日記 おでかけウィークと少しの苦み

 春休み後半戦。仕事がひと段落つくかと思いきや、追加で依頼があったりであまり余裕がない日々が続いているけれど、創作がひと段落したこともあり色々出かけていた。
 一つ目は老舗の和菓子屋さん。歓楽街のど真ん中にある店で、名前は知っていたのだけれどあまり行ったことがなかった。その店がInstagramで積極的に販促をしていたので食べたくなり、予約しないと買えない商品を先に予約し、後から「午後になると欲しい和菓子が売り切れているかも」と思い直して和菓子も取り置きしてもらうことにした。
 和菓子を買いに行くだけではさすがに電車代がもったいないので子供を連れて展覧会に行ったり、デパート巡りをしたり。次女にとってはほとんど初デパートだったのではないか。

 イッセイミヤケから新しい香水が出るという情報を少し前にXの香水マニアの相互さんから得ていたので、それを試してみたかった。もう発売済かと思っていたら17日から正式発売とのことで、でも先行でにおいをかがせてもらうことは出来た。
 店員に「子供が大きくなったので香水にまた興味が出て」と言ったら、めちゃくちゃ沢山試し聞きさせてくださった。

クロエの香水が結構好みだった。
ペンハリガンのルナ オードトワレも良き。
イッセイミヤケと合わせて三本買いたいくらい。

 その店員さん、子供もちゃんとレディ扱いしてくださって、良かったな。私の趣味に付き合えるような年齢になったのもなんだか感慨深かったし、娘たちと好みの香水が違うのも面白かった。


 また別の日、近くの大学附属博物館に友達親子と連れ立って行った。生憎の天気だったけれど、春休みの疲れが大分たまっているところで、興味はあるけれど誰かを誘わなければ出かけにくい気分だったので、とても良かった。大学キャンパス内にある博物館なので、平日しか開いていないのだ。長期休みの時にしか子供を連れて行けないので、友人が誘いに乗ってくれてありがたかった。
 お昼は近くで食べようと言っていたのだけれど、二人ともポンコツで目当てのイ〇ンは車の距離。仕方ないから電車で戻って乗換駅周辺でご飯屋さんに入るかと話していたら、ドミノピザの店舗からチーズの焼けるいいにおいが。客席もある。
 ダメもとでイートインできないか聞いてみたらOKとのことだったので、はらぺこな五人はうきうきピザを注文しましたとさ。デリバリーと違って焼きたてだったので美味しかった。


 このおでかけの裏で、ここで言っても仕方ないようなしょうもないやり取りが親との間にあって少し消耗した。
 博物館に行った日はその消耗のあった翌日のことで、友達にその話は特にしなかったのだけれど、たまたま私と私の母の話になった。
 その時彼女がさりげなく言った言葉に、私はつい母を擁護するような言葉を言おうとしてしまっていた。「時代のせいだと思うんだけどね」というような言葉を。
 それは、母に受けた仕打ちが存外に酷いことだったと彼女の言葉で再認識して自分がこれ以上深く傷付くのを避けるためというよりは、明らかに「母を他者から少し悪く言われたので、その母を守る」というような意図があったように思えた。だから、表面の自分はそれを潔しとせず、その言葉を発するのを踏みとどまった。
 前日に消耗したやり取りがあったくせに、いや、もしかしたらそのやり取りがあったからこそ、自分は咄嗟に擁護しようとしてしまったと気付いた。
 そんな自分になんだか落ち込んでしまったのだった。

 母のことについては大分諦めがついていたと思っていたけれど、捨てきることはできないみたいだ。おそらく母が死ねば、新たに傷付くことはなくなるからという理由で、解放されるんだと思う。
 昔、親とは完全に縁を切って生活している人がXにいた。私も地元から逃げ切っていたらそうなっていただろうかと、度々その人のことを思い出す。たとえ没交渉になっても、心理的にはやっぱり断ち切れなかったんじゃないか。Xにいたその人の様子を思い返すと、そう思う。
 実は、これまで新人賞に出してきた作品にはどこかしらに「母親」というものの影がちらついていたのだけれど、今モヤモヤ構想している話には母親の要素が(今のところ)入っていないことだけがなんとなく救いだ。

 こういう話をすると、「お母さんに対する感情が、良くも悪くも小説の原動力なんですね」みたいな感想が生まれるだろうなと思う。確かに、母に対する悪感情がなかったら、小説を書こうとしてなかったかもしれないという気持ちはある。
 でも小説を書くことなんてそんなに大層なことじゃないとも思う。だから、母と良好な関係のまま地元から逃げきってエリートサラリーウーマンになってた方が幸せだったとも思うし、この感情がなかったらもっと屈託なく、楽しく小説が書けて、今頃ベストセラー作家だったかもしれないとも思う。
 だからネガティブで根強い拗れが自分の中にあることを、プラスに転じられるからいいじゃないとはあまり思えない。新人賞を獲ったら(明確にプラスに転じられたら)そうは思わなくなるだろうか。
 白々しく、「これまでの苦労があったから、今があると思いますズビズビ(ノд-。)」って言ってるかもしれない。

 今週はこんな感じで。

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