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【インタビュー】GAME CENTER 『えんとつ』 |生活に溶け込む新しいフォークの風

金沢・東京の2拠点を中心に活動するバンド、GAME CENTERが7月にアコースティックEP『えんとつ』をリリースした。GAME CENTERはボーカル・作詞を担当する水野とギター・作曲を担当するミチマルからなる2ピースバンドで、ライブの時のみサポートメンバーが入れ替わりで参加している。
2019年にリリースした1stEP『I Have To Go Home』は結成してからすぐのリリースながらもUSエモ/インディーに影響を受けたピュアなサウンドや歌詞で話題を呼び、今年リリースした1stシングル『さよならサバーバン』では日本語フォークに影響を受けながらも彼らのルーツであるエモ・インディーがミックスされており、日本語フォークの新たな可能性を感じる1曲になっている。
そんな彼らが7月にリリースした2ndEP『えんとつ』はコロナ下で作られたアコースティックEPで、2人の居住地が離れているため全曲リモートで制作された。
今年FUJI ROCK FESTIVALのROOKIE A GO-GO(今年は配信でのライブ)にも出場が決まり、バンドとして次のフェーズに入っている彼らはどういう思いで音楽を作っているのだろうか、バンド結成から現在に至るまでの音楽性の変化や、2ndEP『えんとつ』に込めた思い、これからの展望などを聞いた。

最初は遊びの延長線上で始めた


- まずお2人の出会いについて聞きたいのですが、ミチマルくんはKICKASSRAY(ミチマルがGAME CENTERを組む以前に組んでいたバンド)で存在は知ってたんですが水野さんとはどういうきっかけで出会ったんですか?

ミチマル:元々地元のスタジオで顔見知りではあったんですけど、初めて絡んだのは水野さんが前やってたバンドのライブの企画に僕が行って、そこからって感じですかね。

- 水野さんは前どういうバンドをやってたんですか?

水野:ユースクルーというジャンルのハードコアバンドでボーカルをやってました。8年くらいやってたんですけど。

- そこからどういう流れでGAME CENTERを組んだんですか?

ミチマル:水野さんが前組んでたバンドがほぼそのメンバーのままGAME CENTERになろうっていう話があって、その話を聞いたときはもう俺がKICKASSRAY辞めるっていうことが決まってたからサポートギターならいいよってなって。

水野:遊びの延長線上で始めたんですよね最初は。

ミチマル:そうそう、水野さんとも仲良いしやろっかなーみたいな感じでギターで入って。それで(GAME CENTERの)初ライブがKICKASSRAYのラストショウでシークレットゲストだったよね、めちゃくちゃしょぼいシークレットゲストなんですけど笑

水野:ラストショウでシークレットってどんなやつらが出てくるんやろーって思ってたらチンピラがでてくるみたいな笑

ミチマル:まじでシークレットのまま終わってったっていう笑
まあでも最初はそういう感じで始まったよね。遊びというかノリで。

このまま頑張ったらもっと大きいバンドになれるんじゃないか


- EPはいつ頃から作り始めたんですか?

ミチマル:今年の6月のはじめくらいかな?

水野:最初は軽い感じでアコースティックEPでも作ろうやって感じだったけど、作ってるうちに本気になってきちゃって。

ミチマル:最初は録ったままで出そうみたいなノリだったけど、最終的に1stEPをRECからマスタリングまでしてもらったTom Richfieldに今回もMix・マスタリングまで頼んでどんどん熱量は上がってった感じはするよね。
お互い住んでるところが離れてるんでリモートで作ったんですけど、リリースまでなんとかうまくいってよかったです。

- Tom Richfieldさんはどういう方なんですか?

水野:元々イギリスでHindsightsってバンドをやってて、日本に興味があって遊びに行きたいみたいな人だったんですよ。
それで好きが高じて2年くらい金沢に住むってなって、当時僕もですけどミチマルもハードコアバンドやってて、金沢にハードコアのシーンが形成されてたんですよ。それでTomがブリッジナインっていうアメリカのハードコアレーベルの掲示板みたいな所に「金沢でハードコアのシーンはありますか?」ってコメントをしたら誰かが僕らのことを紹介してくれたらしくて。そこから僕らの所に「遊びませんか?」って連絡がきてそこで仲良くなって、2年くらいずっと遊んでましたね。
前のバンドの音源とかも制作してもらったりとか、一緒にバンドもやったし。

ミチマル:イギリスでもエンジニアをやってたから、自分の友達のバンドのレコーデングとかしてたのもあって、僕らもやってもらってて。
Basementとかのレコーディングもしてて、意外とやばいやつっていう。

- 作り始めてからEPを出すまでに2人は会ってますか?

