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4冊目。

寝る前に読まなかったり、時間が空いたときに読んだり、な読書生活。

ぼちぼち継続中です。


読書生活を始めるきっかけになった伊達ちゃんは身長を8cm伸ばそうとしてるらしいです。(この情報いる?)


4冊目

武田綾乃著
『響け!ユーフォニアム  北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編』

以下つらつらと感想を。またしても怪文書の予感。


リズと青い鳥

第二楽章を語る上で外せないのが希美とみぞれの話。
ただこの二人に関してはちょっと難しくて自分としては明確な答えみたいなのを出せていない。
のであまり二人の関係性には言及せず、印象的だったシーンについてポツポツと思ったことを述べていきます。


「多分、青い鳥がリズのことを好きだったから。リズが望むなら、それを受け入れた。 リズの選択を、青い鳥は止められない。だって、好きな人が望むことだから。だから、いくら悲しくても青い鳥は飛び立つしかない。」

232頁より

咄嗟に頭をよぎったのは「飛び立つ君の背を見上げる」だった。

今まで自分は飛び立つ君の背を見上げる側の気持ちばかり考えていたことに気付いた。

どんな思いで君は飛び立っていくのか。
どんな思いでみぞれは。


 離れたくない。 一緒にいたい。それでも、青い鳥はリズの決断を受け入れる。なぜならば、リズを愛しているからだ。 悲しい。寂しい。 込み上げる感情が、相手に伝わらなくても構わない。ただ、あなたが幸福であればいい。

238頁

あまりにも美しすぎる。
美しすぎて、怖かった。

「ただ、あなたが幸福であればいい。」という感情。
見に覚えがあった。自分も抱えている感情だった。

だけどこの気持ちを受け取る側のことを考えたとき、ゾッとした。

きっと、「ただ、あなたが幸福であればいい。」という感情を受け止めきれるほど、傘木希美は強くない。


みぞれの演奏に応じるように、 希美のフルートが華やかな音を奏でる。 密やかな二人のかけ合いは、以前のものとは明らかに違っていた。 みぞれのソロの持つ魅力を、希美のフルートが器となってすくい上げる。 情感のこもったみぞれの音楽に、希美が合わせているのがわかる。 これが、希美の選択なのだ。

254,255頁より

あまりにも残酷な描写だと思った。

希美は合わせることを選んだ。
それはすなわち、奏者としての敗北を選んだということなんじゃないだろうか。
音楽に関しては全く詳しくないから素人意見だけれど、お互いの音がぶつかりあって生まれる音楽だってあると思う。

でも希美はそれを選ばなかった。
選べなかった。

吹けないと言った香織先輩と同じように、知ってしまった、分かってしまった。
その身を持って、自分とみぞれの圧倒的な違いを、埋められない何かを。

これ以上ないくらい残酷なシーンだと思った。

希美が諦めた何かは、本当に音楽のことだけなのだろうか。


「私、希美のこと、大好き」

一瞬、不自然な沈黙があいた。強張る希美の背中に、みぞれの指が食い込んでいる。希美… と、みぞれが不安げに顔を上げた。 希美はみぞれを見下ろしたまま、力なく笑った。

「ありがとう.....私も、みぞれのオーボエ大好き」

306,307頁より

苦しい。ただただ苦しい。
肺をギュッと掴まれたように上手く呼吸ができない感覚に陥った。

特別ってなんだろう。
好きってなんだろう。

わからない。

今まで感じていた二人の溝が、はっきりと溝になった瞬間だと思った。
絶対に埋まることのない溝になってしまったのだと思った。

なんとなく、みぞれにとってのハッピーエンドと、希美にとってのハッピーエンドは全く異なるものなんだろうなあと思ってしまった。

希美の中に渦巻く感情は、複雑でたくさんの色が入り混じっている。
みぞれのように純粋で無垢透明な色をしていない。

わからない。
やっぱりわからない。

みぞれと希美の二人に焦点をあてて描いた、映画「リズと青い鳥」も合わせてまた考え直したいと思った。


関西ダメ金

読みながら普通に号泣してしまった。

これはもう何十回何百回って思ったことだけど、ただ報われてほしかった。

今日に至るまでの吉川優子の努力も情熱も苦労も。

その全てが、彼女が掲げた「全国大会金賞」という目標を達成することで報われてほしかった。


吉川優子は強い。

関西ダメ金で終わったあのときも、涙のひとつも部員たちには見せず、立ち込める暗雲を切り裂くように高らかに声を上げた。
明日を見つめ、未来へと繋ぐ今日にするために。

北宇治は、ここで終わりなんかじゃない。たったいま、今日という日は、来年のコンクールに向けての一日目。

334頁より

いまからの練習が、来年のコンクールの結果に直結する。来年のコンクールで泣くか笑うかを決めるのは、ここにいる今の自分です。

345頁より

吉川優子は強い。


救い

北宇治高校吹奏楽部にとっての救いが吉川優子なら、吉川優子にとっての救いは加部友恵だったんじゃないかなと思う。

コンクール直後の吉川優子の言葉、そしてアンコンに向けた吉川優子の言葉は間違いなく北宇治高校吹奏楽部にとって救いだった。

3年生にとっても、1,2年生にとっても、翳ってしまったその瞳に光が戻ってきたのは、間違いなく吉川優子の言葉がきっかけだったと思っている。
優子の演説は北宇治高校吹奏楽部を救った。

