#155_金賢姫(キム・ヒョンヒ)全告白「いま、女として」④

本日も表題書籍の感想第四段となります
(上巻:p308〜377及び下巻:p1〜60。全体の約7分の4)。

■1. 北の人間を角の生えた怪物のように思っている

金賢姫が、事件の全容を記者会見で説明した後、マスコミが事実と違うでたらめな内容を、さもそれらしくでっちあげることが多々あったとのこと。

また韓国の若い捜査官が、北についてあまりにも誹謗したり
・「北朝鮮は別世界のようだ」
・「金日成の奴、いつ死ぬんだろう」

と言われた時は、金賢姫は幼い時からの教育の残骸が身についていたので、
・「北も人が住んでいるところなのに。。あんまりだわ」
・「金日成が悪いわけではないんです。その下にいる人が上手に補佐したり、よくしたがらなかったりしないからなんです」

と、北の人民と金日成の肩を持ったそう。

金賢姫曰く
・北で南朝鮮(=韓国)とアメリカを憎むべき敵だと思っている
のと同様、
・南朝鮮の人々も北の人間は角の生えた怪物のように思っているようだ、

と感じたそう。

また
・お互いに相手のことがわからないというのは、民族的な不幸としか言いようがない
・特に同じ言葉、同じ風習、同じ歴史の中で育まれてきた、同じ民族同士を戦わせるように仕向けたのは、一体なんだったのか

とやるせない気持ちになった、とのこと。

これを受けて、確かに我々民主主義国からは、北朝鮮の一般の人々を知ることができていない、と感じた。

これはもちろん、北朝鮮が一般旅行客を受け入れていないという理由もあるし、日本や米国などの報道が政治に偏っている、というのも原因として挙げられると感じる。

北朝鮮側の報道がそのようにしているから、というのもあるだろう。

その良し悪しは別として、事実として北朝鮮の一般の人々の暮らしを知らない、というのはあるだろう。

知らない、ということは推測を増長させ、些細なことを誇張してしまい、結果「角の生えた怪物」にしてしまうのではないか、と感じた。

もちろん北側の民衆にも同じことが当てはまると思う。


私も友人に韓国に住む韓国人がいるが、北朝鮮に対しては政府は悪いが、民族は同じだ、ということを話していた。

得られる情報は、我々とさほど変わらず、北朝鮮の広報係の年配の女性の話し方を真似したりしていた(笑)。

日本も一歩間違えば、分割されロシアと米国に占領されるところであった。

仮にそうなっていたならば、同じような運命を辿っていたかと考えると、身震いがする。

アメリカでもトランプ大統領時代は、ムスリムの入国禁止を実施して、それを支持するラストベルト(中西部)の米国民などが存在した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88#:~:text=%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%EF%BC%88%E8%8B%B1%E8%AA%9E%3A%20Rust%20Belt,%E3%82%92%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82&text=%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%81%AF%E3%80%81%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E7%B5%8C%E6%B8%88,%E3%82%92%E5%BD%A2%E6%88%90%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82

私も自身の物件は漁港の街にあるのだが、施工業者などの話では、この辺りの住民は閉鎖的でよそものは受け入れないし、嫌われたら村八分にされるよ、と脅された。

実際に寝泊まりしてペンキ塗りなどしていると、近所の方からは声をかけられ応援されるし、道ですれ違えば笑顔で挨拶してくれたりする。

もちろん全てを知ることは時間や情報の制約上不可能だが、少なくとも知らないことについては、知る努力をするのが大事だと考えるし、知らない=排除、という考えは自分自身持たないようにしたいと感じた。


■2. 通行人の服装を取り締まる「ちびっ子糾察隊」

金賢姫が北朝鮮の小学校の様子を説明していた。

北朝鮮では人民学校と呼ばれ、2年生になると、「少年団」と呼ばれる活動に自動加入させられるそう。

それには

・ちびっ子糾察隊

・ちびっ子収買事業

・選挙歌唱隊

・掃除、緑化事業

・集団体操(マスゲーム)

・人糞集め

というものがあるそう。

<ちびっ子糾察隊>

校内で子供たちの服装を取り締まるのが主な任務だが、通行人を取り締まる権限も与えられている、とのこと。

例えば

・金日成の肖像バッジをつけてない人
・夏にズボンを履いている女性
・作業服や赤衛隊服をだらしなく着る人
・汚らしい服を着ている人

が取り締られ、職場名と名前を書き記し、所属の職場へ通報するそう。

<ちびっ子収買事業>
米帝(アメリカ帝国主義)を打ち破る為、武器を外国から買わなければならない為、外貨がいる、という名目のもと、各人民学校の児童が、屑鉄、金、銀、古紙、空瓶、廃品を集めるもの、とのこと。

個人の割り当て量は10kgであり、目標に到達しないと、忠誠心が不足だと思想批判を受けることになるそう。


<選挙歌唱隊>
選挙に参加せよと宣伝する

<掃除、緑化事業>
割り当てられた地域の掃除・緑化

<集団体操(マスゲーム)>
4.15(金日成の誕生日)、9.9(共和国建国び)の集団体操(マスゲーム)に動員される

<人糞集め>
農村へ肥料の支援をするために、各世帯ごと、乾いた人糞何キロかを集めて、人民班や収集車へ提出する。

提出した人糞の質と量によって、赤い紙と青い紙をもらえ、赤い紙をもらえると、品物購買券として割当てられるそう。

この話を聞いて、国家レベルでこんなことをされて、さぞかし大変かと思いきや、人糞集めでは嫌な臭いよりも、購買券欲しさに「私の持ってきた人糞が一番多い!」と競い合ったりして、みんなそうやって生きているので、当たり前のことだと思った、と述べている。

