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【記録】 楽天2軍の育成状況をポジション別の守備イニングで確認する!

多くの出場機会を得る2名の育成選手

最大13あった借金を3週間弱で4まで返済し、真夏の反転攻勢に入った東北楽天。勢いに乗るイーグルスのそのファームで現在“ちょっとした異変”が発生している。

三木肇監督が指揮を執る2軍は、81試合50勝29敗2分で1位。
2年連続イースタンリーグ優勝へ向けて、好位置でオールスターブレイクを折り返した。

そのなか、支配下の和田恋に続く、チームで2番目に出場機会を得ている存在は、昨秋ドラフトで育成1位指名を受けた新人内野手・辰見鴻之介なのだ。(223打席、436守備回いずれもチーム2位)

捕手に目を移すと、1軍92試合の出場歴を持つ高卒8年目26歳の堀内謙伍が最多出場。次点が、これまた育成選手。高卒4年目の水上桂になっている。

一般的に、育成は支配下と比べて出場機会を確保するのは難しい。
というのは、2軍公式戦で育成は1試合5人までしか出場できない、そんなルールがあるからだ。

現在、楽天のファームには数多くの支配下と15人の育成を抱えている。彼らの成長を促すため、限られた出場機会を前述のルールのもとで分配すると、ふつうなら特定の育成選手の出場機会が目に見えて増えるという現象は発生しにくくなる。しかし、今季の2軍では、育成の辰見と水上にかなり多くの出場機会が集中しているのだ。

それだけ球団が両者にかける期待度が高いということなのだろう。

今回、オールスターブレイクのタイミングを利用して、楽天2軍選手の出場機会をポジション別の守備イニングで確認し、育成の進捗度合いをチェックしてみたい。

捕手

捕手は1位堀内、2位水上になった。

5月上旬に確認したときは、この両者と石原彪3人が均等に出場機会を得ていたが、あれから2ヶ月が経過して石原は脱落。ホリケンと水上の2人に出場機会が集中している。

ホリケンは課題の打撃が年々改善に向かっている。OPSを2019年から確認すると.489→.527→.642→.714ときて今年.777とキャリアハイ。

同じく水上も、これまで非力すぎた打撃にメキメキと力をつけてきた。

過去3年は238打席でOPS.393。これは同い年で同じ右投右打の捕手として役回りがかぶる江川侑斗の206打席で.610に大きく遅れをとる数字だった。昨年終了時の段階では少なくともバットでは「江川>>水上」だった。

そんな背景もあって、昨年の契約更改時に水上は支配下→育成へ降格。

その悔しさをバネに変えたのだろう。今年は一転、打率.250、OPS.653と、見違える数字だ。6/6ロッテ浦和球場ではもう少しでプロ初本塁打というフェンス直撃の左越二も放った。

いっぽう、ライバルの江川は打率.040、大きく明暗を分ける結果になった。

明石商で春夏3度甲子園に出場したことのある小兵捕手は、配球やインサイドワークの面でもレベルアップをみせているようで、捕手防御率2.53はチーム1位。

この数字はいろんなノイズが入るため、捕手のリードを評価するために本当に正しい指標なのか?と言われれば首をかしげざるをえないのかもしれないが、昨年の太田光の契約更改時のコメントをみても球団側はかなり重視しているスタッツ。おそらく捕手防御率が良いから、出場機会を伸ばしてきた部分はあると思われる。

年齢的に堀内と水上の間の石原は、6/16を最後に出場がない。捕手としての出場は6/8を最後にマスクをかぶっていない。たぶん、なんらかのコンディション不良なのかもしれない。

一塁手

ここまで最多15人が守備に就いているのがファーストだ。

最多出場は横尾俊建。2年前の開幕前に池田隆英との交換トレードで東北入りした右の強打者の卵は、移籍1年目こそ1軍でプレーしたものの、昨年以降1軍からお呼びがかからない。