ミチマル:一回も会ってないよね。ラジオの時だけだね、ラジオの時にSkypeで話すくらいで。まあ会えないんでね、こういう状況だし。

水野:やっぱ近くに住んでたときの方が制作は楽だったね。

ミチマル:そうだね。よく2人でドライブしたもんね。

水野:遊びの時に曲の構想の話とかをよくしてたので。それがもうなくなったんでテンポ感がちょっと大変でした。

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- アコースティックのEPを作ろうと思ったきっかけは何かありますか?

ミチマル:お互いに離れてるしメンバーもバラバラっていうか会えない状況でレコーディングとかができなくて、この状況で作れるのはアコースティックだったっていうのも理由の一つしてあるかな。
あとはたまたま俺らは今フォーキーなサウンドになってるから、コロナが流行り出してからライブも何本か飛んだし何もできないのもいやだから、ラジオをやったりとかもそうだけど制作しようってなってこのEPができましたね。

- 『えんとつ』EPはこの状況において癒しのようなEPだなと思ったんですけど、コロナが流行り出してからの期間で何か2人の中で心情の変化はありましたか?

水野:コロナが流行り出してからというより、 ROOKIE A GO-GOが決まったっていうのもあって音楽とか制作に対してより真剣になりましたね。

ミチマル:ライブの収録もあったんですけど、音が埋もれてないからそれぞれのミスというか弱いところがはっきりと分かって、だからそれで自分の今の実力が分かって真剣になるっていうのもあるし、フジロックも決まって希望も見えるというか。このまま頑張ったらもしかしたらもっと大きいバンドになれるんじゃないかみたいなのもあるし、プレイヤーとしての純粋な課題もあって、両方あるからメンバーみんな今真剣だと思う。
嬉しいことがいっぱい決まったからバンドとしてもっと頑張ったらいいんじゃないかみたいな雰囲気は流れてる感じするよね。

(↓そのライブ映像がこちら)

今バンドも多い中俺らは始めたばっかっていうか、まあ始めたばっかでもバーっていくバンドもいるしそういうの見てると悔しいとか思うけど、フジロックが決まって一回自分もそこで肩を並べられるチャンスがきたというか。
それが今すごい燃えてるって感じです。
それ以前は「えんとつEP出して次に繋がればいいな〜」って感じだった気がする。

水野:自粛期間中やし他にやることもなくて制作しかすることないって状況やったけど、そのおかげでいつもより集中して制作できて、自分の課題も明確にイメージできてきた期間ですよね。

ミチマル:俺らは元々全く別のジャンルをめちゃくちゃ長くやってたけど、一回違うバンドをやってしまってるから逆に今どうやっていったらいいかわからないみたいな。だから今分かんないことに挑戦してるって感じで。
水野さんでいうとシャウトと普通に歌うのは全然違うし、俺の曲のコードとかも全然前のバンドと違うし。
だから全部一からって感じですね。

- 今回のえんとつEPを出してからの周りの反応がよかったと聞きました。

ミチマル:ターボキッドがインスタのストーリーでメンションされた数が過去最多で多かったですね。みんなそれぞれお気に入りの曲を上げてくれてると思うんだけど、ターボキッドが一番反応よかった。
HIPHOPっぽい要素もあるし90'sのJ-POPっぽさもあるから、それを聴いてきた年齢の人たちにもハマるし、若い人たちにも新鮮に聞こえるのかな。

- ターボキッド、間奏のビートがかっこよかったです。バンドの自由さを表してるというか。

ミチマル:あれは俺が勝手に入れたんですけど。どんどんあれを聴きたくなるっていう魔法がかかってます。笑

- ミチマルくんは別名義でビートメイクもしてますよね。

ミチマル:してますね。
えんとつEPの中でターボキッドだけドラムが入ってて、使ってるドラムの音も普段ビートメイクで使ってる音だから自分の好きなHIPHOPとGAME CENTERの音をうまくミックスできたかなって思ってて。
あのパートはRedmanっていうNYのラッパーの「Tonight's Da Night」って曲のPVの冒頭をサンプリングしてチョップしてるんですけど、ライブであのパートが生きてくるんでターボキッドをやる機会があれば是非そこに注目してもらいたいです。

簡単な言葉で難しい心情を表すのって一番難しい


- お2人の共通のマインドとして映画というものがあると聞いたんですが、EPの『ターボキッド』という曲は映画のタイトルからとってるんでしょうか?

