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ひとつだけ

ヒトって、ひとつだけに弱い。

最後の一点ですという言葉にもそうだし、彼の良さを知っているのは私だけ、この心のつながり(の強さ)は、世界のどこにもないというのもそうだ。

世界にひとつだけの花っていう曲があって、私はあれがあんまり好きじゃない。なんでだか好きじゃない。そう思っていたら、僧侶で文筆もされている南直哉氏があの曲の好きになれなさについて解説していた本に出会った。随分前の話だけれど。

曰く、あの歌は自分が自分のままでいいよと言いながらも、「花屋に並んでいる花」にたとえているのだと。道端に生えているありふれた花では、そこらへんに落ちている石ではダメで、貨幣と交換できる価値のあるモノでなければならないと。

ナンバーワンよりオンリーワンはキツい。ナンバーワンは客観的指標だけれど、(価値ある)オンリーワンは誰かの承認を必要とするから。あの曲がウケたのは、皆認めてもらえていない実感があるからだ。そんなような趣旨だったと思う。そして、仏教では、一つしかないもの、くり返しや再現性のないものは価値がないとみなすらしい。


ヒトは、これは自分だけが手にしたものだ、見つけたものだ、受け取ったものだと思うと感動し、高揚してしまう。でもその「ひとつだけ」は自分の気持ちや相手や環境の変化によって変わってしまう、あやふやで、いつ灰燼と帰すともしれないものだと思う。それともあやふやだから、その一瞬の強烈なきらめきが欲しいと思うのだろうか。一過性だから、いずれ消えていくから、錯覚だから魅力的なだけかもしれないのに。


※note30日チャレンジ15日目 累計 21,350文字(オフライン含め23,180文字)

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