また、一方で、どこかで聞いたことある話だな、と感じたのが、民主主義社会の一般企業の管理の仕方は、かなり近い点があるのではないか、と感じた。

例えば服装などはドレスコードが存在し、仕事に対して一定のノルマが課され達成しない場合は糾弾され、一昔前は運動会や忘年会に半強制的に参加させられていたり、業務外の清掃活動に駆り出されたりなど。

流石に人糞までは提供させられないが(笑)。

私企業が従業員を管理する仕組みは、このようなトップからコントロールされる仕組みで、購買券ではなく給料がもらえる違いはあれど、根本的な考え方は似てるのではないか、と感じた次第です。。


■3. 北朝鮮の映画に2本出演

金賢姫氏は、学生時代、北朝鮮の映画に2本出演したとのこと。

1本目は「社会主義の祖国を訪ねた栄秀(ヨンス)と栄玉(ヨンオク)」と題名で、
2本目は「娘の心情」という題名のものであったそう。

<1本目:社会主義の祖国を訪ねた栄秀(ヨンス)と栄玉(ヨンオク)>
主演女優(栄玉(ヨンオク))の子役として出演。

以下、あらすじ:

・主人公2人がソウルの大学に行き学生デモに参画、警察に追われる

・尊敬していた金正日のいる北朝鮮へ渡る

・南朝鮮の叔父が暴風雨に遭い北にたどり着き、感激の再会

・叔父が南朝鮮に帰る時「私たちはなぜ、離れ離れに生きなければならないのか」と泣き叫ぶ(ここで涙を誘う)

という内容とのこと。

撮影中、北朝鮮と中国の国境の川である鴨緑江(おうりょくこう)(下記)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B4%A8%E7%B7%91%E6%B1%9F

に行ったそうで、共演俳優が
・一時期中国と仲が悪く、鴨緑江に互いに土手を築いて、水が相手側に流れて洪水が起きるようにした。
・偉大なる金日成が、周恩来と秘密に接触し、和解をした

という話をしていたそう。

実際に金賢姫が幼かった頃、中国と仲が悪く、華僑を見ても「くそ野郎」と悪口を言っていた、とのこと。

また、この映画は金正日がよく出来た作品だとほめた為、撮影の途中で広い幅の映画(シネマスコープ)に作り直せ、との方針が出されたそう。

結果、幅の広い映画フィルムで再び撮り直し、それまでのフィルムは全てご破産になったそう。


<2本目:娘の心情>
こちらも主演女優の子供時代の役であったが、単調なストーリーであったとのことなので、内容は割愛する。

<3本目の映画のオファー>

実は3本目のオファーが撮影所から来ていたそうだが、2本目のオファー時に母親が父親がモスクワ出張時に一言も相談なく受けてしまった、ということで叱咤されたそうで、3本目は母親が断りを入れたため、その後映画とは完全に縁が切れたとのこと。

このように、金賢姫は初等教育時代も華々しい生活を送っており、皆から羨望の眼差しで見られていたそう。

幼少期のキューバでの豊かな生活と合わせて、幸せな生活を送っていたのが、工作員に選抜され、航空機爆破の任務を命じられたことで、人生が狂ってしまった、と述べていた。


■本日の学び

・1.北の人間を角の生えた怪物のように思っている
→相手を知らないということは、推測を増長させ、些細なことを誇張してしまい、結果「角の生えた怪物」を作り上げてしまうのかもしれない。

全てを知ることは時間や情報の制約上困難だが、相手を知ろうとする努力や、知らない=拒絶という姿勢は持たないようにした方が、不要な嫌悪感を抱かずにすると感じた。

・2.通行人の服装を取り締まる「ちびっ子糾察隊」
→組織のトップがコントロールをし、階下の人同士でお互いのチェックのし合いをさせ、目標を設定の上未達の場合は糾弾し、課外活動に人員を動員させる、という仕組みは、民主主義社会の一般企業のそれと、類似していると感じた。

購買券の代わりに、給料がもらえている、ということかと思われる。。

・3. 北朝鮮の映画に2本出演
→金賢姫氏は、北朝鮮では映画に出演するほど、豊かな人生を歩んでいた。

しかしながら工作員に選定され、爆破指令を受けたところから、人生が狂ってしまった。

言い換えると、工作員に選ばれなければ、自身は幸せだと感じながら一生を終えていたのかもしれない。

民主主義国から見たら、明らかに物資が足らなかったりし、貧相に感じるかと思うが、そこに住んでいる住民は(他国を知らないからかもしれないが)それなりに幸せに生きている(人もいる)のかもしれない(そうでない人もいるのかもしれない)。

ちなみに日本は世界幸福度ランキングで149カ国中56位(2021年度)(https://eleminist.com/article/1184)とのこと(北朝鮮はランク外)。

これが高いか低いかはわからないが、何が幸せなのか、というのを考えさせられた内容でした。。


以上となります。

続きは、また追ってご共有させていただきます。

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