水野:そうですそうです、「自転車版マッドマックス」って言われてる映画なんですけど。
一言で言ったら「童貞くさい」というか、ダメなしょぼい男みたいなのに共感するんですよね僕たちは。
でこれを音楽にしたらこうなんじゃないかみたいな感じで。

ミチマル:救われないやつというか。

水野:それを音楽にしたらこういう感じなんじゃないかってノリはあるかもですね。
映画にインスパイア受けて、こういう曲にしようってなった時に映画の名前がででくるみたいな、あの映画みたいな世界観でとか、それでなんとなく伝わるんですよね。

- 2人にもやりきれなさみたいなものはずっとあるというか、そういうのが同じような気持ちを持った人たちに伝わったらいいなって気持ちもありますか?

水野:結構自分の中でミチマルと映画のこととかどういう曲にするとか大筋は決めるじゃないですか。それで自分の中で歌詞のテーマが固まってってそのテーマに沿って書くんですけど、なるべく難しい言葉とかは使わないようにしてて。
自分の中であることをイメージしながら書いてるんですけど、難しい言葉とか具体的な言葉は使わないようにしてて、なるべく聴く人の自由性に委ねてる部分が多いですね。

- それは感じました。私はえんとつを聴いてて、『これ以上見せないで 悲しい顔はもう』とか今の状況に向けて書いたのかなって思ったんですけど。

水野:そういう人もいますね。あれ実は自分の犬のことを書いてるんですけど、聴く人の解釈に委ねてる部分が多いかもしれないです。

- 曲を作ってるのはミチマルくんということですが、さよならサバーバンの時からフォークっぽくなって今回もさらにフォークに影響を受けたサウンドになっているのは、自分の中で何か変化があったのでしょうか?

ミチマル:曲を作ってるのは細かくいうと水野も作ってて、最終的なアレンジを今回は俺がしたって感じで。最初の頃はUSインディーエモみたいなことをそのままやりたかったけど、2人ともフォークが好きっていうのもあるし、海外のバンドにこれまで影響を受けてきたけど日本の音楽の良さみたいなものもリスナーとして素直に受け取れるようになったというか。
以前だったら日本語ってストレートに伝わってくるから受け止めきれなかったというかちょっと恥ずかしかった。
洋楽ってパッと聴いただけだとリリックとかすぐにわかんないから音としてすごい感じやすかったけど、10代の頃からを重ねて、日本語の歌詞とか日本人が海外の色んな音楽に影響を受けてアウトプットされるものを素直に感じ取れるようになってきたというか自分で受け止められるようになってきて、自分でもそれをやりたいなと思って好きだったフォークのサウンドや日本語の歌詞をどんどん取り入れようっていう感じで2人でそんなかっちりは決めてないけど方向を決めて、なんとなくそれにハマるように曲を作った感じですね。

- 元々2人は全然違うジャンルをやってたわけだけど、今フォークという誰でも親しみやすい音楽に移行していってるのは、2人の中で自然にそうなっていったんですか?

ミチマル:そうですね、2人の中でフォークがマインド的に合うというか。

水野:元々好きだったのもあるよね。

ミチマル:そうそう。でも水野さんが持ってきたよね、フォークじゃない?って提案を。

水野:最初はエモとかインディーロックをやってたんですけど、フォークの世界観とか歌の感じを混ぜたらいいんじゃないかなと思って提案したんですよね。
それでできたのがさよならサバーバンで。いい感じにフォークが混ざってて、自分でもいいと思ってますね手前味噌ながら。

ミチマル:お互いに好きな映画の中にフォークがでてくるんですよね。俺が一番最初にフォークに触れたのがクレヨンしんちゃんの「オトナ帝国の逆襲」で、昭和に流行ったフォークがすごい流れるんですけどそれがめちゃくちゃよくて。
スッと入ってくるし、ほんとに泣きそうになるときがある。
フォークの歌詞ってストレートだし、水野さんとも言ってるけど難しい言葉を使わないっていう。NHKのみんなのうたみたいな、ひらがなで全部書いてもグッとくる歌詞ってあるじゃないですか。みんな歌えるし大人になって改めて聴いてみるとすごい深いことを言ってたりするっていう、そういう簡単な言葉で難しい心情を表すのって一番難しいと思ってて。それって多分水野さんのバックボーンもあって俺的には歌詞はいいなあって思ってますね。

水野:いや嬉しい。めっちゃ嬉しいね。ここだけ録音しとけばよかった笑

- GAME CENTERが公開しているプレイリストに70年代の日本のフォークソングがたくさん入っていますよね。私は憂歌団とかしか知らなかったけど...

