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【戦評】 接戦の終盤、楽天ベンチの「判断誤る」継投作戦~8/20●楽天3-7ロッテ

※本稿は全文公開中、最後までお楽しみいただけます。

運命決まる勝負どころの3週間

楽天は本戦から3週連続の6連戦日程に突入した。

2位・西武から6位・オリックスまでゲーム差5.0。
3位・楽天から最下位まで2.5の間にひしめく令和元年の乱戦パリーグ。

混沌とするCS争いのゆくえも、この3週間で決着つくと思われる『正真正銘の勝負どころ』がやってきた。

そんな6連戦日程の最初3連戦は、5位・ロッテとZOZOマリンで激突。
このカードは6勝10敗2分、対戦カード別で最も旗色が悪い。

ロッテ戦の借金完済なくしてCSなしということで、楽天は岸、則本、美馬の3本柱を総動員、平石監督も一気に3タテを狙う勝負手を打ってきた。

岸xマリンといえば通算防御率2.22だ。
ノーヒットノーランも達成した相性良い球場になる。
美馬xマリンも通算2.64と健闘が光る。

この後、2週目の週明けもロッテ3連戦、3週目の週明けはソフトバンク3連戦になっている。
三本柱で分の悪いロッテ戦を一気に打開し、一人旅をするソフトバンクの情勢次第では首位をも狙う「絶妙ローテ」になった。

じつはローテを大幅に組み替えたわけではない。
後半戦の開始時、則本、美馬を週末に置かず、岸の復帰を週明けに持ってきた運用が、ここへきて実を結んだ。

当時は1位・ソフトバンクと8.0差あり、楽天ベンチも現実的な仮想的としてロッテに照準を定めたのだろう。
全てはこの6連戦日程を見据えた起用法だと思われる。

両軍のスタメン

楽天=1番・茂木(遊)、2番・島内(左)、3番・浅村(二)、4番・ブラッシュ(指)、5番・銀次(一)、6番・和田(右)、7番・ウィーラー(三)、8番・田中(中)、9番・太田(捕)、先発・岸(右投)

ロッテ=1番・荻野(中)、2番・マーティン(右)、3番・鈴木(三)、4番・清田(左)、5番・中村(二)、6番・レアード(指)、7番・井上(一)、8番・平沢(遊)、9番・柿沼(捕)、先発・石川(右投)

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鷲打線を苦しめた「未知なる敵」の存在

5位・ロッテは7/30から8/18までの20日間、10連戦+9連戦の19試合を戦う過密スケジュールだった。
この間、日中の蒸し暑さ残る屋外球場が13試合も。

最後の3連戦は痛恨の3連敗。
敵地で6位・オリックスに1点、0点、1点と極端な得点力不足に陥り、3タテくらって意気消沈、千葉に帰ってきた。

楽天もタフな夏場を迎えているが、それ以上にロッテも厳しい8月戦線。
両軍ギリギリのところで戦っているなか、本戦3-7で軍配上がったのは、ロッテだった。

楽天はゲームプランどおり、先発・岸が6回まで1失点の好投。
伊藤コーチも岸本人も「悪くない」「悪くなかった」と歯切れ悪いように、岸は本調子ではないながらも要所を締めた。

しかし、味方打線が敵軍先発・石川を攻略できず。

今季、石川の楽天戦防御率は9.17。
苦手意識はなかったと思われるのに、額面どおりの点を取れず、8回2失点のHQSを許した。

この日、石川はシンカーが上々だった。
近年、この看板球が思うように機能しなかったことも不調の原因になっていたが、本戦では当方計測32球を投げて以下の結果。

空振り 9球 (空三振6個含む)
見逃しストライク 5球 (見三振1個含む)
カウント稼ぎファウル 5球
粘られファウル 4球
ボール 5球
凡打 3球
安打 1球

打者不利結果が目白押しになった。

石川自身のピッチングが良かったのに加えて、石川本人もヒーローインタビューで口にしたとおり、マスクをかぶる柿沼のリードも楽天打線を苦しめたと思う。

楽天1軍にとって捕手・柿沼は(2軍経験の長い堀内とかは別にして)「未知なる敵」だ。
柿沼は1軍経験に乏しいため、それが逆に楽天側からみれば、どういう配球の癖や傾向を持つのか、なかなか把握しにくい。

そこで下記表参照、楽天打線のロッテ戦成績をロッテ捕手別に分類してみた。
(本戦試合前データ)

◎ロッテ捕手別でみた楽天の打撃成績

良く知った正捕手・田村との対決ではOPS8割近く。
しかし、ほぼ知らない柿沼やあまり知らない江村がマスクをかぶると、OPSは1割以上の大幅ダウンになっている。
捕手の配球も、この結果の一因になっていると思う。

