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歌舞伎オーディオガイドについての提案

松竹株式会社御中 ・ 株式会社イヤホンガイド御中

0. プロローグ

歌舞伎の大好きだった私の記憶には無い祖父。

そして歌舞伎座に連れて行ってくれた叔母。

中村吉右衛門丈の大好きだった古典の先生。

そんな周りの方の影響があったおかげ。

高校生の時に初めて連れて行ってもらった歌舞伎座。

その頃から数十年が経ちますが今でも大好きな歌舞伎座です。

コロナ禍になり5ヶ月の休演から戻ってきた8月歌舞伎公演は、ビフォアコロナのそれとは全く異なるウィズコロナの新しい歌舞伎座のあり方でした。それでも、5ヶ月ぶりに足を踏み入れた歌舞伎座の檜の香りは私をそこに戻してくれました。

400年以上続くこの伝統の歌舞伎の魅力を、いつか歌舞伎のイヤホンガイド解説者になり、より多くの人に発信したいと思っていましたが、そんな、イヤホンガイドがクラウドファンティングを始めたというショック。関連会社かつ大株主であるはずの松竹さん、御社が苦しいのも分かりますが、歌舞伎の未来に必要であるイヤホンガイドをどうにか救ってください・・・。

このような状況を受けて、勝手ながら、タイトルに書いた通りいくつかの提案を考えてみました。これ本当に勝手ながらな2社向けのご提案です。読んでくれるかも知りませんが。


1. 歌舞伎の未来に向けて

歌舞伎を直接劇場で見たことがある方は実際どのくらいいるのでしょうか? もちろん、住んでいる地域や環境等によりかなり左右されるとは思いますが、私の周りではこんな感じです。

「行ってみたいんだけど行ったことないんだよね・・・」

「高いんでしょ?」

「何着ていけばいいの?」

「チケットの買い方は?」

内閣府実施の 平成28年世論調査 の結果から抜粋したのデータは以下です。

文化芸術直接経験率

伝統芸能を直接見たことがあるのは3.9%です・・・。 悲しすぎます・・・。

では、皆さん興味が無いのかと思えばそうでもなく。

文化継承の意味

文化芸術振興には大いに意味があると回答しています!! しかも下の表を見てもらうと「日常生活における文化芸術の体験・活動」は9割近い方が「大切だ」と回答しているのです!! ホッ・・・。それであれば、先ほどの3.9%という直接経験の比率を上げたいですね。

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2. ワールドワイドかつボーダーレスな発信

2020年、本来であればオリンピック・パラリンピックが東京で開催されるはずでした。沢山の外国人の方が来日し、日本文化に触れるはずでした・・・本当に残念です。先ほどの内閣府データにも以下のデータがあります。

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「世界に誇れる日本文化」=「伝統芸能」だと答えている方が6割以上!

国際発信重要分野

世界無形文化遺産である日本食と同じように、伝統音楽・伝統芸能が日本の魅力を発信するのに必要だと皆さんが答えているのです!!! これを使わない手はないのです。そして、日本だけでなく、世界の人々にこの素晴らしい日本文化をもっともっと知ってもらい、ぜひ来日してもらい、歌舞伎座の舞台を見てワクワクしてもらいたいですね。幕見席が外国人で溢れていたコロナ前が懐かしいです・・・。

さらに日本に来られない今こそ考えるべきはストリーミング配信。エンタメ業界が広く発信し始めているオンライン。いつでもどこでもアクセスできる便利さがあると同時に、母国語が日本語である我々日本人にとって、やはり必要なのが、多言語での発信です!!

では、ターゲットは誰向けに???と考えた時に、どこの国の方々が日本に興味を持ってくれているのか=これまでどの国の方が多く日本に入ってきているのか、を見る必要があります。

①訪日外国人旅客(大陸別)

訪日外国人大陸別

圧倒的にアジア大陸からの訪日旅客数。ついでアメリカかと思えば、同じくらいヨーロッパの方も来ています。

②訪日外国人旅客(国別)

訪日外国車数国別

これを見ると、

 1位 中国

 2位 韓国

 3位 台湾

 4位 香港

 5位 米国

続いて、タイ、オーストラリア、フィリピン、ベトナムなのです。そう、アジアの各国が連なっております。これらを踏まえた中で、訪日外国人に対応すべく多言語対応については、世界の共通語であると言われる「英語」に続いて、やはり中国語、韓国語、近年ではタイ語、ベトナム語対応も求められているように思います。中国語には大陸がメインで使用する「簡体字」と台湾がメインで使用する「繁体字」とで表記にかなりの差がありますので、両方が必要だと思っています。


3. エンターテイメント業界および観光業界のガイドサポートの現状

ここが問題だと私は思っています。

イヤホンガイドではオリジナル機器を毎回貸し出す。しかも、返却を促すためにデポジットを取る。

コロナでは人との接触機会を減らす必要があるので、これは時代に明らかに逆行しており、ほとんどの人が持っている自身の機器=スマホで対応できるようにする必要があります。