『Game Center Influences』

https://open.spotify.com/playlist/7n3QoBSI9g7UqGD451nPp3?si=59VK8IAkRQCqN014mSmdBw

ミチマル:憂歌団はお父さんの影響なんだけど、今聴いたら昔の人ってすごい海外の音楽をうまくアウトプットしてたなーって思う。英詞とかでもやってるけど、昔の人の海外っぽさってすごいセクシーで、一回昔聴いてた音楽振り返ってみて改めて影響を受けたみたいなところはあるから、そういう自分たちのバックボーンを知ってもらえたらなって思ってあのプレイリストを作りました。

- 水野さんの好きなフォークの歌手はいますか?

水野:山本コータローとウィークエンドですね。岬めぐりの人。あとチューリップですね。財津和夫はやっぱ最高ですね。

- 水野さんも親の影響とかなんですか?

水野:フォークの入り口はナインティナインが主演の「岸和田少年愚連隊」という映画です。70年代を舞台にしている映画なんで当時の音楽が劇中でめちゃめちゃ流れるんですけど、それで片っ端から気になった曲を調べて。
全部いい曲なんですよねその映画で流れる曲。そっから掘り下げていったって感じですかね。

生活に溶け込むような音を作りたい


- 金沢のシーンや自分たちと仲のいいバンドについて教えてください

ミチマル:まだ色んなバンドと一緒にやれてないっていうのももちろんあるけどあんまりいないよね。

水野:あんまり多くない。でも8mileAliensのメンバーのosheとbeziってやつはよく絡んでますね。バンドで言ったらHaikiとBearwearとか。メンバーほぼ同じですけど笑

ミチマル:僕はmotherのみんなと仲良いですね。年も近いし。

水野:企画にも来てもらったしね。でもバンドで言ったらその3つくらいじゃない?

ミチマル:ぐらいかなー。一緒にやっていくうちに仲良くなるタイミングあるだろうし、多分今から増えていくみたいな感じだよね。

水野:まだGAME CENTER組んで1年と半年ぐらいしか経ってないから、こっからだよね。

ミチマル:ライブも元々自分たちがいたシーンみたいな所でのライブが多かったもんね最初は。それこそ英詞で出したEPとかもあったからっていうのもあって。さよならサバーバン出したあたりから自分たちと関わってこなかった人たちから声かけてもらってライブ決まってたけど、それもコロナで無くなっちゃったから結局新しい出会いはないかな。
だからこれから仲良くしてくださいみなさん。このインタビュー読んでる人いたらぜひ仲良くしてください。笑

- 今後のバンドの動きはどうなっていくんでしょうか?

ミチマル:アルバム作りたいよね。

水野:アルバムをまずは作りたいですね。曲はもうあるんで。

ミチマル:あとはもう準備が出来次第録りたいなって感じですね。
これは結構前から言ってて。アルバムを一枚納得するものを作りたいです。

- そのアルバムはこのままフォークのモードになっていくのか、1stEPの『I Have To Go Home』のようなUSエモ感のあるモードに戻るのか気になります。

ミチマル:一応コンセプトはもう俺の中で決まってるんですけど、戻ることはないですね。でも先は見えるというか。
東京に来て思ったのが、アーティストが新譜をリリースした時みんなが聴いてる音楽ってたまにあって、インスタで色んなお店の人とかアーティストの人とかフォローしてるんですけど、そういう人たちが聴いてると同時に「東京は今これだ」みたいな空気があると思うんですよ。Spotifyのプレイリストにも「Tokyo Super Hits!」ってプレイリストがあるくらいだし。
最近だったらmei eharaさんの『Ampersands』が俺的にそれだったと思うんですけど。

とりあえず自分が住んでる街と住んでた街の人に刺さる作品にはしたくて絶対。その辺にいるスーツ着たサラリーマンがGame Centerを聴いてる、要は生活の一部になってるというか、それぐらい溶け込むような音を作りたい。フォークってヒット曲みたいな感じじゃないですか、ヒット曲って言い方はあんまり好きじゃないけど。誰かが聴いてるからとかじゃなくて、曲の力で街のみんなが聴いてるみたいな。

水野:フォークの路線も超越していくような感じがするけどね。

ミチマル:全部まとめてオリジナルって感じで、それぐらいすごい1枚を作りたいっていうのがありますね。

- 水野さんからは何かありますか?

水野:アルバムを注目しといて欲しいっていうのと、僕ツイッターのフォロワー少ないんでフォローしてくださいってことですかね笑
まあでもアルバムですね、アルバム来年は絶対出したいんで2人で頑張っていきたいです。



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GAME CENTER 『えんとつ』
Label : TOKEI RECORDS
Release date: 2020.7.15
Tracklist
1.ターボキッド
2.えんとつ
3.2010(アコースティックVer.)
4.さよならサバーバン(アコースティックVer.)
配信↓


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