エヴァンゲリオンがどうにも合わなくて

　シン・エヴァンゲリオンが今Amazonprimeで観られますよね。

　物書きを目指すんなら、エヴァくらい目を通さなきゃと思っていて、そのためにはせめてシンの前の序破Qは観ようと思って（注　TV版と旧劇は観たことあり）、とりあえず序を観たんです。

　やっぱり、受け付けないわー

　序はTV版を焼き直した、でも大体同じ話で、それが途中で終わっている。私が劇場に行って千八百円はらってこれを観させられたら、ブチ切れると思うのだけど、エヴァファンはブチ切れないの？　何年も待たせてまたこれなの、ってなんなかったのだろうか。　

　エヴァは熱狂的なファンが多くて、文学における村上春樹的存在だなと思う。だからあんまり好きじゃないって言いにくかったのだけれど、人気があるから好きじゃないのかもしれない。「エヴァ　嫌い」とかで検索してみたら、私以外にもまあまあ嫌い勢がいて、「まあそうだよね」と少しホッとした。

　何が受け付けないかと言うと、

　①完結させられなかったのに、あるいは一応完結したのに引っ張りすぎ

　②シンジくんをはじめ、パイロットたちが理不尽な目にあいすぎ

　③ゲンドウもミサトも、ネルフの大人達が皆歪んでて全然共感できない

　④こんな深刻な物語なのに多数発生するラッキースケベ展開

　⑤ファンが熱狂過ぎてノリについていけない

　こんなところかなあと。私的には、シンジくんが突然ネルフ本部に連れてかれて、訓練もしてないのに「はいこれエヴァ、今から乗って」って言われて「嫌だ！！」って言うの、めっちゃリアリティあるなと思って感動すら覚えたのです。ガンダムとかのことは良く知らないけど、ロボットアニメの主人公って最初から使命感を持っていて、突然パイロットに登用されても、ロボットに乗り込むことに疑問を抱いたり、拒絶したりしないイメージがあったから。光栄すぎて戸惑うとかはあるかもだけど。庵野監督はこのリアリティさを出したいがためにこのアニメ作ったんかな、このシーンを作っちゃったから後はどうでも良くなったのかなと思ったくらいだ。

　あんな状況に放り込まれて戸惑わない方が変なのに、ミサトは逃げるなとか言うし、そういったかと思うと「逃げてもいい、でも自分の仕事でしょう」などとダブルバインドなセリフをかますし、あんな父親絶対信じられないのに、「信じられるか！」って言ったら綾波に叩かれるし、ろくに訓練してないのに作戦失敗しかかったらアホほど怒られるし、怒られる以前に死にかかるし、理不尽すぎてついていけない……。それが社会なのかもしれないけどさあ。

　エヴァ苦手勢は、エヴァの戦闘シーンがグロくて見てられないという一派もいるそうなのだけど、私はそれは平気で、とにかくずっと理不尽なのがやり切れない。シンジくんを逃げてばかり、いつまでもぐちぐちウジウジしてる奴と評して、そこが嫌って人もいるみたいだけど。

　①の要素も大きい。物語を着地させる苦労は、物書きの端くれとしてよく分かるのだけど、だからこそ、有名になったら、物語ほっぽらかしたり、引き伸ばしたりしても売れるんだーいいねーみたいな気持ちにどうしてもなってしまうんだよね……。ひがみです。はい。

　私はＴＶ版エヴァをちゃんと終わってないとは思っていなくて、あれはあれでああいう終わり方で良かったんじゃないかと思うのだけれど、その後、ファンが動揺したか、庵野監督にやり残した感があったのか分からないけど、劇場版を多数作り直したのが私には気に食わない。これは他のアニメや映画でもそうで、ディレクターズカット版とかやめろって思うし、まどマギがエヴァタイプの劇場版を作ったのもなんだかなあって思ってしまった方だ。アニメを見てない人に劇場版を見てもらう意図なのかもしれないけど、当然ファンが見に来ることもあてこんで制作されていると思うし。

　音楽なら、同じライブの東京会場と大阪会場と回るファンもいるのにね。基本的には同じストーリーの物語で、何度もお金を取ることに対して違和感を感じるのは、物語を下に見ているんだろうか。小説って結構好きじゃないと再読しないし、あんまり短い期間で何度も再読しないものね。それとも、純粋な新作じゃないのに「新作でござい」と映画をリリースするのがフェアじゃないと感じるというだけなんだろうか。

　③もなあ……。ゲンドウは見た目からして悪役（？）だからまあこんなもんかと思うけど、ミサトにドン引きしたんだよね……。彼女の場合、生死にかかわる酷い経験をしているのだし、ああいう弱いところがあってもいいのかもしれないけど、でも苦手。

　別のエヴァ苦手勢のブログに、「エヴァの登場人物を監督は愛していない感じがする」とある作家が言っていたとあった。確かに、エヴァにはその冷たさがある。でも、私もそれが出来ていないなと思う。同族嫌悪かな。主人公をいじめぬくと物語は面白くなるのだけど。いじめぬいてもなお愛するってどういうことなんだろう。

　と、好き勝手書いてみたものの、やっぱり無視しきれない、気になる作品ではあるのです。絶対気が合わないのに、なぜか気になるクラスのあいつみたいな。シンではやっとファンを納得させるエンディングが待っているというし、シンを観たらエヴァ観が変わるかもしれないから、頑張って辿り着きたいと思う。