でもそれと同時に思うんだ。

じゃあ吉川優子を救ってくれるのは誰なんだって。

今日に至るまでの彼女の努力、情熱、苦労、駆けてきた時間のすべて。
それを救ってくれるのは誰なんだって。

みんなの演奏を、うちだけが一人占めできる。こん 贅沢なこと、もう二度とないと思う。うちは、この北宇治のマネージャーでよかった。みんなの演奏を支えられた。そのことを、うちは心から誇りに思ってる。みんな、ほんまにありがとう!

368頁より

それはきっと加部友恵の言葉だった。

どんなに明日を見たって、未来を見たって、優子たち3年生には次なんてない。
来年のコンクールなんて、一生やってこない。
彼女たち自身の手でその悔しさをはらす機会は、もうない。

関西ダメ金という結果が優子の望む結果でなかったことなんて明白だ。にも関わらず彼女は最高の演奏をしたと言い切った。
本心だろう。紛れもない。
だけど、それが全てではない。

私は覚えている。南中の最後の年のコンクールの結果にいまでも納得いってないと口にした吉川優子を。その中学の記憶から、やっと解放されたような気がしたと口にした吉川優子を。

だから、だからこそ報われてほしかったともう何度も言ってきた。それでも思う。吉川優子に報われて欲しかったと。

優子は誰にとってもストレスのない部活を目指していると、麗奈が言っていた。だけど、そこに当の優子本人は含まれているのだろうか。一人だけが無理をすれば上手くいくだなんて、そんなのはただの幻想だ。

213頁より

いつだって優子は、自分自身を勘定にいれていないのだ。


そんな吉川優子を、3年生たちを掬い上げてくれたのは、間違いなく加部友恵だった。

部員たちの前で決して涙を見せることなくずっと理想の部長としてあり続けてきた吉川優子。
そんな彼女が嗚咽交じりに号泣していた意味。

頑張ってきてよかったって、そう思った。うちらの努力は無駄やなかったんやって。頑張ったら報われるんやって。やっと、そう思えたんや。

響け!ユーフォニアム 2         
北宇治高校吹奏楽部のいちばん暑い夏より


この瞬間、彼女は救われたのだと思った。

この瞬間、優子のやってきたことは間違ってなかったのだと証明されたのだと思った。


次期部長

久美子が部長を頼まれるシーン、まじで好き。

なにがずるいって吉川優子の言葉でしょ。

「うちは、アンタに任せたいって思ってる。今年、うちらが果たせへんかった夢を、アンタに叶えてほしい」

376頁より

これを他の誰でもない、黄前久美子に向かって放つのがまじでずるい。

優子と久美子って決して仲良くはないし微妙な距離感の関係性なんだけど、その関係性が地味に好きだったりする。

優子はちゃんと久美子のことを見てるしちゃんと評価している。
逆もまた然りで、久美子もちゃんと優子のことを見てたしちゃんと評価している。

お互い直接口にしあう機会なんてないだろうけど、心の底では互いに互いを評価していて。

そんな新部長と元部長がとても好きです。


最後に

吉川優子に対してクソデカ感情を抱えているので結局その話しかできないらしいね。
そんなことはどうでもいい。

声を大にして言いたいのが、加部友恵の体育館のシーンをアニメ化してくださいということ。
 
第二楽章をアニメ化した誓いのフィナーレはかなり焦点を絞った話になっていたので、小日向夢や剣崎梨々花などカットされている話も多々ある。
ただどうしてもそのアニメでは描かれなかった部分をきちんとアニメで見たいという気持ちがある。

それこそ加部友恵に関してはあの体育館のシーンが一番の見所じゃないか。

久美子3年生編のアニメ制作も決定しているので、あわよくば誓いのフィナーレで描ききれなかった第二楽章のラストをアニメ化してほしいと思っているが、まあ難しいだろうなあとも。

これももう、2年以上前なのか…………


ずっと待っている。
次の曲が始まるそのときを。

今はゆっくりと、聖書(最終楽章)でも読みながら待つことにします。

それでは。