ヤスイさんのアップルケーキ
雪が降り積もった次の日の夕方
学校から帰宅した次女三女と
家にいた四女、次男を連れて
近所の公園で雪遊びをしていると
以前イヌビワを一緒に収穫した
ヤスイさんが通りかかった。
2023年8月の記事[早朝のイチジクとり]
https://note.com/ear1y6ird/n/n875689c26f61?sub_rt=share_b
こんにちは〜
と声をかけると
あらあなた前にジャガイモくれた方?
と覚えていてくださった。
そういえばヤスイさんにお会いした日
たまたま父が育ててくれた農産物がたくさんあったので差し上げたのだった。
時々あなたたちのこと思い出すのよ。
元気かなってね。
陰ながら応援しているわよ!
こういう励ましの言葉をいただくと私は勝手に世界中から応援されている気分になって力が湧く。
ヤスイさんは夢中で遊ぶ子どもたちを見て
たくさん遊ぶのが一番いいわ!
勉強しなきゃいけないときに集中してできる子になるわよ!
とおっしゃった。
私もそう信じて10年以上子どもたちの外遊びに一生懸命に付き合っているのだが
反面自信がない。
最近は特に中学一年生の長女が気にかかっている。
でも子育ての結果はすぐにはわからない。
ヤスイさんだってこの言葉を確信を持って発せられるようになるまでに30年かかっているのだから。
そのうちヤスイさんが
明日もここらへんで遊んでいる?
明日私アップルケーキを焼いて持ってくるわよ!
と言い出した。
行きつけの八百屋で手に入れた紅玉と陰陽洞(自然食品店)の材料で作ってくれるとのこと。
私は明日は仕事があって夕方外に遊びに出かけられるか定かではなかった。
けれども5時なら大丈夫。
3本くらい焼いてくるわ!
3本あれば足りるわよね?
自分で言うのもなんだけど
私が作るアップルケーキって本当に美味しいのよ!
ヤスイさんは両手を口にあてて肩をすくめクスッと笑った。
そして明日5時頃持ってくるわね〜と手を振りながら坂を降りて行った。
イヌビワを一緒に収穫した日と同じように。
自宅に戻ると家の前で長男とその友達が
道路脇に寄せた雪を道路に広げていくつかの山脈を作り障害物サッカーをしていた。
長女も中学校から帰宅していて雪だるまを作っていた。
あたりは薄暗くなりかけていたし
冷たい風が吹いていたけれど
みんなお構いなしに遊んでいる。
長男長女次女三女四女は朝も暗いうちから雪で遊んでいたというのに飽きない様子だ。
次女三女四女は引き続き外で雪遊びをし始めたので
わたしは次男と家に入り夕飯の支度をした。
明日ヤスイさんがアップルケーキを持ってきてくれる。どんなケーキかな。それを思うだけでとても楽しい。
次の日私はヤスイさんとの約束の時間には家に戻れるように昼過ぎから慌ただしくしていた。
いつもより早く仕事を切り上げて
幼稚園へ四女を迎えに行った。
けれども幼稚園から帰宅すると
ダイニングテーブルの上に見覚えのない箱が置いてある。
すぐにヤスイさんからのアップルケーキだとわかった。
隣にレモンが三つ置かれている。
先に帰宅していた長男がリビングで図書館から借りた漫画を読んでいたので
この箱どうしたのと聞くと
俺が帰ってきた時にヤスイさんが家の前にいて箱とレモンを渡された。
レモンは庭でとれたもので皮の模様は気にせず食べてねと言われた。
とのこと。
そういえばイヌビワを一緒にとりに行った日も、ヤスイさんは私たちより遥かに早く待ち合わせ場所に到着して私たちを待ってくれていた。
ヤスイさんに実家からもらってきた金柑と柚子を差し上げようと思って
玄関に用意して置いたのにな。
箱を開けるとこんがり焼けたアップルパイが3本並んでいた。
湯気は立ち上っていなかったけれど
なんだか暖かな空気が漂っているような気がした。
ヤスイさんを思いながらアップルパイを眺めていると子どもたちが皿とフォークを持って集まってきた。
早速子ども4人と私で切り分けていただくことにした。
隣に置かれていたレモンがほのかに香っていた。
ヤスイさんにお礼を言える日はくるのだろうか。
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