#06 宝石の「色の選択吸収」に思うこと
「色の三原色」や、「光の三原色」という言葉を、美術の授業のどこかでいつの時代か耳にしたことがあると思います。
簡単に説明すると、
○色の三原色・・・青緑(シアン)、赤紫(マゼンタ)、黄(イエロー)の3色。全て混ぜると黒く(暗く)なる。
○光の三原色・・・青(ブルー)、緑(グリーン)、赤(レッド)の3色。全て混ぜると白く(明るく)なる。
というものです。
全ての色は、上記の色の組み合わせの割合によって生み出すことができる、"色の起源”ということですね。
今回は「宝石における色」についてお話ししたいので、「光の三原色」の方になります。
私たちが普段目にする「光」というものには、「色」はついていませんよね。意識すること自体がないと思うのですが、この目に見えていない「白色光」というものは7つの色が混ざり合って構成されています。
そうです!雨上がりに空に浮かぶ、「虹」の色です。
この「虹」というものは、空気中の水の粒に光が当たったときに屈折して、その屈折の角度がそれぞれの色によって違うことから、「光の成分が分解されて」7色の虹になって見えているのです。
屈折の角度が大きなものから順に並べると
「紫色、藍色、青、緑、黄、橙、赤」
となります。
理科の実験で三角プリズムに光を通して、七色に光が分かれるのを小学生の時に見た記憶はありませんか?あれが、プリズムを通して光の成分が分解されて目に見える状態になったということです。
物質にこの「白色光」が当たった際、一部の光は吸収され、一部の光は「反射」したり「透過」したりします。その「反射」や「透過」が起こった際に、その反射したり透過した光の色成分の組み合わせや割合によって、私たちの目に届く「色」と認識されることになります。
透過した場合は私たちの目には「透明度のある色」と認識されて、反射した場合は「不透明な色」と感じるのですね。
私は初めてこの話を聞いたとき、例えば同じ「真っ赤な車」のボディが暗闇でみる場合と日中でみる場合のその色の違いに納得することができました。夜道でみる赤い車は、日中の「7色のバランスのいい白色光」の中よりも光の成分が少ないので、本来の赤色の本領を発揮できないのですね。
そう考えてみると、普段私たちが目にしている当たり前の「色」というものが、賢明に「光」を拾って本来のその姿の色に見えるよう、私たちに働きかけているのかしらと感じ、とても健気に、儚げに感じます。
まあ実際は人間の視覚との関係もあると思うので、厳密にはこんな単純な仕組みではないと思うのですが・・・。
宝石にも、この「色の選択吸収」が起こっています。
例えば、ルビーやサファイアと呼ばれる鉱物「コランダム」は、完全に純粋な結晶だと「無色(カラーレス)」の見た目をしています。
これは、光が当たったときに7色すべてが結晶内を透過している状態ということですね。でも、ひとたび「クロム(Cr)」が不純物として結晶内に存在すると、「赤色」以外が吸収されて、私たちの目には透過した「赤色(ルビー)」に見えます。これが「チタン(Ti)と鉄(Fe)」に置き換えられると、「青色」以外が吸収されて、私たちの目には透過した「青色(ブルーサファイア)」に見えます。
この「色の選択吸収」を考える際に、最もわかりやすい宝石は「アレキサンドライト」かもしれません。詳しい説明をしようとするとちょっと面倒くさい説明になってしまうので、簡単にいってしまうと、
○赤色の成分が多いろうそくや白熱灯下→赤紫色
○緑~青色の成分が多い太陽光下→青緑色
に見えます。
アレキサンドライトは、ちょっと特殊な吸収をもつ宝石なので、光源によって見せる色が変わってくるのですね。興味深い。
宝石における「色の選択吸収」は、まだまだ学ぶべきところが多く、私もまだ勉強不足なところが多いです。
例えば、同じ「クロム(Cr)」がその現象を引き起こしているけれど、どうしてルビーでは「赤色」をもたらし、エメラルドでは「緑色」をもたらすのか・・・。結晶構造などが関係していると思うのですが、いまいち正解にたどり着いていません。
引き続き、研鑽を積んでいこうと思います。
でも、面白いですよね(^^)
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