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【試合観戦記】7/13西武0-4楽天:楽天移籍後の岸孝之完封勝利5選を振り返る

今井攻略の突破口を切り開いた小郷、辰己つなぎの2四球

3年10ヵ月ぶりの悲願。天敵・今井達也の楽天戦連勝を13で止め、4回途中7失点KOした2021年9/4以来となる黒星をつけた2時間54分の快勝だった。

球数に占める空振り、見逃しストライクの比率を表すCSW%。
空振り/スイングを表すWhiff%。

下記表のとおり、投手のパフォーマンスを測る重要2指標で確認するかぎり、本戦の今井はいずれもHQSだった今季ここまでの4登板と、じつはあまり変わらない高水準だった。

どころか、Whiff%では今季最大値、楽天打者はスイングの36.4%で空振りを喫していた。

今井達也 楽天戦でのCSW%、Whiff%

それにも関わらず、今井に土をつけることができたのは、打線は貧打にあえぎ、借金30で最下位に低迷する西武の置かれたチーム状況なのだろう。チーム全体を覆う光の見えない閉塞感と、味方打線の援護をほぼ期待できない重圧...

それらに加えて、今季vs今井で打率3割を記録していた小郷裕哉、辰己涼介の2018年ドラフト組が、攻略の糸口を作った。売り出し中の中島大輔も初回無死1塁で小郷スライダー撃ちに続き、看板球スライダーをヒットにしたのも今井の心にいくばくかの疑心暗鬼を生み出したはずだ。

1番・小郷は初回に1-0からの1stストライクを取りにきたスライダーを右前へクリーンヒット。3回の第2打席も先頭でカーブを攻略して左翼線へのツーベース。いずれの打席もその後の加点の足がかりになった。

鷲の51番は今季5度目の猛打賞。8回には適時三塁打を放ち、終わってみればサイクル安打未遂の活躍になったが、下記のとおりXにもポストしたとおり、じつに効率が良いアットバットになった。

いっぽう、辰己は1回無死2,1塁でノーアウト満塁を作る四球出塁。2-2と追い込まれたなか、150キロ超えをファウルでカットし、低めボールゾーンへの誘いのスライダーを看破し、フルカウントから真っ直ぐを見きわめた。3回の第2打席も四球で塁に出て、村林の左犠飛でホームに抜かりなく帰ってきた。

ベテランの光った仕事

ヒットを打ちたいじゃなく、どうしたら得点できるか?

天敵攻略へチームの勝利に徹底的にフォーカスしたベテラン勢のアットバットも印象的だった。

1回無死満塁で4番・浅村だ。

西武内野陣が後ろに下がっているのを見て、軽打であえて1,2塁間のヒットコースへゴロを打ちにいく要領である。抜けて右前なら理想も、セカンド外崎が横っ飛びで捕りにくるところまで想定したかのような仕事ぶりにみえた。

実際、三走をホームに呼び込むには十分の打球となり、2塁走者、1塁走者を3,2塁に進める貴重な進塁打になった。

続く1死3,2塁、5番・鈴木大も同様だった。

この人は元来のタイプはプルヒッター。本来なら引っ張るのが難しいとされるアウトコースのファストボールも、この人の技術にかかれば難なく右前へと運ぶことができる。

しかし、シュート成分が多くハイスピードの今井のストレートである。その難球をひっぱるのは難しいということで、外角の153キロを素直に左方向へ、と僕には見えた。これが2点目をもたらす犠飛になった。

その鈴木大は3回1死満塁では内角狙いが制球ミスって真ん中に入った153キロをひっぱり、今度はお得意の右前へ弾き返していくチーム3点目の、まさに「大地よ褒めよ頌えよ」のタイムリーを放ってみせた。

当noteではたびたび言及してきたが、この人はほんと右投手のファストボールに強い。これで今季の当該成績は、75打数27安打、1三塁打、1本塁打、1犠飛、5三振(1空三振、4見三振)、6四球、1犠打、打率.360になった。

仕留めた結果球の中には、山下舜平大の157キロ、澤村拓一の152キロ、澤田圭佑の151キロ、4/19今井達也の156キロ、松本航の150キロ、独特なマッスラ軌道を描くという村上頌樹の146キロを2本、アドゥワ誠の142キロをライト柵越えなど、多彩な顔ぶれが並んでいる。

そして、投げては先発・岸孝之が、通算2500投球回到達を自ら祝うキャリア通算20度目の完封勝利!

39歳7ヵ月の無四死球完封勝利はパリーグでは1978年5月3日石井茂(クラウン)の38歳11カ月を抜いて最年長記録樹立になったという。おめでとうございます。

試合終了後は第9回花火大会。現地ファンの皆様は昨年に続いて勝利の美酒とともに夜空に咲く星の華を楽しむことができたはずだ。

試合展開

西武=1番・源田(遊)、2番・野村大(一)、3番・西川(中)、4番・岸(左)、5番・山村(三)、6番・外崎(二)、7番・コルデロ(指)、8番・古賀(捕)、9番・長谷川(右)、先発・今井(右投)

楽天=1番・小郷(右)、2番・中島(左)、3番・辰己(中)、4番・浅村(指)、5番・鈴木大(一)、6番・村林(遊)、7番・小深田(二)、8番・黒川(三)、9番・石原(捕)、先発・岸(右投)

両軍のスタメン

「水曜日岸でよかったのでは?」疑問に残る先発運用

それにしても、祝事になった本戦の感想noteで、あえてこれを言いたいけど、Xにもポストしたけど、この試合で岸を投げさせるんだったら、なぜ水曜日に相性の良いZOZOマリンで先発させなかったのか?と思う。

大敗を喫した7/10●E5-18M(ZOZOマリン)の予告先発で松井が投げると知ったとき、2軍調整中の岸の状態がイマイチなのかな?と思った。その1週間前に岸は2軍で大量失点していたからだ。だから、やむなくの要素も強めで松井なのかな?と想像した。

しかし、本戦で岸が投げたんだから、水曜日にも投げることはできたはず。
もし水曜日岸、本戦土曜日松井なら、両者ともに活かすことができ、どちらも勝利の可能性高まったのでは?と思う。

もちろん、仙台の西武戦でで2500投球回を達成できたから、炭谷から花束贈呈を受けることもできた。
そういう「物語」のために、あえて仙台で登板させたのかもしれないが、予断を許さないCS争いを前にして、水曜日のマリンを捨て試合にするかのような起用は疑問が残る。

松井も風速10m超のマリンプロ初登板という難条件での2位ロッテ相手に好投よりも、ホームで貧打最下位西武相手なら、自信を取り戻してゲームを作った可能性は高いのだ。

ここ最近の今江采配で最も疑問に残る起用になった。

岸孝之 球種別の投球診断表

6年前の完封劇と真っ直ぐ球速がほぼ変わらない

驚くべきことにストレートの平均球速がほぼ変わらないのである。

楽天移籍後、岸が初完封勝利を飾ったのは2018年5/2日本ハム戦(札幌ドーム)だったが、このときは真っ直ぐ平均142.9キロだった。あれから6年2ヵ月経過したが、本戦のストレートは平均142.7キロだった。

その真っ直ぐで・・・(続く)

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