#30 「アンティーク・ジュエリー」に思うこと

以前、「中古のジュエリーに思うこと」という題名で同じような内容を書いたと思うのですが、またちょっと綴りたくなったので筆をとりました。

そもそも、「アンティーク・ジュエリー」とは何なのか?
その名をまとうには、何か定義や決まり事があるのか?
調べてみると、「製作時から100年以上経過したジュエリー」という線引きだけがあるようです。

作家さんが誰であるとか、由来がどこであるとか、そういったものは関係なく「100年」という時間の経過が定義になっているのですね。

「中古ジュエリー」は、ご存知の通りその製作年とは関係なく、"一度でも他人の手に渡ったことのあるもの”です。ついさっき買ったものでも、誰かが所有した瞬間にそれは「中古ジュエリー」になります。

本やDVDなどでは「新古品」という"人に渡ったことはないはないが、一度店頭に並んだことのある未使用品”というものがありますが、ジュエリーはそこまで細かな線引きはなく、それも「新品」に含まれることが多いです。

むしろ、「新品仕上げ」という技術があり、一度誰かが使ったジュエリーや宝石であっても、磨き直しや宝石のリカット(わずかにカットして傷を取り除いたり、形を整える)をしてまた「新品」として扱っているお店も少なくはありません。むしろ、ブランドさんや独自のメーカーさんでジュエリー製作を自分たちで行っているところ以外には、そういったものも紛れていると了承の上で購入した方がいいです。

そこでなのですが・・・。

みなさんは、「アンティーク・ジュエリー」って、抵抗ありますか?

「中古のジュエリー」には抵抗がある日本人が多い印象がありますが、「アンティーク・ジュエリー」って、むしろ皆さんちょっと「格上」のイメージがあるのではないでしょうか。

実際に、いわゆるアンティーク・ジュエリーは一般的な宝飾品よりも高値で取り引きされていることがほとんどです。

たとえば使用されている金属の純度、宝石のグレード、造りの緻密さなど現代のジュエリーに遙か劣っていたとしても、何倍にも膨れ上がった値段で取り引きされています。

その価値を引き上げているのは・・・やはり、私たち"人”が思い描く「浪漫(ロマン)」なんですよね。

冷静に考え直したときに、アンティーク・ジュエリーと中古ジュエリーの違いって、「そのジュエリーを身につけていた時代と人物を"ドラマチックに”思い描けるかどうか」のような気がします。

中古のジュエリーの場合は、電車の隣のこのご婦人が、喫茶店で笑っているあの女性が、今この瞬間、道ですれ違ったこの男性が身につけていたものかもしれない・・・と想像すると生々しくて、ちょっとやっぱり気持ち悪く感じる方もいらっしゃるのだと思います。

でも、アンティーク・ジュエリーは少なくとも「製作時から100年以上経過したもの」であるので、普通に生きていたら「出会うことの無いはずの時代の空気を纏ったジュエリー」という印象で、"人感”がちょっとだけ薄れ、その代わりにそこを埋める"時代の空気が漂う”気がします。

そしてその"100年”という時間は、とても特別な隔たりを感じさせ、もし前の持ち主の"ストーリー”が一緒に刻まれていたとしても、その人に対して「時空を越えて出会った運命のもの」という"浪漫(ロマン)”が生まれます。

その感情って、今そこを歩いている「隣の女性や男性」には芽生えない感情なんですよね。
不思議です。

しかし、アンティーク・ジュエリーの価値というものには実際にはきちんとした理由があります。

現代の中古のジュエリーにもいえることなのですが、使われなくなったジュエリーの多くは金属は溶かされ、宝石部分はリカットされてまた次の世代のジュエリーへと造り変えられてしまうのが通常の流れです。

しかし、「アンティーク・ジュエリー」として残っているものの多くは、

・現代でも十分に通用するデザイン
・現代でもそのまま使用できる耐久性がある造り
・現代ではもう真似できない高度な加工技術が施されている
・使用されている宝石が稀少
・デザインが当時の時代を反映したものである
・現代まで生き残った耐久性のある品質の宝石が使用されている

・・・などなど、ただの中古ジュエリーには無い現代まで生き残っているきちんとした理由があります。

ただ、中古ジュエリーを扱っていた(というか今も扱っている)私としては、声を大にして言いたい。

「中古ジュエリーは、良い宝石と出会える穴場ですよ!」

アーガイル鉱山のピンクダイヤやバターリャ鉱山のパライバトルマリン、採掘が終了したと言われるベニトアイトなどなど、もう新たには良質のものが手に入らない宝石たちは、中古市場で探し求めるのが最も効率的で良質なものとの遭遇率が高いのです。

これはもちろん、アンティーク同様「中古ジュエリーとしてその形を残しているのには明確な理由があるから」。

やはり中古ジュエリーとしてその形を変えずに再び流通されるジュエリーは、造りが良かったり、宝石の状態が良かったり、それなりのきちんとした理由があるのです。

日本国内で本格的に"貴金属を使用した”ジュエリーが"一般的に”流通し始めたのは、戦後だと言われています。(帯留めやかんざしなどは除く)
欧米などのように「先祖代々と受け継がれるジュエリー」に馴染みがない日本では、ガラパゴス的にまた今後もジュエリーの存在意義が確立していくのかもしれません。

それがどんな世界であるのか・・・。

その一員として、私もこれからが楽しみです(^^)

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