世界はすでにハードではなくソフト=アプリで勝負しています。

AIを使った多言語対応も、範囲を定めればある程度できます。


4. 現ガイドについての苦言

①オーディオガイドとビジュアルガイドの違い

特に見直してもらいたいのがビジュアルでのガイド字幕ガイドです。

実際の舞台を見ながら、手元の画面を見なければならないというストレスがあると思います。

さらに、過去にはこの字幕ガイドにはチャンネルが3種類あったようですが、今は2種類。もっとも歌舞伎において必要とされるであろう「解説チャンネル」が廃止され、今は主にセリフだけを表示させる「台本チャンネル」と「英語チャンネル」のみというのが残念です。

オーディオガイドはビジュアルガイドの比べ、歌舞伎の進行を知り尽くした解説者の方が、タイミングよく邪魔になりすぎない程度に色々と豆知識を教えてくれるのが本当にツボです。これを私はいつも聴きながら「あー、メモしたい、忘れてしまう〜」というジレンマと戦いながら、舞台の上の演技を見続けています。案の定、一幕終わった時には、あの言葉なんだっけ? なんて説明していたっけ???となるんですよね。キーワードメモ的なものでも一緒にもらえたり、後からHPから確認したりできるととっても嬉しいんですが。著作権的な何かがあるんですかね?

②セリフの通訳だけでなく背景と豆知識が知りたい

イヤホンガイドHPにも載せてらっしゃるように以下コンセプトが大事だと思っています。

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セリフや唄すら難しくて理解できないのに、その背景や歴史、衣装に込められている意味や役者の動きの解説など、知りたいことは山のようにあるはずなのですが、字幕ガイドではこれをまったくサポートできていないように思います。

見慣れていないビギナー向け、もっと深く知りたいという好奇心溢れるミドル向けにもここの痒いところに手が届く解説が欲しいはずなんです!!

③キャッシュレス決済の今、なぜ回数券に戻すのか

くまどりんカードでの機器レンタルは、カード認識させる機械の老朽化とのことで今回廃止されるとのことですが、その行き先が、交通系電子マネーは理解できますが、それに加え「回数券」ってどこまで時代を遡る気ですかね??? 航空会社のマイレージのように、決済手段と異なっても、会員カード、番号を提示すればマイルやポイントが貯まるような仕組みづくりはできないものでしょうか???

これはコロナ禍の今、キャッシュレスへの波が来ている今だからこそやらないと、比較的観客の年齢層の高い歌舞伎座においては受け入れられないようにも思いますが。

5. イヤホンガイドの今後

 ①コンテンツを提供し、アプリは外部に出す

伝統を守り続けてきた役者さんや、それを支え続けている松竹をはじめとする関係者の方の知識や過去の歴史はもっとも重要な資産。そして、長い間、舞台を見続けており情熱を持って支えてきた知識の豊富な解説者の方々の頭の中のナレッジも歌舞伎を後世に語り継いでいくためにも重要な資産。これらをアプリ内コンテンツとして、今までと同様、解説などをメインに提供するのは最も重要かつ必要とされているものだと思います。

一方、そのコンテンツを入れるハード=機器は専門業者に頼りながら最新のものを上手く取り入れていくべきかと思います。

②感染予防を見据えた個人端末でのイヤホンガイドの提供

これは前述しましたが、人との接触機会を減らさなければならない今、お客様自身が持っているスマホなどの端末で代用するべきです。そうすれば端末維持費もかかりませんし。ユーザーが専用アプリを自身のスマホにダウンロードするのに抵抗感があるようであれば、インセンティブを何かしら付ければ良いのでは、と思います。次回割引ポイントやウェブ上の特典ダウンロードができる、贔屓の役者さんの何かがもらえる、など。

③アフターコロナのインバウンド向け需要

2章でも前述したように、アジアを中心とした訪日外国人旅客を見込むと、英語だけの対応だけでは間に合わない、さらに、アジア各国は使用する母国語がかなり多岐に渡っているため、各国の言語に対応できるようにするべきです。とは言っても、これも4章に書いた通り、字幕ガイドは文字で追いかけられる情報量に限界があると思いますので、各演目の補足や豆知識は、幕間に事前に、または事後に動画等でサポートし確認できるようにした方が良いと思います。オーディオガイドですべて対応しようとすると、すべての音声収録が必要になりますので、あまり現実的ではないので、より多く必要とされる言語から優先順位をつけ、比較的利用者の少ない言語においては字幕対応のみにするなど、ある程度、対応範囲も絞り込んでいく必要があるかもしれません。これらを早めに準備し、これから戻ってくるであろう、アフターコロナのインバウンド需要に早めに備えてもらいたいです。


6. エピローグ

演劇界に長い歴史をもたらしてきた松竹様、それを影で支えてきたイヤホンガイド様、プロ集団の皆さんからすると、ここに書いた内容はとっくに検討されているかと思いますが、ユーザー視点で感じている点を率直にお伝えさせていただくことで、何か少しでもヒントになるのがあれば、それが後世につないでいくきっかけに少しでもなれれば良いなと思った次第です。

なので取り止めもない事をつらつらと書いただけですが、2社のどなたかの目にとまり、偶然でもここの最後まで目を通してもらえれば歌舞伎ファンとしては非常に嬉しいです。

ありがとうございました。


※画像・出展は内閣府HP、イヤホンガイドHP、JNTO(日本政府観光局)等からお借りしたものです。


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