーの自転車とコーヒーセットを積んだ車を走らせ雨の大阪へ。
大阪の中心部から少し南にあるオフィスが並ぶ裏手の角に、あのフジロイヤルのちょっとくすんだ朱色の建物がありました。

まずはコーヒーを。フリーコーヒーのことはメールでもお伝えしたけれど、自分が現地でなにをしてきたのかを少しでも感じていただきたくて、ショールームで自転車をカフェバージョンにして1杯のコーヒーを立てながらお話をさせていただきました。

「西川さん今日は時間ありますか?是非ともその西川さんのコーヒーへの思いを、うちの職人さんたちにも聴かせてあげたいんです。」と福島さん。

もちろんです。僕ヒマなんで。願ってもみないです。
という僕の返事を聞いてすぐに工場に電話をかけ、3時から職人さんたちに少し時間をつくってもらうのでよろしく。と伝える福島さん。その直感に近くみえる動きかたは僕にとってスッと落ちてくるもので、彼をあらわしているようだなと思いながらともに車で乗り込んで工場へ。

高速道路を降りたところにある高架下に2年前に作られたという自社工場。
町工場というよりかは、大きな会社の物流倉庫のような大きなサイコロ型の工場に入ると、左手の吹き抜けスペースには大きなクレーンとともに製作途中の焙煎機。僕が知っているあの自家焙煎コーヒー店にあるものの数倍の大きさはコーヒー焙煎機というよりかは何かをつくりだす工場のよう。

福島さんの説明では、数十キロを一度に焙煎できるもので、もっともっと大きなものもあるそうだ。そりゃ大手のコーヒーメーカーがあれだけコーヒー豆をスーパーに出荷できるのも当然超大型の焙煎機があるからに違いないのだけれど、いざ機械を目にしたら当たり前だけれど、それがカタチとして目の前にあることで現実としてスッと落ちてきた。

他のフロアでは僕もよく知っているあの業務用焙煎機の部品がズラっと並んでいて、ひとつひとつ組み上げられていくところで、ほんとにモノってひとが作り出してるんだなぁなんていまこうして書いていても当たり前と思っていることを、当たり前にその場所で実感したんです。
これがパッケージになって、トラックで運ばれてお店に並ぶんだけれど、もしこの工場の下がお店みたいになっていて、そこにできたばっかりの焙煎機が職人さんに抱きかかえられて届いて、それをお客さんが見ながら買うみたいなことおもろいなーと思う。

パン屋の幸せな感じって、あのパッケージになっていないこと、できたてが香りとともに運びこまれるところにあると思っていて、だからこそみんなまたそれを楽しみにそこに通うんだろうなぁと思うから。目の前にその現実と世界観が完結されるからこそ、それを受け取る人の中で世界が結ばれるんだろうなぁと。

随分遠まわりだけれども、コーヒーにもそういうことがあったらいいなと思うのだ。飲む人にとっての世界観が完結できるカタチで提供できる環境があればきっとおもしろい。

まあそういうふうにて、工場のみなさんに集まっていただいて、その中心で自転車とともにお話をさせていただいたのですが、終わったあとに社長さんが「それではみなさんそれぞれに」とおっしゃったあとに、みなさん残って自転車を見てくださったり、それから分解して持ち運べる焙煎機について具対的なアイデアを考えはじめてくださったり、あぁ今思い出しても嬉しいことがあったのです。

いつ今度外国に行けるようになるかは分からないけれど。
旅はできなくても僕の思いはもう次に向かって旅をはじめています。

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