その象徴が4タコに終わったウィーラーだ。
ウィーラーといえばロッテキラー、今季も当該打率.387である。

しかし、その戦績をロッテ捕手別で分類すると以下のとおり。

江村直也 .400 (5打数2安打)
柿沼友哉 .143 (7打数1安打)
田村龍弘 .359 (39打数14安打)
細川亨 1.000 (1打数1安打)
吉田裕太 .600 (10打数6安打)
Total .387 (62打数24安打)

圧倒的に安打量産しているのは、田村マスク時。
柿沼のときは試合前7打数1安打、本戦終えて10打数1安打になった。

DeNAラミレス監督の現役時代がそうだったように、来日5年目ともなれば、NPBでの成功は、投手の配球傾向以上に捕手の配球傾向がカギを握るとウィーラーも気付いているはず。

本戦4タコは自身の不調に加えて、配球の癖をまだつかみきれていない柿沼がマスクという要素もありそうだ。

判断誤る平石監督

平石監督の岸続投判断もマズかった。

6回に銀次の適時打で2-1と勝ち越した後、7回のマウンドも岸続投。
『7回ブセニッツ、8回森原、9回松井』という選択肢もあるなか、楽天ベンチの判断が裏目に出た。

この回、岸は短長3安打を打たれて逆転の2失点。
2死2塁と得点圏にランナーを残したまま、112球でのKOになった。

勝負しにいく場面、勝負を避ける局面、勝負どころを間違えた。

まずは、前述したように回頭から必勝リレー投入もあったはずである。

岸は6/8以来、白星がない。
これ以上白星がないと、経験豊富の岸とて徐々に焦りの色を募らせる時期になる。
だから、病み上がりの岸に無理させず、必勝リレーで3ヵ月ぶりの白星をつけさせ、気持ちよく次回登板へ望む環境を用意すべきだった。

岸続投の場合でも、2死3塁、1番・荻野との対決は回避してほしかった。

この対決、外角低めのストレート2連投がいずれもボールに。
2-0とカウントを悪くした時点で、解説・里崎智也さんも指摘したように1塁を埋め、2死3,1塁で左打ちのマーティンに左の高梨をぶつけるべきだった。

マーティンの左投手打率は壊滅的な.130だった。
実際、荻野に決勝打を浴び2-3と勝ち越された直後、高梨を投入。
高梨はマーティンを無事に二ゴに仕留めていたので、不利なカウントから荻野と勝負しにいった判断は首をかしげざるをえない。

その判断には、荻野vs岸の通算対戦成績もあったかもしれない。

通算38打数8安打の打率.211。
直近3年では21打数2安打の打率.095。
本戦も3打席凡退に退けていた。

しかし、今季の荻野は今までの荻野と違う。

今季は打率.310と好調。
8月月間打率も.307をマークし、8戦連続ヒット中で最近5試合でも.381と当たりに当たっていた。

さらに、8/12にキャリア初の規定打席に到達。
例年怪我に泣かされた春の妖精も、令和元年は立秋を過ぎても元気も元気。
キャリアで一番集中し、ますます燃えるシーズンが今季だった。

それに本戦3タコも内容は良かった。

1打席目の二ゴは、粘りの8球勝負。
2打席目の投バゴは、アイデア良くバントヒットを狙ったが、岸のよどみない好処理に阻止された。

3打席目の中飛は、思い切りバットを振り抜いたもの。
右中間クーリッシュ後方、ウォーニングゾーン直前を襲う大飛球だった。

このように無安打だったが、4打席目では打ってくる嫌な雰囲気があった。

一方、先発・岸は高熱入院明けのため、本調子ではなかった。

「熱なんて、出すものじゃない。難しい。全部がリセットされてしまった」と本人が漏らすように、2/1から、それより前の昨オフから作り上げてきた体力は、相当に奪われたと思う。

その結果が如実に表れているのが、ストレートの平均球速である。


開幕戦 141.1キロ
左太もも痛復帰後 142.1キロ
発熱復帰後 140.6キロ

発熱復帰後はNPB平均値を約3キロ下回るスピードにとどまるのだ。

本戦も140.3キロ。
当該45球を投げながら『空振りゼロ』も切れなしを象徴する。

6.2回、打者28人、球数112、被安打7、被本塁打0、奪三振3、与四球1、失点3、自責点3。

ストレートが走らないため、変化球を約6割用いる変化球多投の組み立てになった。
以前、岸のストレートが良いのに、ストレートを使わず変化球多投した太田の誤ったリードがあったが、本戦ではストレートが悪かったため、変化球が増えた。

だが、ストレートあっての変化球なのに、変化球ばかりになったことで、変化球が効果の薄い半速球になった部分は否めない。

そこを打者に狙われる場面もあった。
6回清田のチェンジアップ撃ちの塀際左飛は、その典型例だった。【終】

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