今年はスロースタートで入り、5月、6月、7月と月を重ねるたびに打撃の調子も上向き、現在は145打席ながらも打率.294、OPS.885まで一気に上げてきている。

気になるのはファーストのレンジファクターが7点台と低いこと。銀次、ウレーニャ、阿部寿樹、和田毅らが軒並み9点台であることを考えると、横尾は失策ゼロだけども一塁守備でなんらかの課題を抱えているのかもしれない。

注目は渡邊佳明だ。彼は2020年にもファームで13試合、昨年も1試合ファーストでのプレーがあるが、今年は本格的に一塁に挑戦している。1軍で41回、2軍で57.2回、合計100回近く一塁で出場し、内外野のユーティリティプレイヤーに磨きをかけている。

二塁手

キーストーンの一角セカンドは、育成新人の辰見と黒川史陽が出場機会を分け合っている。この両者で全体の75.7%を占めている。

ただ、中身を確認すると、辰見は5月までセカンド出場が多く、黒川は6月以降に一気にセカンドの出場が増えてきた。黒川に出場機会を奪われるかたちになった辰見は、出場機会を増やすために外野に挑戦。6/13以降は右翼スタメンが急増し、外野にまわることで打席数を稼いでいる。

遊撃手

現在、イーグルスの遊撃デプスは、小深田大翔と山﨑剛が28歳、先月いきなり覚醒した村林一輝が26歳。その下の世代の正遊撃手候補の育成が課題になっているが、高卒3年目の入江大樹がファームで集中的に出場機会を得て、トライ&エラーを繰り返し、日々成長している。

打撃は一進一退という印象を受けるが、守備は経験を積んでレベルアップしてきたかなというイメージ。昨年はショートで541.1回守りRF4.09、失策12だったが、今年は465回でRF4.22、失策2だ。

入江の2コ上で育成4位の永田颯太郎が、鉄砲肩の好守備という前評判のわりには(もちろんプロ1年目だから仕方ないのだけれど)イマイチなので、ここは入江に頑張ってもらいたいところ。

三塁手

ホットコーナーではドラ5新人・平良竜哉の出場機会が多かった。

先日のフレッシュオールスターでは3安打と非凡な打撃の才をみせた170cmの右打者が、将来の正三塁手という位置づけだ。

今年は遊撃再転向も視野に入れて復活を目指したかつてのキャプテンマーク、茂木栄五郎が2位。

ファームでは133打席ながらも打率.313、OPS.815、得点圏打率.343。持ち味の打棒は健在のようにみえるが、今季は1軍たったの8試合だけ。4/21抹消を最後に長らく2軍暮らしが続いており、不当に干されているのでは?とも勘ぐりたくもなる。

どうやら守備がイマイチのようだ。そのRFは遊撃でチーム平均4.18のところ茂木3.96、三塁でもチーム2.38のところ茂木2.18といずれも遅れをとっている。

2試合連続守備に就いてスタメン出場した例も5/24・5/25、6/28・6/29の2度しかなく、そういうことを踏まえるとコンディションに何らかの支障を抱えているのかもしれない。

外野手

外野手は、2021年ドラ1の高卒2年目・吉野創士が実戦に出場せず徹底的に体作りに励んでいること、同年ドラ3の前田銀治が昨秋の右腓骨骨折の影響で今季初出場が7/1になったことなどもあり、1位和田恋、2位正随という28歳、27歳が占めた。

正直、和田恋は2軍の試合をまわすためだけの要員になってしまっている印象だし、現役ドラフトで広島から楽天入りした正随も開幕前の実戦から相次いだ拙守で、今や和田2世という立ち位置になっているイメージ。

3月下旬に下半身のコンディション不良に遭った高卒4年目の武藤敦貴は、打撃成績こそ打率.196とふるわないが、守備機会はセンターを中心に得ており、次代の外野主戦級戦力としての経験を積んでいる。【終】

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