【惜別】 #24 福田将儀~「青い稲妻」が在籍たった3年で仙台を去るその理由


在籍わずか3年、まさかの戦力外

今回、楽天の戦力外で僕が最も驚いたのが、松井稼頭央とともに福田将儀の構想外だった。

2014年のドラフト3位、中央大学から楽天入りした。
昨今では珍しい青のバッティンググローブを愛用する俊足好守の外野手で、現役時代に「青い稲妻」の異名を取った松本匡史さんも温かく見守った『次世代の外野手レギュラー候補』。
そのはずが、在籍わずか3年の短さで、来季のチーム編成から外れるかたちなっている。


「最悪」から「期待」へと変わったルーキーイヤー

正直言うと、僕の印象は「最悪」から始まった。

当時、田中将大退団で心に穴が空いた僕らに対し、新入団選手発表会見で福田が口にした「『マー君』と呼んで頂けたら嬉しい」という『マー君宣言』。
その自信に満ち溢れたビッグマウスに、少しカチンときたからだ。

しかし、福田の1年目は、僕のような鷲ファンの「最悪」の印象を徐々に「期待」へと変えるのに十分すぎるほどの『記憶に残るルーキーイヤー』だったと思う。

オープン戦からアピールした。

開幕前に残した打率.292は、25打席以上に立ったチーム12選手中4位に当たる好戦績だった。
結果を出してみごとにつかんだ開幕1軍切符。
早くも開幕カード2戦目では2番・右翼のスタメンでプロ初出場を飾っている。そんな福田がチームの苦境を救ったのは、4月中旬のことである。

チームの非常事態を救った、37試合連続スタメン出場

ここで当時の外野手事情を振り返ってみたい。

2015年は松井稼の外野手登録1年目で、背番号7は右翼先発102試合に出場。
そのベテランに定位置を追われたのが、前年の正右翼手・岡島豪郎で、モチベーションを下げたのだろう、自己最低41試合・打率.168に終わった。

今シーズン好活躍の島内宏明も、この年はまだ2013年に負った左肩痛の影響を引きずって自己最少25試合。
2010年から長らく正中堅手を張った聖澤諒は開幕後に調子を落とし、スランプで抹消される直前の5月12日時点の打率は.148と振るわず。
森山周のラストイヤーになり、牧田明久は晩年を迎えるなど、チームは主戦級外野手の低迷に苦しんでいた。

そのなか、大久保博元監督が「新たな風」として抜擢したのが、大学4年秋に東都1部リーグのベストナイン外野手部門を、江越大賀(駒沢大~阪神)、吉田正尚(青山学院大~オリックス)とともに受賞した福田だった。

外野デプスの穴を埋める、みごとな働きだった。

特筆すべきは、4月17日~6月2日までの37試合連続スタメン出場したこと。
この期間の334回の守備イニング中、実に328回で外野守備に就く勤労ぶり。
福田の通算スタメン数の57%がこの期間に集中する『野球人生のハイライト』になった。
もし当時、福田がいなかったら…と考えると、ゾッとするものがある。

23歳誕生日を祝った本領発揮の鮮やか奇襲攻撃!

その初日、17日ファイターズ戦で鮮烈なインパクトを残している。

2回2死3塁、斎藤佑樹から決めた23歳誕生日を自ら祝うバースデーヒットは敵軍守備体系の隙を突く三走生還の三バ安、「自分らしい形」と本人も納得顔のセーフティスクイズでプロ初打点を挙げた。
この年、福田は同様シーンで三バ安をもう1本決めている。
2015年以降で楽天打者の打点つきバント安打は唯一、今なおもこのときの福田の2本だけになっている。

翌18日もスピードを活かしたプレーが光った。

上沢直之から放ったプロ初の二塁打は、左中間に弾き返した打球を追った敵中堅手の動きをみて、行ける!と判断してアグレッシブに2塁を狙ったもの。
送球との競争をぎりぎり間一髪で制した2塁到達タイムは、プロで俊足と評価される8.29秒をクリアし、オコエ級の7.83秒を叩き出していた。

エースと守護神を救ったファインプレー

守備でも、河北新報がこのプレーが転機になり、「守備力の高さを買われ、先発出場の機会が増えた」と評価したビッグプレーがあった。

楽天は先発・則本昂大が6回2失点で勝利投手の権利を持って降板、7回から継投作戦に入っていた。
7回は福山博之、8回は青山浩二とゼロを入れ、そして2点リードで迎えたのが最終9回、マウンドは守護神・松井裕樹が登っていた。
その松井が先頭打者にストレートのフォアボールを出すと、1死後、西川遥輝に快飛球を許してしまう。

しかし、中越えフェンス直撃かと思われた長打コースを、福田が懸命な長駆背走のすえ、最後はフェンスに激突しながらのジャンピングキャッチ!
この塀際好守は則本昂大の5年連続二ケタ勝利を可能にさせ(この年、則本は10勝止まりだった)、松井裕樹の抑え転向1年目の船出を救うという、両選手の記録や未来をも助けたビッグプレーになった。

《当時のブログ記事》shibakawaが選ぶ楽天イーグルスのFielding of the Year2015はコレだ!! (2015.10.19)

5年連続二ケタ投手を打ち砕いた3安打

右安、中安、左安と広角にクリーンヒットを飛ばしたのは、5月9日ソフトバンク戦だった。

相手は攝津正。攝津といえば今は衰え隠せない斜陽右腕だが、当時は5年連続二ケタ勝利の5年目シーズンで力量十分だった。
打った球種はストレート、スライダー、シンカーと全て異なり、3本とも3-2、2-2、1-2と追い込まれた状況からの快音と内容のある3安打だった。

この時点で福田の猛打賞はチーム最多の4度を記録。
同時期には盗塁数もチームトップの5個をマークし、5月21日の日本ハム戦では武田勝からプロ初のホームランを一閃するなど、ニューフェイスの登場を期待させる勢いだった。

しかし、印象的な活躍が多かった1年目も、トータルで成績をみると67試合210打席の打率/出塁率/長打率は.216/.277/.270という冴えない数字に終わっている。

「交流戦あたりから、

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